15.シャルロット婆さん
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慎重に草木を掻き分けていく。
森の奥に進むにつれて道らしいものはなくなっていく。
時折肌に刺さる植物の葉や枝が鬱陶しい。
「あー。もう、こんなのだったらついて行くなんて言わなきゃ良かったにゃん。」
フィーフィーも絡み付く植物達にうんざりしている。
今探しているのはカッコンの根である。
この先にある沢の近くにに多く存在しているそうだ。
「フィーフィーさん。もう少しなので我慢してください。この先の沢で一休みしましょう。」
「ふぁーい。」
森での探索は思ったより大変だった。フィーフィーが『にゃん』を付けずに返事をするところもはじめて見た。きっとこの道なき道を進むのにうんざりしているのだろう。
しばらく進むとシャルロットさんが言っていた沢があった。俺たちはそこで少し休憩を取ることにした。
「俺もこんなに大変だとは思いませんでした。昔からこうやって進んできていたのですか?」
俺は腰を下ろしながらシャルロットさんに尋ねる。
「いえ、昔は良く人が通っていたため、きちんと通り道になっていたのですが、森に入る人もいなくなったため、植物が生い茂って道を塞いでしまったのでしょう。」
「なるほど。」
数年の間で道を植物が占領してしまったようだ。この森の生命力はかなり強いものらしい。
「この沢沿いにカッコンという植物が沢山生えています。さらに奥へ進むと湖が見えてきます。そこには安らぎ草が生い茂っていますので、この道が確保できればスムーズに採集できるようになると思います。」
「帰りは少しだけ植物を伐りながら道を作っていきますか。持ってきた刃物がナイフだけなので、次に来るときは鉈みたいな物があると良いのですが。」
「そうですね。村にはロクな武器が残されてないので鉈などは探さないといけませんな。」
今日は来るまでに時間がかかり過ぎてしまったため、目的の物があるか確認すつ程度に留めるつもりである。次回来る際の事も考えながら進んでいきたい。
「次もまた来るにゃんか?フィーフィーはデザート貰っても絶対に次は来ないにゃん!」
フィーフィーが断固拒否という表情を浮かべる。
「まぁ次はシャルロットさんに同行してもらわなくても採集できるだろうから、俺だけで行くよ。」
「良かったにゃん!」
「と言っても本当は誰かついてきてくれると嬉しいんだけどね。」
「ふーん。ヒカにゃんが頑張れば解決だにゃん!」
さりげなくフィーフィーに同行してほしいというアピールをするも見事にスルーされたようだ。
「今のところゴブリンの気配はしませんが、軍師殿一人でここに入るのは危険だと思います。ここまで奥地に来るとゴブリンだけでなく、ウルフも出てくる可能もありますので。」
「ウ、ウルフですか。それは初耳ですね。」
「言ってなかったですか。すみません。」
森の中を一人で進むのはやはり無謀かもしれない。かと言ってフィーフィーを連れてこようにもこの調子では無理だ。
「うーん。村に帰ったらゴーフリーに相談してみましょうか。」
「そうですね。」
何か解決策を考えないと薬草作りはここで断念することになってしまう。せっかくシャルロットさんがやる気を出してくれているので、なんとかしたいところだ。
「さて、休憩はこの辺にして沢沿いに下っていきますか。ついでにカッコンの根の取り方をお教えします。」
俺はカッコンの根の取り方をシャルロットさんに教わりながら湖へ移動した。カッコンの根は苔の生えた場所多く生息するらしい。いくつか掘り起こす事ができたため、次回からはシャルロットさんがいなくても採集できるだろう。
採集のコツが分かったところで早々に湖に向かうことにした。急がないと帰りに日が暮れてしまう可能性がある。
沢をどんどん下っていく。苔で滑りやすいところもあったが、草木が生い茂っているわけでもないので比較的進みやすかった。川の水量が少ないことも進みやすい要因の一つだった。
「さぁ、着きましたぞ!」
「うわぁー。」
目の前には綺麗な湖が広がっている。かなり大きめの湖であるのか、水面には少し波がたっている。
「凄いきれいにゃん!」
フィーフィーも感動しているようだ。
「フィーフィー、また来たくなった!?」
