1-7話 廃墟に建つ狩り小屋
第一章:異世界リスタエルス:
潰れた肉達磨の側に落ちている袋から、大量の銀貨と一振りの短剣が溢れ出していた。
:鑑定:
『黒鋼ネルガの短剣 (Unique) LV10』
一撃につき敵の体力の2%を吸収する ユニーク装備
初期装備の短剣よりも全長はかなり長かった。磨かれた黒鋼の刀身が鏡面のように滑らかで、短剣というより、たぶん片手剣に近いだろう。
「これ序盤にしては結構上等な得物だな。体力吸収付きのユニーク武器らしい… ツキカが使うか?」
少女の目前に、ワニ革のような黒鞘を差し出して見せる。
「わたしは短剣は不得手だから、ヒロトがどうぞ。槍系が出たら欲しいかな。戦乙女のメイン武器は槍術なのよ」
「なるほど、じゃ有りがたく使わせてもら… て、君は更に近戦職まで持ってるんか? 何気にツキカって戦闘力高いよな… 最後のコンボも強力だったし」
大翔は『ネルガの短剣』を、初期装備の短剣とは逆側に装着すると、革袋の銀貨を少女へと手渡した。月歌は何か言いたげに躊躇したが、結局は黙って倉庫へと収納した。
「うんうん! コンボの『闇影破魔矢』が発現して、途端に楽になったものね。えっとね… 技術を連続で使った場合に、一定の順番と間を繋いでいくとコンボスキルが発現するみたい。そして一度発現したコンボスキルは、技術欄に登録されて、新技術扱いになってるわ」
「何か羨ましいな……」
「それでね、普通は自分の持つひとつの職業の中で、組み合わせを探すものだけど、例えば別の職種の人とスキルを繋ぐと、何倍もの効果を発揮する強コンボになるの… だけど、他人と絶妙なタイミングで合わせるなんて難しいじゃない?」
「そうか! 俺達たち複数職業持ちは違うんだな?」
「そういうことね」
少女は切れ長の瞳を細めて、にこりと笑う。
「簡単に他職業との複合コンボを生み出せる… ということか。こんなところにも異分子の恩恵があるんだな」
「わたしの使った、巫女と黒魔道士のスキルコンボ、凄い威力だったでしょ?」
ドヤ!! と言わんばかりに、得意げに胸を張る黒髪の美少女。やはり強くなるのは嬉しいらしい。この娘も結構ゲーム脳のようだ。
「そうだお互いにレベルアップしたよな? ちょっと確認してみるか」
彼女の自己満足を妨げないように、そっとステータスを開いてみた。
:ヒロト シマナ: 人族 ♂ :LV4:
:ステータス:
体力 73(29 +44)
魔力119(29 +90)
気力54(24 +30)
力 89(29 +60)
敏捷52 (24 +28)
知力103(29 +74)
器用79(29 +50)
運 24
:職業:
暗殺者LV4(AGI+14) 魔道士LV4(INT+14) 盗賊(AGI+14) LV4 付与術士(INT+14)LV4 修道士LV4(HP+14)
:二次職:
鑑定士 LV3(INT+30)付与師 LV1(MP+10)武器師 LV1(DEX+10) 細工師 LV1(DEX+10)探検家 LV2(HP+20)
:技術 パッシブ:
短剣術LV3(STR+30) 無属性魔術LV3(MP+30) 付与術LV2(INT+20) 気功武術LV2 (VIT+20)光魔法LV1 (MP+10)
:技術 アクティブ:
暗襲LV1(STR+10)魔力弾LV2(MP+20) 気配探知LV3 (DEX+30)混乱の香りLV2 (MP+20)連撃LV2(STR+20)
:スキルコンボ:
無し
:ユニークスキル:
無し
:称号:
ディメテル連合戦士(HP+10)(VIT+10)
:装備:
初期装備一式 黒鋼ネルガの短剣(Unique)
一気にLV4にまで上がったけれど… 地味に魔力119 知力103 が高めで魔法型に偏り始めてる? まぁ、まだまだ弱ちいなぁ。うーん、高火力のツキカさんのステータスが気になるな…。
