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9.鑑定

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 俺たちはリルムフォルムに到着した。


「リルムフォルムに兵士が派遣されていると噂があっただけ、今回は野盗にも襲われなかったな。」


 街の入口にさしかかるとトーマスがつぶやいた。防衛のため王都の兵士たちがリルムフォルムの防衛を強化しているらしい。


「野盗に襲われることって結構あるの?」

「まぁたまにあるくらいかな。そのときは商人ギルドの札を見せながら、いくらかお金を渡すと大体引き下がってくれる。奴らもギルドの報復が怖いから上手く交渉すれば引き下がってくれるのさ。」

「そうなんだ。」

「まぁ何はともあれ、もうすぐリルムフォルムだ。着いたら馴染みの商人のところで荷物を搬入。その後、宿をとってから宝石を鑑定してもらいに行くぞ。」

「了解。」


 リルムフォルムの入口へと到着する。町は高さ2メートルほどの石壁に囲まれており、入口で兵士が検問を行っている。

 想像していたよりもしっかりとした町だ。

 

 俺たちはトーマスの馴染みの商人のところに馬車を搬入し、そのまま宿に向かう。宿は一人銅貨10枚で素泊まりのところを選んだ。町の中心街からはかなり距離が離れているが、この町の中では破格の安さとなっており、トーマスの行きつけらしい。

 宿に荷物を降ろすとすぐさまゴブリンが落としていった宝石を持って店へと足を運んだ。店に着くとターバンを巻いた親父がトーマスと慣れた感じで挨拶を交わす。トーマスは銅貨をいくつか支払い、すぐに宝石の鑑定を依頼した。


「う~ん。」

「どうだ親父?」

「これは、孔雀石ですな。大きさも質も良さそうですな。」

「そうかどれくらいの値段になりそうだ?」

「まぁ宝石としての価値は少なくとも銀貨30枚くらいはありそうですな。」


 銀貨30枚というと宿屋で300日泊まれるくらいの値段か。ゴブリンの弓で換算すると6個分となる。これならゴブリンの弓を売る必要もなさそうだ。


「まぁまぁの代物だな。どうする?他の店も回ってみるか?」

「いや良いよ。銀貨30枚あれば特殊能力の鑑定だって受けれるだろ?」

「あぁ。一つの特殊能力につき銀貨1枚ってのが相場だからな。」


 宝石を売って得たお金は、鑑定などに使っても良いとゴーフリーから言われてる。銀貨30枚あれば十分お釣りがくる。


「粘って高値で売るよりも、早く鑑定してすぐに村に戻りたいんだ。」

「そうか。わかった。鑑定は冒険者ギルドの中にある。宝石を売ったらすぐに行くとするか。」


 その後、トーマスが店と交渉し銀貨35枚で売却することができた。銀貨3枚をトーマスに手数料として支払う。


「今回はお前の特殊能力を誰にも教えないという条件で面倒みてるから、手数料とかは別には必要ないんだけどな。」

「お世話になりっぱなしじゃ悪いからね。ゴーフリーから高値で売れた場合はトーマスに手数料を払っても良いって言われてたんだ。これは俺たちからの投資ってことで、受け取ってほしい。」

「なるほどな。まさかバーミントン村が俺に投資してくれるとはな。まぁありがたく頂戴しておくよ。」


 トーマスが笑顔で銀貨3枚を受け取る。



「じゃあ早速冒険者ギルドに行くぞ。こっちだ。」


 トーマスに連れられて冒険者ギルドに行く。

 リルムフォルムは区画が整備されているようだ。宝石などを扱う区画とは逆の区画に冒険者ギルドや鍛冶屋が存在している。冒険者ギルドは木造の2階建てになっていてかなり大きな施設で中に入ると酒場が併設してあった。

 昼過ぎにも関わらず、多くの冒険者たちが酒を飲んでいる。

 俺達は受付のカウンターの方経移動し、トーマスが受付の女性に話かける。


「どうも、こんにちは。」

「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」


 女性はお辞儀をしながら丁寧に受け答えをする。


「実は、こいつの特殊能力を鑑定してほしいんだ。」

「鑑定のご依頼ですね。一つの特殊能力の鑑定につき銀貨1枚となりますがよろしいでしょうか。」

「あぁ問題ない。」

「では、しばらくお待ちください。」


 俺たちは受付の横にあるベンチに案内される。


「冒険者って思ったよりごつくないんだね。」

「まぁな。ほとんどが薬草採取とか調査とかの雑用を請け負ってるよ。稀にはぐれ者がいてそいつらが魔物討伐なんかの依頼を受けることが多い。」

「はぐれ者って?」

「異世界から召喚されたが、召喚した者と折り合いが合わず独立して生計を立ててる者のことさ。ちなみに召喚された者のことを異世界から召喚されしアウトサイダーと呼ばれることもある。」

