14.村人達の提案
異世界の職業は軍師見習いだった件を読んでいただきありがとうございます。
昨日、全体的に文章を見直し修正しました。
今後はステータスとかの設定も見直すかもしれません。
作業場での木材の加工は順調に推移していた。毎日イノックとジニーが大木を運んでくるため作業場は慌ただしい。
「おい!ちょっとこっちを手伝ってくれ!」
作業場ではハルバンを中心に切り株の盾の加工が行われている。
ハルバン達は大型のノコギリを二人一組で使い、大木を輪切りにしていく。作業はかなりの重労働なので休憩や交代などを挟みながら行っている。
大木を輪切りにした後は整形作業に入る。木の皮を剥ぎ、ノミやヤスリで形を整えていく。防腐剤も上から塗っていき、最後は取っ手を釘で打ち付けて頑丈に固定をする。この作業はマリンを中心としたメンバーで行っている。
見映えは良くないが狙い通りの物が作れているようだ。
「あっ。軍師様!お疲れ様です。」
盾の仕上げに入っているマリンがこちらに気づいたようだ。
「お疲れ様。調子はどう?」
「はい、これを見てください。かなり順調に仕上がってきています。」
仕上がったばかりの盾を渡される。取っ手部分もしっかり釘で打ち付けられており、弓矢からの攻撃だけでなく、剣や槍で突かれても十分に防いでくれるだろう。
「さっき木刀で試し打ちしたのですが、しっかりと防いでくれました。」
どうやらマリンは試し打ちをしたようだ。見た目はおしとやかだが、こういうところは大胆である。
「ありがとう。見た目は少し悪いけど頑丈そうだ。この調子でどんどん量産していって欲しい。」
「はい。実はその見た目のことなのですが、さっきハルバンとも相談をして動物の革を使って盾を覆うのはどうかという話をしていました。防御力としてはあまり変わらないかもしれませんが、見た目はかなり改善されると思います。」
「なるほど。木材をベースにした革の盾ってことね。」
「伸ばした革を釘で打ち付けるだけなので簡単に作れます。後は取っ手部分も革ベルトを付けたいとおもっています。革ベルトにすることでしっかりと腕に固定することができ、動きやすくなると思います。」
安価な切り株の盾を量産する予定だったが、村人達がそれぞれ工夫をしてより良い物を作ろうとしているようだ。
「良いアイディアだね。付加価値がつけれるよう色々試してみるのは良いことだと思う。少しでも高く売れれば目標金額にも大きく近づく事になるから是非お願いしたい。」
「はい!」
マリンとの会話を終えると、俺は大量に積み重ねられている盾を見ながら金額の計算をする。リルムフォルムで売られていた木の盾は砦が奪われる前の値段で銅貨80枚だった。奪われた後では1.3倍程度の値段に上がっていた。今ではもっと値上がりしていると想定している。それを加味しても最低300枚以上の盾作る必要がある。
計算では期限まで1日8枚から9枚の盾を作る事ができれば間に合うが、今のペースだとかなり厳しい。小麦の収穫が終わり労働力があまっている時期とは言え、少し想定が甘かったのかもしれない。
「うーん。何か他の手段も考える必要があるな。やっぱり最悪の場合は羊を少し売ってもらう必要があるかも。」
村で飼っている羊は20頭程度で一匹の値段が銀貨15枚から20枚程度とのことだ。盾を売っても目標金額に届かない場合は羊を手放す事を検討していたが、村に残された最後の財産であるためゴフーリー達はなるべく手放したく無いようだ。
1ヶ月半で金貨5枚というのは少し厳しい条件だったかもしれない。最近ではこの不足した金額をどう捻出するかが悩みの種だ。
色考えているうちに昼食の時間になった。
俺は村から持ってきたサンドイッチを食べる。新鮮な野菜にベーコンがたっぷり挟まれていて非常に美味しい。
「羊を売ることになったらベーコンなしのサンドイッチになっちゃうのかな。」
