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序章:歴史のはじまり

ん~~黒歴史です。あるゲームを題材とした小説だったんですが、それをぶん殴って、水につけて、酒に浸したような作品です。書き始めは今から十年近く前なので、どう考えても悪化しているようにしか見えません。

 峻厳で、通年雪に覆われた山地。人々を全く寄せ付けないその偉容は、多くの人々の言葉で彩られてきたが、要約すると「死の山」になるらしい。その「死の山」をほとんどの領域としながらも、かろうじて人類が生存できるであろう山地に存在した小国家、ネーデルワンド王国は他の干渉が無いことを良いことに様々な暴政と圧政を繰り返してきた。一説によると、他国へ旅に出た者は全員密かに処刑されたという説もある。人口は三万人。王国の中では一番小規模な王国であった。因みにミルマはあくまでも宗教団体で、広大な土地も宗教団体の持ち物とされている。

 大陸暦四五〇年雷神の月、暴政と圧政でささやかながらも贅沢を満喫していた王とその側近たちに対する報いが歴史上に記録される。突如現れた集団、ある目撃者によると「空から突然現れた」と焦点の定まらない目で語り、またある者は「地面の中から生えてきた」と涎を垂れ流しながら語った。

何はともあれ、この世界以外から出てきた魔物の集団……いや、軍団による侵略であった。少なくとも最低限の陣形を維持し、中には指示を出している中級指揮官らしき者もいたらしい。

ネーデルワンド王国は山岳国家故に、少数ではあるが世界一と言ってもまだ過小評価と言われる歩兵団を有していた。最初こそ城を拠点に一進一退の攻防を続けていたのだ。

 だが、魔物は魔法を主体とした軍団で、いかに山岳戦のスペシャリストと言えども、空中からの魔法攻撃を防ぐことはできなかった。数少ない強弓部隊を先制で潰されると逃げ惑うしかない。

 もう一つは、過去様々な国家が滅びた最大の理由と一致するようだ。おそらく、内部での裏切りがあったのではないだろうか。歩兵兵団を失ったと言っても、まだ二千の兵力を誇っていた。この兵力で一進一退していたのだ。だが、その兵力維持のため、ネーデルワンド王カミュア十二世は増税を繰り返し、歩兵団を補って長期戦に持ち込もうとしていた。次の月、炎の神月であれば魔法の効力が半減すると見ていたからだ。だが、カミュア十二世は戦略的な視点はあれど、民を慰撫する執政者としての資質に欠けていた。

 雷の神月半ば、まず民が裏切った。ネーデルワンド城に徴発されて働いていた民が暴動を起こしたのだ。これだけなら、歩兵団が制圧するところだ。ところがその歩兵団も裏切った。いかに金銭的な優遇を受けても、国民の憎悪を高値で買う国王と一部側近に対して嫌気が差していたのだろう。一糸乱れぬ指揮を行っていた歩兵団長は魔法飽和攻撃により戦死。副団長が団長代理として統率していたが、副団長は生真面目な熱血漢であった。国王自身の保身のための長期戦と見た副団長は、作戦会議の最中に作戦書の中に隠していたナイフで国王の頸動脈を断ち切り、政治的生命だけでなく物理的な生命も断ち切った。吹き上げる血煙を背景に、狂ったとしか言いようのない怪しい口調と虚ろの目の輝きを発しながら、文官、武官、民全てを最終決戦に出したのだ。

 副団長の絶望的、あるいは狂信的な命によって、ネーデルワンド王国残り三千の兵団、近隣の住民三万は悉く死に絶えた。本来であれば生き残るはずであった王国継承者も、乱戦の中で死亡している。一説には王族に対する恨みから、魔物の仕業に見せかけて国民に殺害されたとも言われている。伝聞形が多いが、悉く資料が無くなり、人の姿も無いので、確認のしようがないのだ。 

