0.はじまり?の扉
安定のやらかした。←
ふと、目が覚めたら扉の前にたたずんでいた。
その扉は、よく見たら重厚で年期が入ってるような、それでいて軽量で新しいような不思議なモノだった。
コンコンとノックをすれば、中から「どうぞ」と声がかかる。
ギィィ…
室内には大きなテーブルの向こうに、これまた立派なソファに腰かけた人物が座っていた。
「やぁやぁ、これは珍しいお客様だ。」
その人物は私の前に立つと、にっこり微笑みかけてきた。
はて?この人物は男であろうか?女であろうか?
若いのであろうか?年寄であろうか?
醜いのであろうか?美しいのであろうか?
目を凝らして見ようとすればするほど、その人の輪郭は曖昧で、声も曖昧で、はっきりしない。
「なに、そんなことは重要なことではない。君が今、ここにいることが分岐点なのだよ。」
ここにいることが分岐点?
「そうだよ。人生とは長いようで短い。束の間の馬鹿騒ぎを楽しもうじゃないか。」
そうしてその人が私の前に差し出したのは、一冊の本?複数の本?もしかしたら数枚の紙かもしれない。
これまた曖昧な形をしているが、不思議と私はこの話を知っているような気がした。
「どこにでもある話さ。よくある話さ。もしかして忘れてしまったのかい?」
そっと記憶の道を辿る。あぁ、あったあった。いや、ないかも?うーん。
「では、少し前の話をしようか。いや、やめておこう。知っているかもしれないからね。」
私の手の上で、ひらりと紙面が揺れる。
とりあえずは、その文字を追ってみようか。
◆◆◆
【 お読みになる前にお願い 】
当書は『お姉さま、それちょうだい?』から始まった、暴虐の限りを尽くす第五王女と愉快な仲間たちの小話集です。
世界観につきましては、下記短編をお読みの上、ちょっぴりファンタジーが加わります。
『お姉さま、それちょうだい?』 https://ncode.syosetu.com/n6742fs/
『お姉さま、もういらない。』 https://ncode.syosetu.com/n1693ft/
『王女様、これいります?』 https://ncode.syosetu.com/n6665ft/
読むのが面倒な方は、下記簡単な登場人物紹介で済ませてください。(称号・年齢は今回スタート時)
・第一王女(姉姫)
16歳で立太子した王位第一継承者。次期女王。
あらあらまぁまぁうふふで、年の離れた同母腹の妹である第五王女に、欲しがるモノは何でも与えちゃう激甘性格。
側妃のママンは8歳の時他界。
幼馴染の婚約者に胃袋を掴まれて無事婚姻、20歳で懐妊中。
・第五王女(妹姫)
傲慢で強欲で、同母腹の姉姫から欲しいモノは何でも『ちょうだい』と強奪し、遊んで遊んで遊んで飽きたら、『いらない、あげる』と返す我儘な妹。
側妃のママンは生後7カ月の時他界。
スキル『鑑定眼』『カウンター』『魔改造』持ち。優秀。
姉姫の笑顔とぎゅーが好き。12歳の思春期はじまり。
・旦那(元婚約者)
姉姫の旦那さんで次期女王の王配。出身は公爵家の次男。
存在が空気。むしろ空気よりも軽い。背景に馴染むモブ。たぶんヒーロー?
スキル『料理男子』持ちで、アウトドア料理や食材狩りに勤しんだ野戦部隊の騎士。
姉姫のもぐもぐ姿が好き。22歳。
・傭兵/側近
冒険者ギルド高位ランカーなフリーランスの傭兵。
旦那とは騎士団の遠征先で知り合った良き理解者で、気さくで胆力があって面倒見がいい。
なんやかんやで旦那付の側近職に就くことになった。24歳。
・ブロさん
唯一固有名詞の名前を持ってる(笑)
刺客として潜り込んだら妹姫のスキルで沈められ、従属契約した隠密頭。超優秀。
深海魚のニュウドウカジカ(ブロブフィッシュ)に似てる。
・BL護衛官
妹姫に魔改造と従属契約された尋問上手。男にしか興味がなくなった。
刺客として潜り込んだら妹姫のスキルで沈められ、従属契約した護衛官。結構優秀。
姉姫がご褒美に地下室の各種シチュ部屋を作ってくれて嬉しい。
・ピンク侍女
妹姫に魔改造と従属契約されたスパイ上手。女にしか興味がなくなった。
刺客として潜り込んだら妹姫のスキルで沈められ、従属契約した侍女。結構優秀。
姉姫がご褒美に『秘密の薔薇FC』を作ってくれて嬉しい。
・言語補佐官
妹姫に魔改造と従属契約された言語マスター。言葉にしか興味がなくなった。
城内で挙動不審のところ妹姫のスキル沈められ、従属契約した補佐官。結構優秀。
姉姫の傍に就いて、通訳やら暗号やら好きに読み解けて嬉しい。
・愛の伝道師(原因)役
既に忘れかけた姉姫の元婚約者候補。好き合ってる人にしか興味がなくなった。
姉姫の尊厳を(中略)従属契約した謎の神官(永久見習い)。優秀かどうかわからない。
教会で参拝者のパートナーをナンパしまくったら、教会で愛を叫ぶブームの引き金役になった。
・その他
騎士団の皆様 (友情出演)
事務官の皆様 (友情出演)
異母きょうだいとその家族親族 (エキストラ)
シャルさんとこの誰か (特別出演)←
『めんこい亭』のおじいちゃんとおばあちゃん (出演未定)
《注意事項》
当書は終わるかどうかわかりません。
途中で途切れるかもしれないし、逃げ出すかもしれません。
最初から半分くらいは諦めてください。もう半分は期待してみてください。
◆◆◆
なんじゃこりゃ?
うーん、知ってる?知らない?まぁ、なんとなくわかった気がする。
紙から視線を上げれば、机もソファもその人もいない。
果たしてそこは書斎であったのか、応接室であったのか、居室であったのか。
あの人の言葉を借りるのなら、それは重要なことではなさそうだ。
「まぁ、まずはこの一枚目をめくってみようか。」
束の間の馬鹿騒ぎを求めて。
迷走する覚悟はいいか?←