村の財政が悪化するにつれて食料の質も下がってくる。ベーコン入りサンドイッチが食べられなくなる日も近いかもしれない。
「浮かない顔ですな。」
考え事をして難しい顔になっていたところにシャルロットと呼ばれている小柄で愛想の良いお婆さんに声をかけられた。
「こんにちは、シャルロットさん。ちょっと考え事をしてまして。」
「お金のことですかな。」
「はい、みんな頑張ってくれているのですが、どうしても少し足りなさそうで羊を少し売ることになるかもしれません。」
俺は現状を正直に伝えた。これはゴフーリーやドルドにも伝えていることなので村人は全員知っていることだろう。俺は少し申し訳ない気持ちになった。
「そうですか。あまり気を落とさないで下さい。この村で小麦や羊以外のものがお金になるものができるなんて最近では考えられませんでした。ゴブリンもあまり襲って来なくなりましたし、以前より安心して暮らせています。これも軍師様のおかげです。」
「いえいえ、村のみんなが頑張ってくれているからですよ。」
確かに以前よりゴブリンの襲撃も少なくなってきている。たまに単独で行動している奴が現れるが、そういう奴等はすぐにフィーフィーが追い払っている。
安全が確保できたことで盾の制作ができるようになったと言える。
「実は軍師様に相談があって来たのです。」
「相談ですか。」
シャルロットさんからの相談とは意外だった。普段は大人しく優しいお婆さんという印象で特に深い会話をしたことはなかった。
「はい、実は森の奥に生えている『安らぎ草』と『カッコンの根』を採りに行きたいと思っているのですが。」
「安らぎ草とカッコンの根ですか?」
「はい、これです。」
シャルロットさんがニラのような青々とした草とゴボウのような根っこを見せてきた。
「これらは高品質な薬草を作るのに必要な材料なのです。」
「高品質な薬草ですか。」
シャルロットさんは村で唯一の薬師である。俺がゴブリンに倒された時に使った薬草はこの婆さんが作ったものであるとマリンから聞いていた。
「ええ。私も村に貢献したいと思いまして。戦の準備で武具の値段が上がっているのであれば、薬草も高く売れるのではと考えたのです。材料さえ十分に確保できれば、ある程度の量の薬草を期限までに作ることができます。」
「おお!それは凄い!」
「薬師としては、ほとんど引退したような状態ですが、こういうものであればまだまだ作ることができます。」
戦が始まれば、当然薬草の値も上がる。高品質な物を作ることが出来れば一気に稼ぐことができるかもしれない。
「良いアイディアですね!早速検討しましょう!」
俺はシャルロットさんと村に戻り、ゴーフリー、ドルドと相談をする。
「シャルロットさんと森に入って薬草の材料を採ってきたいと思ってるんだけど。」
「森の奥地に入られるということですか……。最近はゴブリンも大人しいですが、さすがに危険すぎませんか?」
ゴーフリー、ドルド共に難色を示している。高齢のシャルロットさんを連れて森に入るのだ。心配して当然である。
「伐採作業が終わった時間帯であればフィーフィーも動けるようになるので、俺とフィーフィーが護衛についていこうと思ってます。慎重に進み危険そうな場所であればすぐに引き返します。」
「私からもお願いするよ。これでも若い頃はよく一人で森に入って薬草を採っていたものだ。生えてる場所や危険そうな場所は熟知してるつもりだよ。」
シャルロットさんも負けじと森に入ることを主張する。
「と言われてもなぁ。」
ドルドが難しい顔をしている。
「どうせ老い先短い命だ。最後くらいやりたいようにやらせてくれぬか。若い軍師さんが頑張ってるのを少しでも手助けしてあげたいんだ。」
「うーん。まぁシャルロットさんがそこまで言うなら仕方ありませんな。」
「そうですな。わかりましたですじゃ。但し、あまり無理はなさらず、危険を感じたら直ぐに引き返してきてくだされ。」