「へー。そうなんだ。村ではそう呼ばれたことがないな。」

「ゴーフリーはお前らをよそ者扱いしたくなかったんだろう。アウトサイダーって部外者って意味もあるからな。一般的にはそう呼ばれてるから覚えておけよ。」

「そうなんだ。ありがとう。」


 トーマスとしばらく会話していると受付の女性がこちらに歩いてきた。


「準備が整いましたのでこちらにどうぞ。」


 受付の奥にある通路に誘導される。通路を曲がった先にはいくつもドアがありそのうちの一つに案内された。

 部屋の中に入ると髭の生えた筋肉隆々のおっさんと、黒い布で口を覆った細身青年が立っていた。


「待たせたな。俺はギルドマスターのロレックだ。」

「はじめまして、行商をしておりますトーマスと言います。こちらは今回、鑑定をお願いするヒカルです。」

「はじめましてヒカルです。」

「おう。よろしくな。」


 ロレックが白い歯を見せながら握手を求めて来た。俺とトーマスはそのままロレックの手を握り、握手を交わした。


「鑑定を始める前に条件を確認しておく。これを飲めなかったら鑑定はできないからそのまま帰ってくれ。」


 そういうとロレックは鑑定前の注意事項を説明しだした。


「まず、鑑定については、特殊能力1つにつき銀貨1枚だ。」

「あぁそれはさっき聞いたぜ。」


 トーマスが俺の代わりにロレックの説明に回答をする。俺はそのまま二人の会話を見守る。


「複数の特殊能力を鑑定したい場合は、鑑定した分の銀貨をいただく。」

「あぁ。今回は一つだから問題ない。」

「そうか。後は念のための確認だが、上位の特殊能力を鑑定する場合は、必要とする媒体が異なるためもう少し値が張る。」

「そうなのか。それは初耳だな。」

「まぁ、高度な特殊能力はめったにいないからな。」

「例えばの話だが、銀色の特殊能力だといくらくらいだ?」

「銀色か。銀色の場合は特殊な聖水が必要だから銀貨5枚といったところかな。」


 銀貨5枚!?想定していたよりも結構高い。

「おいおい、かなり値が張るな。」

「まぁ使うものがものだからな。これもで手間を考えると原価ギリギリくらいだぞ。」


 ロレックは両手を広げながらオーバーリアクションを取る。


「ヒカル、少し高いがどうする?俺の調査が不足していたようで申し訳ないのだが。」

「鑑定が目的でここまで来たんだし、少し高くてもお願いするしかないかな。村の人達には悪いんだけど。」


 トーマスに鑑定を受ける旨を伝える。


「よし。わかった。その条件で鑑定を依頼したい。」

「じゃぁ交渉成立だな。」

「後、鑑定を行うのは、こちらの者が行うが素性などは詮索しないでほしい。」

「噂ではギルドマスターのあんたが鑑定スキルを持ってるって話だったけど、そうじゃないんだな。訳ありって奴か?」

「まぁそういうことだ。」

「わかった。こちらも一つお願いがある。」


 ロレックの条件を飲んだ後にトーマスが切り出す。


「おっ?俺に条件を出すってか。なかなかの玉だな。」

「俺からもさらに銀貨2枚出すから、こいつの鑑定した能力は絶対に他に漏らさないで欲しい。」

「漏らすことはないさ。鑑定料には秘匿権も入ってる。が、そっちがどうしても銀貨2枚出したいっていうなら別に構わないぞ。そんなに凄い能力なのか?」

「今から鑑定するのはさっき値段を確認したように銀色の特殊能力だ。能力を秘匿するのに銀貨2枚を余分に払うだけの価値はある。」

「なるほどな。まぁそっちの好きにすればいいさ。銀貨2枚をもらうからには能力の事は絶対に秘密にしておいてやる。」

「あぁ、頼んだ。」


 トーマスはロレックと改めて握手をする。


「トーマス、良いのか?」

「あぁ、問題ない。大事の前の小事って奴だ。」


 鑑定料として俺が銀貨5枚を支払い、能力の秘匿権としてトーマスが銀貨2枚を払うことで交渉が成立した。


「では、鑑定を受けるお客様のみこちらへ来てください。」


 トーマスが白い歯を見せながら親指を立てる。俺は細身青年の青年に案内されるまま別室へと入って行った。部屋の中には魔方陣が描かれており、中央に木彫りのフクロウのような動物の置物が置いてある。


「では、この置物の前に立ってください。銀色の特殊能力の鑑定ということでよろしいですね?」

「はい。」

「では、高度な精霊を呼ぶ必要がありますため、しばらくお待ちください。」


 俺はフクロウの前に立たされたまま待つ。青年は棚に置いてある瓶を取り出すとフクロウの頭にゆっくりとかけながら、ぶつぶつと小声で呪文のようなものを唱えだした。しばらくすると青年の呪文に呼応するかのようにフクロウが光り出した。神秘的な雰囲気が部屋に漂う。


「精霊の召喚に成功しました。これからあなたの能力を鑑定させていただきます。」

「はい。お願いします。」

「あなたの特殊能力は一つだけのようですね。特殊能力の名は『(銀)軍師の成功報酬サクセスギフト』。こちらの鑑定でよろしいでしょうか?」

「はい、そうです。」

「では、鑑定に移ります。」


 青年は両手を広げる仕草をしながら、声を張り上げる。


「精霊モームよ!『(銀)軍師の成功報酬サクセスギフト』の効果を教えたまえ!」


 フクロウの光が一層強くなった。青年は何かボソボソと独り言を言っているが、小声でよく聞き取れない。


「わかったよ。ありがとう。」


 青年がそうつぶやくとフクロウから光が消えて行った。


「『(銀)軍師の成功報酬サクセスギフト』の鑑定結果が出ました。」


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