何はともあれ、魔物の軍団襲来により、ネーデルワンド王国は僅か二週間で滅びた。

 当時、世界の情勢、勇敢な船乗りたちによってのみ、伝わっていた。魔物たちは戦略眼があったのであろうか。海運を断ち切るために、海洋性魔物を大量に投入したのだ。最初はネーデルワンド周辺の海域、ポルティアーナ海域、時間こそかかったが、三月も経たぬ内に、世界中の海で魔物の目撃情報が乱立した。

各国は混乱を極めた。対応も各国で全く異なる。だが、海運の寸断でそれぞれの国家は連携して動きようがない。単発的な対応しかできなかったのだ。


 だが、魔物たちにも大きな事件が起きていた。異界より来襲した魔物の軍団であるが、全てがまともな知性を有する者ではない。それは人間とて同じであろうが、一部の考えなしの魔物が、異界とこの世界を結ぶ移動結界の一部を破壊してしまったのだ。

移動結界は異界とこの世を結ぶほぼ唯一の通路。時折、空間の歪みによってつながる場合もあるが、そのような不確定要素に溢れるものは最初から使用しようとは考えない。長年貯めた魔力と、封印したものからの魔力を取り出して構成した複合型多層展開魔法陣。これの修復は容易ではない。いや、こちらからは不可能であった。

とりあえず、魔物軍団を指揮する魔王ベフィモスは結界の使用を封じた。内心の忌々しさを表立って出すわけでもないが、今後の侵略――本人たちの立場から言わせると進出――に大いに支障が出る。追加の兵力が来ないので、手持ちで何とかするしかない。そのため、進軍を一時停止せざるを得なかった。軍団の再編成と根拠地を固めることが優先となってきた。

 そこで、ベフィモスは空の魔物を駆使して、地図を作製した。これから動くのに地図なしで動くのは阿呆のすることだ。考えなしに動くのは勇気でなく無謀。今後の方針を組み立てて行く。人間といって侮るつもりは毛頭無い。まずは守りを優先させ、魔力を消費した者の回復を待つ。

「あの精霊神サフィアが作り上げたもう一つの世界だ。我々の脅威となるものを隠しているに違いない」

 ベフィモスは、精霊神サフィアに勝つ実力など無いことを重々承知している。そして、サフィアが作った武具・防具に対することができないとも知っていた。それでも、策を弄し捕らえることができた。だからこそ、ベフィモスは魔王としてこの世界に総指揮官として来るだけの見識がある。いわば魔物の智者である。

知らなかったのは、サフィアが作った武器・防具はこの世界に無いということ、そして人間が作った武具・防具でも十分にベフィモス軍に対応できるということだろうが、攻め込んで一月もたっていない状況でそんなことがわかったら逆に恐ろしい。


 ベフィモスは調査して、比較的近隣の王国、シチリナへ攻め込んだ。魔物軍団の主力凡そ二十万(全兵力の五分の四)を注ぎ込み、シチリナ侵攻軍の指揮官として副将格の魔竜王アクアフィリスを派遣した。ベフィモスは初手で最大国家を潰すことで、他の中小国家も容易に圧倒できると考え攻め込んだ。だが、それは獲らぬ狸の皮算用であった。ベフィモスのプライドも心も徹底してへし折られることとなった。

シチリナは当時ミルマ神殿と交流という名の宗教戦争を繰り広げていた。そして魔物軍団が来襲したときには、ミルマ神殿の高僧や大魔導師が逗留していたのだ。

 鐘や洞が鳴り響く緊急事態の中、ミルマの高僧、大魔導士は冷静であった。部隊長の傍へ静かに移動し小声で、

「慌てるな、あるだけの弓と矢を設置。魔法で援護する」

 そう言ったのだ。冷静さと面子を潰さないような立ち回りは凄まじく、後日その報告を聞いたシチリナ王は、ミルマとの決別を決意したとまで言われる。

 四人の高僧・魔導師は城壁の四隅へ散った。伝説の魔法大戦ともいわれるシチリナ防衛戦である。

「複合魔法! 縮地光!」

「連携魔法! 炎爆!」

 高僧は全ての兵士に通常の神速の倍の速度で動けるようにしたり、火炎や吹雪による攻撃をほぼ無効化する高位魔法を施し、魔導師は炎玉と爆裂を組み合わせた魔法地雷をシチリナ上空に張り巡らせる。この時代のミルマ神殿は、本来の意味での神々に仕える使途、または超魔力を有した神子が多く揃っていたのだ。シチリナ兵や王国民は士気も高らかに、勇猛果敢に攻め込んでいく。

