7.英雄の儀式とカーバンクル
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ゴーフリーに言われるがまま広場の中央へと足を運ぶ。
地面には花びらと聖水で魔方陣をが描かれており、四方を松明が照らしている。俺はちょうど魔方陣の中心部へと案内される。魔方陣の外側では東西南北に一人ずつ巫女が正座をしている。
「さぁ、準備は整いましたぞ!今からバーミントンに伝わる英雄賛歌の儀を行う!!!皆の者準備は良いか!?」
「オー!!!!!!!!!!」
ゴーフリーの掛け声に、楽器を持った村人たちが応える。
「では、はじめ!!!」
合図と共にゆっくりと音楽が流れ始める。それと同時に巫女たちが滑らかな動きで踊り始めた。
「おー!」
観戦している村人たちがどよめく。松明の光に照らされた巫女が音楽に合わせて踊る姿は神秘的だった。
「う~んと。俺はこのまま座ってればいいのかな?」
しばらく巫女の踊りを眺める。暗闇の中、炎の光に照らされながらしなやかなに舞っている。
「綺麗だな。それに少しセクシーだし、これは男なら見惚れちゃうわな。」
巫女が舞い始めてから20分くらいが経過した。最初は幻想的な音楽からはじまっていたが、時間が経つに連れ打楽器などのリズムに乗せて激しくなってきている。
(んんん~。人間の村に呼び出されるのは久しぶりだッポ。)
「ん?」
突然、頭の上の方から声がする。俺は思わず頭上を見上げた。
「どーもー。こんばんはッポ。」
頭上にはイタチのような恰好をした小動物が宙に浮いていた。小動物の額にはルビーのような赤い宝石が埋め込まれている。
「え!?な、何?」
俺は突然の出来事に仰天する。
「そんなに驚くことないッポ。幻獣は初めてみるッポ?」
幻獣って、いきなり頭上に小動物が現れたら普通驚くでしょ。っていうかこれって俺しか見えてないのか!?
村人はそのまま儀式を継続していてイタチに気づいている様子はない。
「まぁ良いッポ。僕の名前はカーバンクル。君が今回選ばれた人なのかな?なんて言う名前ッポ?」
「え、あっ。俺はヒカルって言うんだけど。」
「ヒカルって言うのかポ。じゃぁ早速だけど君の中にある能力を引き出すッポ。何か希望はあるッポ?」
突然の出来事に頭がついていかない。これがゴーフリーが言っていた『英雄に力を授ける』ってことなんだろうな。
「う~ん。いきなり希望って言われてもな……。まぁ強いて言うなら、俺の能力を引き出せるなら全部引き出してもらうと嬉しいんだけど。」
「あらら。欲張りすぎは良くないッポ。そういう奴は大体失敗してきたッポ。」
「えっ?失敗とかすることあるの?」
「結構あるッポ。どちらかというと欲張る奴がよく失敗するッポ。」
失敗することもあるのか。急に求められても考えがまとまらない。
「ちなみに前回の人はどうだったの?」
「前回は数十年前だから詳細までは覚えてないポ。でも特殊能力の付与に成功したと思うッポ」
あれ?ゴーフリーは前回は10年前って言ってたような気がするだが。
「前回って10年前じゃないの?この村の村長がそうやって言ってたのだけど。」
俺はカーバンクルに疑問をぶつけてみた。
「おそらく、前回は他の種族の幻獣が召喚されたッポ。」
「毎回違うって事?」
「まぁあらかじめ決められた幻獣を召喚するのが普通だけど、この村の召喚方法はランダム召喚で誰が呼ばれるかはその時々によって変わるッポ。」
なるほどな。今回はこのカーバンクルが召喚されたってことか。前回はどういうケ幻獣が召喚されたか気になるところだが、今は優良な能力を付与してもらうことが最優先だ。
「さっきの話に戻るけど、希望するものは何か一つに絞った方が良いってこと?」
「そっちの方が成功することは多いッポ。」
「失敗したらどうなるの?」
「逆にステータスが下がったり、変な特殊能力がつくッポ。」
ただでさえ俺のステータスは低いのにステータスが下がるのは困る。
「なんか、こう上手く行く方法はないの?」
「う~ん。自分の職業や特徴にあったものの方が成功しやすいような気がするッポ。戦士とか武道家は筋力とかのステータスアップが成功することが多かったッポ、他には術師が魔法を覚えたいとかもあったッポ。」
魔法!?かなり魅力的な響きだ。異世界に来たからには一度は使ってみたい。来れこそが俺が求めていたものだ。
「魔法って俺にも覚えれるのか?」
「可能性はあるとは思うけど、職業にもよるッポ。ヒカルの職業は何だッポ?」
「まぁ一応、軍師だけど。」
(見習いだけどね。)
「軍師だと視認系の魔法とかなら覚えれるかもッポ。遠くを見渡したりする魔法ッポ。」
遠くを見渡すってなんかイメージと違うな。炎や氷を出したり、稲妻を敵の頭上に落としたりする魔法だったら良かったんだけどな。
「なんか、ちょっとイメージと違うな。」
「覚えれる魔法もランダムになってしまうし、無理にとは言わないッポ。それより、ヒカル、早くするッポ。儀式が終わってしまうッポ。」
「う~ん。今考えるから、もうちょっとだけ待って!」
魔法は少し思ってたイメージと違うな。となると俺自身のステータスを上げてもらうか、特殊能力を付けてもらうかだな。『軍師は兵士を鍛え、隊を組み勝利に導く』か。
「カーバンクル、俺は軍師だから、兵士を鍛え、隊を組み勝利に導くことが役割なんだ。それに最も適した能力を付けて欲しい。」
「特殊能力が欲しいってことッポ?」
「うん。できればみんなを勝利に導けるようなものが良いんだけど。」
「特殊能力はランダムになるッポ。それでも良いッポ?」
結局ランダムになってしまうのか。ちょっと残念だけが仕方がない。フィーフィーたちと違って特殊能力が何もないってのもカッコ悪いと思ってたし、まぁこれで良しとするか。
「わかった。特殊能力をつけて欲しい。」
「何がつくか僕にもわからないから恨みっこなしッポ!じゃあいくッポ!」
カーバンクルの宝石が光り俺の身体を包み込む。音楽のリズムに合わせ身体から力が湧いて出てくる。光は徐々に体へと吸収されていった。
「よしッ!じゃあ終わったッポ!無事、光が身体の中に入って行ったから、多分、成功したと思うッポ。どんな能力がついたかは自分で確認してほしいッポ。」
「うん。わかったよ!ありがとう!」
俺はカーバンクルにお礼を言う。
「言い忘れたけど、稀に大成功してたり、複数の特殊能力が付いてたりすることもあるから楽しみにするッポ!」
おお!それは楽しみだ。
「じゃあこの辺で失礼するッポ!また会うことがあったらよろしくッポ!」
「うん、本当ありがとう!」
カーバンクルは空へと舞い上がり消えて行った。巫女の踊りはまだ続いている。
「なんか良い特殊能力が沢山ついてるといいな。」
その後、儀式は無事終わり、みんなと宴を楽しんだ。
戦いに勝った充実感と祭りの騒ぎで疲れ切っていたためか、俺はベッドに入るとすぐに深い眠りについた。