シャルロットさんの想いに二人が折れた。これで遠慮なく森に入ることができる。
「よしっ。軍師様、そうと決まれば早速準備しますぞ!」
「わかりました。頑張りましょう!」
俺はシャルロットさんと森に入る準備を行う。草木をかき分けるためにナイフを用意し、いつも使っている木の盾の手入れを行った。
シャルロットさんは薬草を入れる用の革袋と木の棒を用意している。フィーフィーもつれて行く予定とは言え、心もとない装備だった。
「一応、これも持っていこうと思ってるんですけど。」
俺はシャルロットさんにポーチを見せる。
「それはなんかですかな?」
「匂袋です。行商のトーマスにした餞別としてもらったのですが、強力な匂いで魔物を避けることができるようです。使いきりなのでいざという時にしか使えませんが。」
「なるほど。匂袋ですか。そういえば私も似たようなものを作った事があります。倉から持ってきますので少しお待ちください。」
シャルロットさんが倉に入っていき、道具を持ってくる。
「これですじゃ。」
ポーチというより、怪しげな袋を取り出してきた。
「これも匂袋なんですか?」
「いいえ、これは粉末上にした毒が入った袋です。」
「えー!毒ですか!」
シャルロットさんが袋を近づけてくるが、俺は思わず身をのけ反らしてしまう。
「大丈夫ですじゃ。毒と言っても体調が悪くなる程度の効果が薄いものです。人が吸い込むと吐き気や軽い頭痛を起こし気分が悪くなりますが、魔物にも少しは効果があるはずです。」
「そ、そうなんですね……。」
いざという時に使えるよう毒袋はシャルロットさんが持つこととなった。この毒袋もシャルロットさんが作成したらしい。毒も扱えるとはさすがは薬師である。
「この毒袋があれば森での活動もしやすくなりますね。これも材料も森にあるんですか?」
「これは、銅山で発生する有毒なガスを放つ鉱石を利用して作っております。銅山に行くことができれば材料を確保することができますね。」
村の南に位置する銅山は盗賊達のアジトになっていた。最近は盗賊達も討伐され、活動は落ち着いているそうだが、廃校で古くなっている銅山には、まだ多くの危険があるため誰も近づかないらしい。村からも遠く離れているため探索は厳しい。
「なるほど。毒袋の制作は難しそうですね。」
毒袋の制作は一旦諦めることにした。それよりも森に入って薬草の材料を確保することが優先だ。
俺はシャルロットさんと共に伐採場まで足を運んだ。
イノックがスマッシュインパクトで木をなぎ倒したところを見届けてからフィーフィーを呼んで森へに同行をお願いする。
「うーん。嫌だにゃん!面倒だにゃん。」
フィーフィーに事情を話し森へと向かおうとしたが拒否されてしまった。
フィーフィーにはずっとゴブリンの警戒にあたってもらっていたため、少し無理をさせているのかもしれない。
「まぁお嬢さん、そう言いませんと、一緒に来てくれたらものすごく美味しいデザートを沢山振る舞いますよ。」
シャルロットさんが特別なデザートを振る舞うことを提案する。エサで釣ろうという作戦だ。
「ほんとかにゃん!フィーフィーは甘いものに目がないにゃん!ついていくにゃん!」
フィーフィーはテンションを上げてはしゃぎまくっている。
結構単純だな……。
「良いのですか?」
「保管している薬の中に喉の痛みにに良く効く蜂蜜があります。もうすぐ古くなるところでしたので大丈夫です。」
シャルロットさんが笑顔を見せる。
シャルロットさんのおかげでフィーフィーを説得することができた。さすがは歳の功である。
「よしっ!じゃあ慎重に行動しよう。」
会話を終えると、俺たちは準備を整え、森の奥へと入っていった。
次回は森の奥地の探索です。文章を書くコツがわかって来て少しは読みやすくなってきているのではと思っていますが、自分では客観的な判断ができないので感想いただけると嬉しいです。