 ベフィモス軍にとっては予想外のことである。空中から不意をついて攻め込もうとした空の魔物の三割が炎爆で壊滅した。奇襲はほぼ完ぺきなタイミングで発動して、即座の対応は無理だと計算した上でのこの状況。

「ば、ばかな・・・・・・」

 アクアフィリスは焦る。ベフィモス軍の主力を預かりながらいきなり打撃を受けているのだ。そして、アクアフィリスは最初の失敗を犯す。

「そ、空からの攻撃を中止! 地上攻撃に切り替える!」

 その時、空の部隊は侵攻軍の約四割、八万いたがそれを撤収させたのだ。確かに二万四千の被害を受けていたとはいえ、連続して襲い掛かるなり、石や草木をぶつけるなりして炎爆を消して空から攻撃をすれば、まだ勝ち目はあったはずだ。だが、手遅れであった。あまりの威力による躊躇と兵力維持のための撤収を行っている間も、高僧・大魔導師は手を緩めなかった。魔物軍の主力へ向けて合体複合圧縮魔法を放った。

「圧縮魔法、極大灼爆弾!」

 腰が砕けそうな響きであるが、威力は半端ではない。高僧が極大灼熱魔法と極大爆裂魔法の威力を倍増し、それを複合し圧縮したのだ。直線上の光線となって本陣に目がけて飛んでいく。魔物軍団の魔導師が爆撃、灼熱系魔法と見抜き氷裂系魔法で対抗するが、光線に触れる前に全て蒸発させられる。

「馬鹿な! 人間の中に魔物を上回る魔力を持つものがいるのか!」

 それがアクアフィリスの最後の言葉となった。いかに竜といえども生物であり、生体装甲には限界があった。本来であれば魔法など弾き飛ばす竜の鱗を瞬時に蒸発させ、内臓も焼き尽くした上で、全ての魔力が解放された。

元々の極大灼熱魔法と極大爆裂魔法の威力すら、対魔物用魔法としては超一級魔法である。それが合体され、無駄な部分が無いように複合され、なおかつ二重三重に圧縮されている魔法の威力は、一歩間違えると世界を滅ぼす大魔法となり得る。高僧・大魔導士四人が出せる史上空前絶後の魔法が炸裂した。

 アクアフィリスは悲鳴を挙げることすらできなかった。直撃した箇所から消滅・・・・・・半径十キロ四方を完全に消滅させた。高僧・大魔導師曰く、

「最大出力で放ったので、シチリナの城下町も消滅するかと思ったが、あの巨竜流石よ。八割近くの魔力を相殺していた」

とのこと。もし、アクアフィリスの体の分解で魔力が消費されなければ、被害半径は二桁ほど変わっていたに違いない。 

 だが、高僧・大魔導師は迷いが無かった。長期戦になれば四人勝てるはずもない。短期で決着を付けておきたかった。この威力で魔物が恐れて襲来が無くなるという効果や、シチリナに対する条件交渉も有利になるという計算も働いていたに違いない・・・・・・。


 編成後、僅か一日で主力の大半を失った魔王ベフィモスは、怒りすら飛び越え無表情になっていた。今後の侵略計画が大幅な変更を行わなければならない。

「人間を甘く見すぎておったわ! 口惜しいが仕方あるまい」

 ベフィモスは戦略を変えた。時間をかけて人間の弱体化をねらう戦略だ。幸いにも自分の寿命は四百年はあるだろう。残りは三百年ほどある。死ぬまでにこの世界を制圧する。何とも超長期的な視点であるが、伊達に総指揮官をやっていない。海運を断ち切られ、曖昧な情報だけが流れる中、手持ちの兵力を集中運用して、各個撃破を行う。連携さえさせなければ勝てる。自給生活となれば物資が不足し、食糧事情も悪化する。気が遠くなりそうになり思わず、

