土間透
しばらくの間、土間透という男を観察してみてわかったのだが、彼は寡黙で見た目も地味だが、コミュニケーション能力は以外に高いらしい
彼は驚くほど早くクラスに馴染み、まるで長く付き合いのある隣人のように当たり前に存在していた
かといって特別親しい友人がいるでも無く、昼休みなどは1人本を読んで過ごしているのだ
時折、彼からの視線を感じる
私が彼を観察しているように、彼も私を観察しているのだろう
特に私がコレクションを愛でているときには、恐怖の表情でこちらを見ている
どうやら、間違いない
彼には見えているのだ
原理はわからないが、どうやら私の妄想が彼に筒抜けているらしい
これ以上遠巻きに観察していても無意味と悟った私は、とある日の放課後、帰り支度をしている彼に話しかけた。
「土間くん、ちょっといいかしら?」
彼は話しかけたのが私だと認識すると顔を強ばらせた
「姫路・・・さん? ぼ、僕に何か用事かな?」
「ええ、少し話したい事がありまして。ここじゃあ何ですしゆっくり話せる場所までいきません?」
土間透は、まるで戦地に向かう兵隊のような深刻な顔で頷くので、少し笑いそうになってしまう
ナニヲそんなに恐れているのかしら?
まあ、それをいまから聞くのだけれど
私は彼を人気の無い校舎の裏まで先導すると、後ろからおずおずと着いてくる彼に向かって、振り向き様に手にしたあるモノを放り投げた。
反射的にと、いう風にソレをキャッチする土間透
次の瞬間、ソレの正体に気がついて絶句する。
そう、ソレは人の首である
「ぅうゎああああ!?」
「何を騒いでイルのかシら?」
「何をって、こんな・・・・・・」
「こんな、なに? ソコには何も無いわよ」
そう、何も無い
私は何も投げてなどいないし、彼は何も受け止めてなどいない
全ては私の妄想なのだから
「・・・・・・あ」
「そう、あなたには見えているのかしら? 一体なにが? いえ、一体なぜあなたには私の妄想が見えているの?」
「・・・何を言っているかわからないな」
「そう、とぼけるつもりなのね。なら私にも考えがある」
これなら、ドウナル?
━━━そして世界は切り替わる━━━