16.開拓
早くもストックがなくなってきたのでがんばります。
シャルロットさんの薬草作りは材料さえ確保できれば上手く行きそうだった。
問題はゴブリンやウルフが生息する森の奥地でいかに安全に行動できるようにするかということであった。
フィーフィーの協力は悪路を改善しない限り得られないだろう。
この問題を解決するために俺はゴーフリーに相談を持ちかけた。
「ゴーフリー、森の奥地に行くための道を開拓したいんだけど、何かいい方法はないかな。」
「そうですな。農地開拓のスキルを持った人材を連れていくのはどうでしょうか?」
「そういう人がいるの?」
農地開拓のスキルを持った人材がいるというのは初耳だ。
「ええ、一人だけおります。ドルドです。」
「え?ドルド!?無理じゃない?」
ドルドはゴーフリーに次ぐ村のリーダーであるが、俺の対してあまり好意的ではない。協力が得られるとは思えなかった。
「そんなことはありませんぞ、ドルドも村のために協力したいと思っているはずですじゃ。ヒカル様に協力してくれると思いますじゃ。」
「そうかなぁ。」
俺はゴーフリーと一緒にドルドの家に行き、森の道の開拓をお願いした。
「森の開拓ですか。うーん。」
「はい、是非ドルドさんに協力してもらいたいのですが。」
「そう言われましても私も忙しい身ですからなぁ」
ドルドにお願いしてみるがやはり乗り気ではないようだ。
「シャルロットさんの薬草作りは上手く言ってます。後は材料さえ安定的に確保できれば、目標金額に近づくと思います。」
「ドルド、忙しいのはわかっているが、何とか協力できぬか。」
ゴーフリーも説得するが、あまり反応が良くない。俺のこととなるとドルドはいつも否定的になる傾向がある。俺が村の皆を動かしているのが気にくわないのだろう。
「では、開拓の道具だけでもお借りできませんか?ナイフだけではかなり厳しい状況なので。」
「それなら、倉にハチェットがありますので持っていって頂いて構いませんよ。」
「ありがとうございます。」
俺はドルドに礼を言うと足早に倉へと向かう。
倉には沢山の農耕用の道具があった。ドルドの倉には結構良い道具が揃っている。
「手入れも行き届いてるな。」
道具はしっかり手入れされているようで、すぐに使える状態だった。キレイに並んだ道具を見ながらハチェットを探す。
「あった。これだ。」
俺は見つけたハチェットを手に取る。刃はしっかり研がれており切れ味が抜群のようだ。ドルドの倉にある道具の質とレパートリーは村の中で一番良いと言える。
「あー。なんかムカつくな。」
これだけの道具を持ちながら協力的でないドルドに腹が立ってきた。
俺は思わず、柱を掌で叩く。バチンッという音が響く。
「キャッ。」
背後から小さな悲鳴が聞こえた。振り返るとドルドの娘のルーディアがこっそりと立っていた。
「あっ。ごめん。」
「こ、こちらこそ」
家から俺をつけて来ていたのか、全然気づかなかった。
「あの。すみません、さっき父との会話を聞いていて……。その……。私に森の開拓を私に手伝わせてくれませんか?」
ルーディアの突然の提供に俺は驚く。
「えっ!?良いの?ドルドは許可してくれてるの?」
「父は別に。」
「ドルドの許可が無いなら連れていけないよ。」
後からドルドに文句を言われたら堪ったものではない。
「そこを何とかお願いします!私も村の役に立ちたいんです。」
ルーディアが頭を下げる。
「でも、勝手に連れていくのは……。ドルドに何を言われるかわからないし……。それに危険よ。」
「大丈夫です!父には絶対に文句を言わせません!それに私は少しですが、母から弓の手解きを受けています。自分の身は自分で守れます。」
「え!?弓使えるの?ゴーフリーは村に得意武器を持った人材はいないって。それにルーディアはゴブリンに襲われて怪我をしたって聞いたんだけど。」
村には得意武器持った者はいないと言っていたが、ルーディアは弓が使えるというのはどういうことなのか。
「はい、私はまだ14なので職業やスキルの恩恵は受けてませんが、弓は昔から修練してきたので人並みには使えます。村を荒らすゴブリンに弓を向けたところ反撃を喰らってしまい腕に怪我を負いましたが、もう治ってるので大丈夫です。」
得意武器の熟練度やスキルは能力を劇的に向上させるものであって、確かにそれらがなくても武器を扱うことはできる。幼い頃から修練をしているのであれば戦力として計算しても良いかもしれない。
それにしてもルーディアが弓を扱えるとは……。驚きである。
「わかった。じゃぁ準備ができたら村の出入口に集合しよう。」
「ありがとうございます!」
「今日はあまり無理するつもりはないけど、昼食の用意はしてきて欲しい。」
「わかりました。」
