表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

視線交互

まなざし

作者: 風花 深雪



こちらは『とけた』の別視点ver.です。


照りつける、暑い日差しと蝉の声。


途中、コンビニで買ったアイスは溶けはじめていた。




……オレは夏生まれだけど、この暑さはやべぇ。




ぱくぱくと食べ進めたアイスはすぐになくなって、残ったものは熱気だけ。





「あぢぃ」


「口に出して言わないで。余計暑くなる」


「勝手に出ちまうんだっつの」





隣を歩くのは、幼馴染みのすず。


細い身体に大きな瞳。少しミステリアスな雰囲気だけど。笑った顔は可愛い。


そんなすずはどこかぼーっとしていて。どことなく、足どりが悪い。





「おい、大丈夫かよ。つかアイス溶けてんぞ」





言って日よけがわりになればと、頭にタオルをかけてやった。が





……返事がねぇ。





ぽたぽたと溶けゆくアイスはそのままに、ふらりと揺れるすずの身体は



ゆっくりと倒れていった。





「…!おいッ 大丈夫かよ!?」





咄嗟に出した腕の中、小さい身体はすっぽりと収まった。





「……大丈夫。いつものことだよ」





ンなわけあるか。


昔から暑いの苦手なのは知ってたけど、まさか倒れそうになるなんて。


もっと早く気づいてやりゃよかった。




でかい図体を曲げて覗いたその顔は、少し。弱々しくみえて。早くなんとかしてやんねーとって、思ったのに。





………あれ?





なぜか不覚にも、胸が鳴った。


潤んだ瞳とか、紅潮した頬とか。

その他いろいろ。





なんだ、これ。





ぶわっと一気に駆け巡る衝動と。吹き抜けた熱い風に揺れる髪。


ぽたりと落ちた、汗とアイス。




こんな状況で、不謹慎だとは思うけど。


すずの紅いその顔が、もっとみてぇなんて。





───どうかしてる。





夏の日差しは強さを増して、今まで以上に降り注ぐ。その中で。





全部ぜんぶ……夏のせい、暑さのせいにして──。







アイスで濡れたすずの指を、舐めてみた。















「おっし。んじゃ帰ろーぜ」



あの後、調子を戻したすずは終始真っ赤だった。


大きな目を見開いて、思った通りにビクつく身体。


真っ赤な顔して固まって。ぱくぱくと空気を食む姿は、とても可愛らしかった。





なんつーか、いいもん見れた。





くるりと背を向けると、平気なフリを決め込んだ。

悟られないように。歩き出す。


……暑いことには変わりねぇのに。



熱をもったオレの頬を、夏の風が撫でて







燦々と降りそそぐ太陽の下


緩む口元を隠した。









恋だと知るのは、もう少し先のこと。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 別視点で、心理描写が理解できました。 夏の一コマですね。素敵な関係です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