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10.軍師の成功報酬

感想お待ちしております

 

 青年がこちらを真っすぐみつめている。俺は鑑定の結果を緊張しながら待った。

「『(銀)軍師の成功報酬サクセスギフト』の鑑定結果が出ました。」

「は、はい。」


 俺は思わず息を飲む。


「この能力は絆で結ばれた者の能力を向上させることができます。」

「絆で結ばれた者?」

「はい、簡単に言うとあなたの仲間です。」


 仲間ってことはフィーフィーやイノックの能力を上げることができるということか!?


「もう少し具体的に教えて欲しいのですが。」

「はい。少し説明がながくなりますが、順を追ってご説明します。」


 そういうと青年はゆっくりとした口調で話しはじめた。


「まず、あなたが軍師として活躍して何かを成し遂げた際に成功報酬(ギフト)がもらえます。」

「はぁ」

「この成功報酬は目に見えるものではなく、あなたの内面へと溜め込まれていきます。」

「内面!?」

「はい。その内面に溜まった力を仲間に当てはめることで仲間の能力を向上させることができます。これが軍師の成功報酬というスキルの正体です。」


 ???なんだかよくわからないな。


「ちょっとまだ理解できないんだけど。」

「では、具体的に試してみましょう。」


そういうと青年は水が入った桶を用意して聖水を注ぐ。


「聖水写しはご存じですよね?」

「はい。」

「では少し血をたらしていただけますか?」

「わかりました。」


 俺は青年から針を受け取り指に軽く刺した後、そのまま桶に血をたらした。

 俺のステータスが浮かび上がってくる。


「まずは仲間の事を思い浮かべてみてください。」

「はい。」


 俺はイノックやフィーフィーの事を思い浮かべてみた。


「では、その中の一人をもっと強くをイメージしてください。共に過ごした時間、闘う姿などをもっと強く思い出し、そして仲間を強く成長させたいと心から祈ってください。」

「はい。」


 俺は言われた通りフィーフィーの戦いぶりなどをイメージする。そして彼女を強くしたい。彼らを成長させたいと強く願う。


「そう、その調子です。そのままあなたのステータスが写っている聖水を触れてください。」

「はい。」


 俺は言われるがまま桶に写し出されている俺のステータスに触れてみる。


「うっ、ううっ。」


 俺の中にある力がゆっくりと抜け出していくような感覚に襲われる。脱力感にも似たその感覚は俺の全身を支える力さえ奪っていく。


「はい。えっ。こ、これは……。」


 聖水写しによって目の前に写し出されていた俺のステータスの最後の行に段々と文字が浮かび上がってくる。


《軍師の成功報酬》

対象:フィーフィー 

取得可能ギフト:筋力成長速度UP 効果微小 (1)

        敏捷成長速度UP 効果微小 (1)

        技成長速度UP 効果微小(1)