「なぁ、ツキカのステータスって見れるのかな?」
「あぁ、それはね許可制なのよ… 今ステータスだけなら見れるようにしたわ。職業欄から下の詳細情報は、本人にしか閲覧できないみたい?」
:ツキカ ササラギ: 人族 ♀ :LV4:
:ステータス:
体力48(24 +24)
魔力158(34 +124)
気力34(24 +10)
力 49(29 +20)
敏捷24
知力153(29 +124)
器用69(29 +40)
運24
「めちゃ魔力特化だなぁ。あの魔法コンボの威力も頷ける。ツキカのステータスと比べると、オレって器用貧乏ぽい……」
何故か二人とも、針葉樹の根元に腰掛けて、並んで体育座りをしていた。いつの間にか周囲はゆっくりと、夕暮れ色にトーンを落としつつあった。
「一般人のLV4ってどんな感じなんだろな?」
「そんなの自分の能力から引き算するだけでしょ?」
その言葉に、地面の土の上でステータスの計算を始めてしまう。
:ハナコ ヤマダ(仮): 人族 ♀ :LV4:
:ステータス:
体力 39(29 +10)
魔力 29
気力34(24 +10)
力 59(29 +30)
敏捷38 (24 +14)
知力29
器用39(29 +10)
運 24
:職業:
暗殺者LV4(AGI+14)
:二次職:
細工師 LV1(DEX+10)
:技術 パッシブ:
短剣術LV2(STR+20)
:技術 アクティブ:
暗襲LV1(STR+10)
:スキルコンボ:
無し
:ユニークスキル:
無し
:称号:
ディメテル連合戦士(HP+10)(VIT+10)
「こんな感じかな? LV4にして俺らの半分以下のステータスだな…」
土に描かれた数字の一部を、月歌がさらっと書き直す。
「ここの計算ボンミスしてるよ? ふふっ、なんで山田 花子なの?」
偽名のチョイスは気に入ったらしい。
「やぱり技術による補正が大きいよな。ここから更にステータスの差が開いていくんだろ? まぁ今回の戦闘で色々知れて良かったよ。さあ、夕暮れも近いし少し沢を外れて、森の奥に行ってみよう。この先で『探検家』スキルが反応するんだ」
大翔は少女の手を引いて立ち上がらせると、何故か指先だけを絡めたままに、大樹の森の中に分け入っていった。
◇
「おぉ! 『探検家』役に立つじゃないか!」
分厚い木戸を力ずくで解放すると、その小さな小屋には、みっちりと生活用具が積み上がっていた。大翔が一歩踏み込むと、もわっと埃が舞い上がる。
樹海に戻って5分ほど進むと森は途切れて、かなり大きな岩山へと辿りついた。周囲を分厚い岩盤に囲まれて、そのコの字型の内側には、朽ちた石積みの廃屋が立ち並んでいる。
岩山を天然の要塞にしたような、それなりに大きな町だったようだ。棄てられて相当経つのか、石壁は苔むして青く、低木や藪の群生が、家の内部まで侵食している。
高台から見渡せば、すでに町の半分は雑草の中に沈んでいた。中央を走る広い石畳の突き当りには、寺院か集会場のような、大ぶりの三角屋根の建物も見えている。
「すごい埃ね… 長い間使われてないみたい」
『探検家』スキルが発見したその小屋は、東の壁沿いで一段高くなった台場にこじんまりと建っていた。いちおう屋根と扉は健在で、裏の崖にも扉があり、中は大きな倉庫らしい洞窟になっている。いや、洞窟というには綺麗なドーム状なので、人力で削って整えたのかもしれない。
「たぶん狩猟小屋なんだろうな? 裏に獲物を収納できそうな倉庫もあるし… ただ、この様子じゃ数年は使われてなさそうだ」
部屋には木板を組んだだけの、簡単なテーブルがあり、壁際にはひとり用の寝台まで置かれてある。少年が毛布を手にすると、わっと砂埃が舞い上がり、ふたりでしばらく咳き込んでしまった。