「草木が鬱陶しいから来たくないにゃん!」
湖に感動して、再度訪れたいと思ってくれていないかと願ったがダメだったようだ。やはり、沢に行くまでの道をなんとか確保する必要がある。
「軍師どのあちらに生えているのが安らぎ草です。」
シャルロットさんが指す方向に一面安らぎ草が生えていた。浅瀬に生息しているようで、水の中から水面に向けてまっすぐ生えている。
「これはまた大量にありますね。」
「しばらく誰も採りにきてませんでしたからな。それにしても凄い。」
シャルロットさんも驚くほどの量が生えているようだ。
俺たちは早速安らぎ草を刈り取り袋に入れた。こちらはカッコンの根と簡単に多くの量を手に入れることができた。
「では、日が暮れないうちに早くもどりますかな。」
「そうですね。」
俺たちは足早に村へと戻った。ゴブリンやウルフの警戒も怠らなかったが結局遭遇することはなかった。
村に戻るとゴーフリーが心配して入口まで迎えに来ていた。採集した材料を見せるといつものように感激をしていた。やはり、チャレンジして佳かったと思えた。
翌日、シャルロットさんの薬作りを見学させてもらった。
煮沸したお湯の中にざるを置き、安らぎ草を置いていく。蒸すことで安らぎ草の繊維を柔らかくするためのようだ。蒸す時間を調整するのが非常に難しく熟練のタイミングで仕上げないと効果が薄れるそうだ。
安らぎ草を蒸している間に今度はカッコンの根を細かく刻んでいく。こちらは普通に刻むだけなので特に大きな問題なさそうだ。
安らぎ草を蒸し終わると乳鉢に入れ刻んで置いたカッコン草も同時に入れていく。
「さて、ここからが腕の見せどころだよ。ちゃんと見ておいてね。」
シャルロットさんはそのまま乳棒で材料をすりつぶしていく。とくに変わった事をしているわけでもなく、誰でもできる作業だと思っていたが、しばらくすると材料が黄金色に光りだした。
「え!?」
シャルロットさんの額から大量の汗が流れ出てくる。
「な、何が起きてるんだ!?」
目の前の光景に驚き思わず声が漏れてしまった。
かなり長い時間をかけて丁寧にすりつぶしていく。やがて全てが液体状に変化すると光も徐々に収まってきた。
「ふぅ。できあがり。」
シャルロットさんが額の汗を拭う。
「シャルロットさん、これは一体!?」
「驚いたかい!?」
「ええ、まぁ……。」
「これが生産スキル持ちの実力さ。」
「さっきの光がですか!?」
「そう。私は薬師で生産スキルに『調薬』を持ってるんだ。『調薬』の生産スキルを発揮するとさっきのように材料が黄金色に光るんだよ。」
「へぇー。なるほど。」
「あんまり無理しすぎると精神エネルギーを使いすぎて立てなくなっちゃうんだけどね。」
どうやらあの光は、薬草の材料に精神エネルギーを注ぎ込んだ結果起きる現象のようだ。
「薬草を作るときは、生産スキル持ちじゃないと効果がほとんどでないからね。精神エネルギーを注ぎ込むことで初めて材料の潜在力を十分に引き出すことができるのさ。」
シャルロットさんは得意気な顔で俺を見つめる。
「村に『調薬』のスキルを持った人って他にいないのですか。」
「あぁ、今は私一人だよ。」
「そうですか。」
薬草作りは材料を混ざれば誰でもできるかと思っていたがそうではなかったらしい。
こうなると薬草作りはシャルロットさん頼りになりそうだ。
「まぁ、この世界で産まれたものは15歳になると神殿で職業を授かる事ができるから、もしかするとマリンやルーディアあたりが『調薬』スキルを所持するかしれないね。」
「え!?そうなのですか?」
「あぁ、村に残ってる奴らもみんな職業を授かってるよ。まぁ戦闘向きのスキルを持った者は皆兵役に出されてしまったから、ほとんどが農民で生産スキルも『栽培』とかばかりだけどね。まぁおかげで小麦が良く育つんだけど。」
この世界の人達も職業やスキルをっているなんて知らなかった。そういえば得意武器がどうとかゴーフリーが言ってた気がしたが、あまり良くわかってなかったんだな。もっとこの世界のことについて知る必要がある。
「さぁ、作業はまだまだ続くよ。もうひと仕事頑張りますかね。」
シャルロットさんは再び乳鉢に材料を入れかき混ぜ出した。
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