「これがあなたの能力の正体です。」

「え!?」

「あなたが仲間に成長して欲しいと強く願った時、あなたの内面にある成功報酬を使って仲間の成長力を高めることができます。」


 俺は桶に写し出された文字を改めて確認する。


「効果の大小などは、あなたが得た成功報酬によって左右されるものと思われます。」

「そ、そうですか。」


 俺は思わぬ展開に言葉を失う。


「試しにどれか効果を選択しみてください。」


青年に促され俺は筋力の効果を押してみる。

水面に【筋力成長速度 効果微小 取得】という文字が浮かんでくる。


「これでフィーフィーの筋力の成長速度が上がるってこと?」

「その通りです。次にヒカル様のステータスを見てください。」


 ステータスを見ると軍師の成功報酬の数字がさっきまで(2)だったのに(1)に変わっていた。


「こ、これは!?」

「報酬を使って効果を発現させたため数字が減ったのです。つまりあなたの報酬は残り1ということになります。」

「え!?マジ!?」

「報酬は先程も言ったように軍師として活躍すれば手に入ります。このように味方を強くしていく事がこの能力の正体です。」

「なるほど。」


報酬が(2)になっていたのは、ゴブリンを撃退した結果なのかもしれない。


「以上が鑑定の結果となります。後は使いながら自分で効果を確かめてください。」

「わかりました。ありがとうございます。」



 俺は鑑定結果を聞き終わると青年に別れを告った。トーマス達が居る部屋へと戻る。


「おうっ。ヒカル、少し時間がかかってみたいだけど、どうだった?」


 トーマスが『(銀)軍師の成功報酬サクセスギフト』の鑑定結果について聞いていたため、一連の話を伝えた。


「そうか、仲間の成長をね。なかなか面白いな。」

「自分に適用できないってのが少し残念だけどね。」

「まぁそうだな。ただ、軍師ってのは隊を勝利に導くのが役目なんだろ!?自らが戦わなくても勝利に導くことができれば良いんじゃないか?銀色の特殊能力に見合った十分な能力だと俺は思うぞ。」


 トーマスは白い歯を見せながら親指を立てる。


「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう。」

「まぁ、上手く使いこなして、俺にひと儲けさせてくれよ。期待してるぜ。」

「おい、結局それが目的か。」

「当たり前だろ。こちとら商売人だぜ!」


 こういった憎めない人間性もトーマスが商売人としてやっていける一つの才能なんだろう。


「じゃあな坊主!また何かあったら来いよ。」

「ありがとうございます。ロレックさん」


 ギルドマスターのロレックさんにも挨拶をし冒険ギルドを出る。

 その後はトーマスの仕入れなどに付き添った。

 穀物の売却の他に毛皮や薪などの市場を見回った。これから冬に入るということで値が上がるため売値などをチェックした。今後は国の北にある村を中心に買い付けを行う予定らしい。


 俺は村のお土産やゴブリンの襲撃時に壊れてしまった小屋を直すため釘などの材料を購入した。トーマスが交渉してくれたためかなり安い値段で大量に購入することができた。


 「それにしてもそんなに釘を買ってどうするんだ?小屋の補修だけならそんなに必要ないと思うんだが。」

 トーマスは俺が大量に釘を購入したことを不思議がっているようだ。

「あぁ、実は村の防衛のために物見矢倉とか作れないかなって。襲撃された際に高い位置からなら状況把握しやすいし、石を投げつけたりすることも出来ると思うんだ。」

「なるほど。物見矢倉か。良いアイデアかもな。」


 トーマスが再び白い歯を見せながら親指を立てる。トーマスは嬉しいことや良いことが起きたときには必ずこのしぐさをする。商人の目線からも良いアイデアと認めてくれたようだ。


 俺がよく遊んでいたゲームでも物見矢倉などを建てて城を強化したりしていた。ゲームのように単純ではなうだろうが、物見矢倉を建てれば状況把握がしやすくなるだけでなく、高い位置から石を投げることができる。高所からの投石は重力を利用して強力なものになるし、反撃を受けにくく地上よりも安全に攻撃できる。

 また、石を投げるだけなら得意武器がない村人にもできるため人材の活用という意味でも防衛力はかなり向上するのではと考えている。


 夕食は豚料理に定評がある酒場で取ることにした。豚のステーキや甘辛く煮つけた豚足などを思う存分堪能した。鑑定が終了したお祝いとして盛大に飲み食いをして散財をしてしまったが、まぁ多少の出費は村の人たちも許してくれるだろう。