「ゴホっ!ゴホ! 凄いなこれ… 日も落ちるし此処に泊まるしかないんだけど… 軽く掃除でもしとく?」
「ケホっ! そうね… とりあえず埃だけでも掃き出しましょう!」
なぜかガッチリと握手をする二人は、寝具を表に出して埃を叩き、そこらに生えていた雑草を束ねて、ホウキ代わりに小屋中をはたきまくる。入り口からは濛々と砂や埃が吹き出して、まるで火事場の煙のような有様になった。
30分程かけて本気モードの掃除を済ませると、日はとっぷりと暮れ、岩壁に切り取られた空は、紅色のグラデーションとなって染まっていた。
「どうかな? 一応は野宿よりはマシだよな?」
「そうね、野宿も覚悟してたから、思いのほか、まともな夜が過ごせそう…?」
二人は扉と窓の木戸を締め切ると、ようやくと部屋の隅に腰を降ろした。
「はぁ… とても疲れたわ。初日からこんな濃い一日って… ちょっとハード過ぎじゃない?」
少女は再び体育座りをして、自分の膝を抱きしめる。大翔は少し間を空けると、壁に背を任せて脚を一杯まで伸ばしている。
「オレ達さ… 知り合ってまだ一日も経ってないんだよな…? 何かもう一ヶ月ぐらい、二人で彷徨ってた気がするよ」
「ふふっ、本当よね… 生きるか死ぬかの思いをすると、相性とか関係なく自然と助け合うものなのねぇ」
それじゃノリ合わないみたいだろ…… え? 合ってない?
軽く落ち込んだ様子の少年を、自分の膝の合間から、くすくすとからかうように見上げている。その表情はずいぶんと柔らかく、どうやら軽く冗談を言えるぐらいには、打ち解けているようだ。
それでも戸を締め切った室内は、まだ夕暮れなのにかなり薄暗い… すぐに視界も無くなりそうだ。
「ちょ! た、大変だ… これを見てくれ!!!」
横に並んだ木棚を、暇つぶしのように弄っていた少年が、何故か大瓶を抱えて月歌へと振り返る。
「何なの? その汚い壺は…?」
神仏に供えするような仰々しさで、抱えた
大瓶を月歌に差し出してくる。
「し、し、し、塩です!! これ! ソルトです!!」
微妙に表情を引き攣らせて、半端な笑みを浮かべながら、大翔はそう言った。
:鑑定:
『岩塩 3228g』
海底が隆起して岩のように固まった塩の層
「えっと……… それじゃ、何か食べたいものはある…?」
少女も気が抜けたように、そのお宝を両手で受け取った。
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:付録:
月歌のステータス
:ツキカ ササラギ: 人族 ♀ :LV4:
:ステータス:
体力48(24 +24)
魔力158(34 +124)
気力34(24 +10)
力 49(29 +20)
敏捷24
知力153(29 +124)
器用69(29 +40)
運24
:職業:
召喚術師LV4(MP+14) 巫女LV4(MP+14) 黒魔道士LV4(INT+14) 戦乙女LV4(HP+14)
:二次職:
調理師LV2(DEX+20)錬金術師LV1(DEX+10) 裁縫師LV1(DEX+10) 学者LV3(INT+30)
:技術 パッシブ:
召喚術LV3 (MP+30) 神通力LV3 (MP+30) 闇魔法術LV3(MP+30) 槍術LV1(STR+10) 精霊魔法LV1(INT+10)
:技術 アクティブ:
サモン ビーストドックLV2 (INT+20) 破魔矢LV2(INT+20) 影針投擲LV2(INT+20) 連突きLV1(STR+10)
:スキルコンボ:
闇影破魔矢LV1(INT+10 MP+10)
攻撃力x220%
:ユニークスキル:
無し
:称号:
アルテミス銀翼同盟戦士(HP+10)(VIT+10)
:装備:
初期装備一式
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