俺は一旦家に戻り、準備をする。トーマスからもらった匂い袋とシャルロットさんから預かった毒袋も携帯する。毒袋はルーディアに持たせて何かあったときに対応できるようにしておくつもりだ。昼食用のサンドイッチを袋に積め込み集合場所へと向かった。
俺は森の奥地へ進むためにルーディアと悪路を切り開いている。腰まで届こうかという草を切り取り、行く手を阻む低木の枝をハチェットで切り払う。
先頭を歩く俺が突き出ている枝などを切り払い、後ろからついてくるルーディアがさらに丁寧に草などを刈り取っていく。
ルーディアの背中には弓矢が装備されており、いつでも弓を構えることができる状況だ。一緒に行動する相手が弓をも扱えるのは心強い。
「結構大変だけど、だいぶ開拓できたね。」
俺は後ろを振り返りながら来た道を振り返る。まだ十分とは言えないが、枝を払っただけでもかなり進みやすくなっている。
「そうですね。」
「一旦、もう少ししたら湧水が出てる場所があるからそこで昼休憩にしようか。」
「はい。」
俺たちは、小一時間ほど開拓を行い湧水が出ているポイントまで進んだ。ここは少しスペースがあり休憩ポイントとして適している。
「この調子なら後数日で開拓できそうだね。」
「そうですね。」
いつものベーコン入りのサンドイッチを食べながら岩の上に座って休憩をする。今日もベーコンはいつもより薄いが味はしっかりしていて美味しい。ルーディアも自分が持ってきたサンドイッチを食べている。
「ヒカルさん、干し肉を持ってきたのですが、お一つどうですか?」
ルーディアは袋から干し肉を取りだし、俺に差し出す。
「ありがとう。いただくよ。」
ルーディアから干し肉を受け取り、口のなかに放り込む。肉の香りが口一杯に広がり噛めば噛むほど味が出てくる。旨い。
「美味しいね。ありがとう。」
俺はルーディアにお礼を言う。
「父がヒカルさんに冷たい態度を取ることがあると思いますが、どうか許してあげてください。」
「え!?」
ルーディアの突然の発言に少し驚いた。
「父は異世界から来た人達にあまり良い印象を抱いていないのです。」
「まぁ確かに、歓迎されてるって感じはしないね。」
ドルドは何かと俺に非協力的な節がある。
「実は、数年前に私の母が異世界の人達とパーティーを組んで出ていったきり帰ってこない残っているです。安否不明で父はもう諦めているのですが、その影響で異世界の方々を敬遠してるんだと思います。」
「なるほど、そんなことがあったんだ。」
ドルドの過去なんて気にもしたことがなかったが、そんなことがあったとは。
「ヒカルさん達の頑張りが村を救ってくれていますし、父もきっといつかはわかってくれると思います。」
「そうだといいけど。」
ドルドの俺に対する冷たい態度の理由がわかったが、逆に根が深い問題のような気がしている。
今は村の問題を解決していくうちに信頼関係をゆっくり築いていくしかない。
「ヒカルさん、気を付けてください!」
ルーディアが急に中腰になり辺りを警戒している。
「どうした?」
「ウルフです。恐らく複数います。」
木々の先からカサカサという音がなる。
「マ、マジか!?」
2頭の狼がこちらを見据えて体勢を低く保ちながら近づいてくる。
ルーディアが弓を構え弦を絞る。緊張が走る。
俺はハチェットを握りしめウルフを威嚇する。
「ど、どうする?」
「完全にこちらを狙ってきてます。弓で威嚇してみますが、いざとなったら匂袋を使って逃げましょう。」
「了解した。」
ルーディアがウルフに向かって狙いを定める。俺は袋の中から匂袋を取りだしいつでも使えるように準備をする。
「打ちますッ!」
ルーディアが矢を放つ。シュッという音がなりウルフに向かって鋭く一直線にやが飛んでいく。
「キャンッ」
矢はウルフの前足をかすめ通りすぎていった。
「しまった。外したか!」
ルーディアの矢は惜しくもウルフの急所を捉えることはできなかった。
「ウオォォォォォーーン!」
矢を射られたウルフが雄叫びをあげる。それにつれてもう一頭のウルフも呼応するように雄叫びをあげ始めた。
「ま、まずい。仲間を呼ばれてます。」
「マジか!?」
「ヒカルさん、匂袋をお願いします。」
「わかった。」
俺は袋に穴をあけ、ウルフの方に向かって投げつける。ブワッとした煙が周囲に広がり強烈な匂いが漂う。
「うッ。強烈だ!」
嗅いだことはないがスカンクの屁の匂いよりも強烈な匂いがする。ウルフも匂いに驚いたのか、一目散に逃げていく。
「離脱しましょう。」
俺たちは来た道を急いで引き返し、村の入り口に何とかたどり着くことができた。
やはり俺とルーディアの二人だけでは開拓は厳しいのかもしれない。
一歩進めば一歩後退する。そんなジレンマを抱えながら俺たちは帰路に着いた。
ちょっとだけ更新ペース遅くなると思います。