 トーマスが翌日に手配をしてくれた馬車が銀貨4枚を計算すると残りの手持ちは銀貨20枚となった。少しでも村に収入がもたらせることができてほっとした。

 鑑定も無事に終えたこともあり、リルムフォルムへ来て一定の成果を上げれたと言える。


「明日お別れだな。」


 宿へと戻り、寝る準備をしていたところにトーマスが話しかけてきた。


「お別れと言っても、またバーミントンに来てくれるんだろ!?」


 俺は、ベッドを整えながらトーマスに返事をする。


「まぁ北に行ってひと儲けしてからだな。冬があけるまでは大忙しだからな。」

「そうか。まぁ気長に待ってるよ。」


 商売人は儲け話があれば、そっちに優先して行く必要があるんだろう。少し寂しくなるがトーマスの商売の邪魔はできない。

「そういえば、念のためこれを渡しておくよ。」


 トーマスから小さいポーチのようなものを手渡される。


「これは?」

「匂い袋。魔物が嫌がる匂いが入っている。行商の必需品さ。行きでは魔物に会わなかったら、使わう機会がなかったけど、帰りの道中で万が一ってこともあるからな。」

「良いのか?」

「いくつかストックがあるから問題ない。この袋を思いっきり叩くと中の陶器が割れて、嫌な匂いが発生する。その状態で魔物に向かって投げつけるんだ。そうすると一時的だが魔物が怯むとがある。」

「なるほど。」

「いいか、怯んだ一瞬の隙をついて、全力で逃げるのがコツだ。覚えとけよ。」

「わかった。ありがとう。」


 その後、俺たちはくだらない会話をしながら眠りについた。


 翌朝はゆっくりとしながら朝食をとる予定だったが、事態は突然やってきた。


 「おい!トーマス!トーマスは居るか!!」

 誰かが宿の二階に慌ただしく駆け込んでくる。

 トーマスは寝ぼけながらドアを開ける。


 「トーマス!ここにいたか!」

 「あぁ、アルベルトか。どうした!?」


 ドアを開けた先には茶髪で細身のイケメンが慌てた様子で立っていた。


「どうしたじゃない!北にあるグレンデル砦が襲われてのっとられたんだ!!」

「なにぃ!本当か!?」

「あぁ、昨夜早馬で報告があったそうだ。みんなこの話題で騒然としてるぞ!」


 北の砦が何者かに襲われたらしい。北と言えばトーマスが毛皮などを買い付けに行く予定だった場所だ。


「それで!?襲ってきた奴らはわかってるのか!?」

「どうやら北の荒れ地アンデッドが大軍で襲ってきたらしい。砦は占拠されてアンデッドだらけという話だ。」

「まさか黒の魔術師の仕業か!?」

「恐らくは。」


 俺はトーマスとアルベルト横で聞きなれない単語に意識を集中しながら二人の会話を黙って聞いていたが、アルベルトが俺に気づいたようだ。


「あっと。すまない。客人がいたのか。」

「あぁ、こちらはバーミントン村で異世界召喚されたヒカルだ。」


 トーマスがアルベルトに俺を紹介する。


「どうもはじめましてヒカルです。」

「アルベルトと申します。トーマスとは商人組合の仲間です。よろしく。」


 挨拶を済ませるとアルベルトは慌てた様子で宿を出ていった。どうやら他の商人仲間にも知らせに行くようだ。

 トーマスも慌てた様子で準備をしている。


 「ヒカル、戦が始まるぞ!武具の値段が上がってこれから忙しくなる。馬車は昼過ぎに迎えに来るよう手配しているからそれに乗ってくれ。俺はこれからひと稼ぎだ。」

「あぁわかった。」

「じゃあな。道中気をつけろよ。」


 トーマスは俺に別れを告げると慌ただしく出ていった。トーマスとアルベルトの会話が聞こえたのか、宿の中も少し騒然としている。


 俺は朝食を済ませると情報収集も兼ねて軽く市場に出かけた。市場は昨日よりも活気があり、血の気が多くなっているように感じられた。

 トーマスが言っていたように物の値段が激しく動いているようで特に武具や薬草などの値段が大幅に上がっていた。

 黒の魔術師の情報も少し聞くことができた。数十年前から北の荒れ地で活動しているネクロマンサーの事をその見た目から黒の魔術師と呼んでいるらしい。正体不明で死体を漁る不気味な存在として認知していたが、詳しい事はあまりわかっていないらしい。遭遇した兵士の情報では強力な魔力を使うということで昔から警戒されていたようだ。


 俺は一通り情報収集を終えると宿に戻り馬車の到着を待った。ことがバーミントン村に大きな影響を与えるとはこの時は知るよしもなかった。


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