(主力があれば・・・・・・)

 弱気になりそうだったが、奔走することになる。


 一方、魔王軍の思惑とは別に、シチリナをはじめとした西側海洋国家でも別の思惑が動き始めていた。ベフィモス軍を撃退した魔法国家ミルマに対する戦略である。世界政治の常であるが、必ずしも軍事力に突出した国家が世界世論を支配したわけではない。軍事力はあくまでも威圧のためのものであり、実際の戦になった場合は外交の失敗と位置付けられるのだ。

世界一の海運王国を誇ったシチリナは、かつての海運王国ロンジンを衰退に追いやった戦略に打って出た。現代風にいうところの情報戦、より低劣な言い方をすれば噂による追い落としである。

 どんなに力を誇る国家であろうとも、情報に疎い国家であれば世界から孤立し、最終的には自暴自棄に陥るか、鎖国へと陥る。かつての海運王国ロンジンは前者を選び、第六次ロンジン沖海戦で主力艦隊千二百隻が海の藻屑となった。

今回シチリナが中心となって立案した戦略は、ミルマを鎖国へと追いやる策だ。

 交渉では優位に立った魔法国家ミルマであったが、山岳国家であり、資源も人材も極端に少ない。そのため、暫定的な援助金を打ち切られたのをきっかけにして、多くの人材が国際交流という名目で国外に吸い出され、国家としての成立が危ぶまれた。神殿首脳部、とりわけ穏健派の旗頭であるアンリュースⅧ世は和議を目的として、強硬派をベナルの塔での会談に見せかけて幽閉し餓死させた。その上で、魔法国家を自治区に格下げする旨を通達し、完全に鎖国を行った。

ベフィモス軍侵攻が端を発した一連の騒動は、後に「世界騒乱」と記録されている。

ミルマの近隣国家、インディスやそことの同盟国ポルティーナによる侵略も行われたが、そこは魔法の総本山、得意の地形幻影魔法と、圧倒的な魔法防衛戦、ゲリラ戦などで撃退。そしてインディスへ続く大街道を消滅させた。

 だが、これはミルマ神殿の最後の輝きだった。閉塞環境では人口は停滞する。交流無き世界は文明レベルが停滞する。独自文化の発展を差し引いても世界に置いて行かれるだろう。

また、閉じられて停滞した世界から脱却しようと、若者はミルマを見捨てた。致命的なのは、ミルマ神殿上層部の戦略的な視野が大幅に狭まり、考え方が矮小化、硬直化を起こすことだ。

 これらは、シチリナをはじめとした西側海洋国家にとって都合の良い展開であった。ベフィモス軍を僅かな資金提供で無事に撃退できた上に、ミルマの国家としての存在の消滅を達成できたのだ。シチリナ首脳部としては万々歳であった。後は、ミルマから魔法を使える人材を引き抜けば完璧だったはずなのだが・・・・・・。

「どういうことだ」

 ミルマへ密かに派遣していた使者が、五ヶ月の旅を終え報告のために玉座の間へ参上した。最初は喜色満面の笑みを浮かべていた国王。

しかし、使者が怯えたように小声で言ったのを耳聡く聞くと、その喜色満面はあっという間に怒りの色へと変わった。その表情を見て、使者は逃げ出したかった。許可があればとにかく世界最速の速度で逃げ出す自信があるくらい逃げ出したかった。

だが、職務放棄は自己の生命はおろか一族の命運まで奪われることへつながる。シチリナの当時の専制政治はそれほどだったのだ。だから使者は、自分自身が出来うる限り最高の謙虚さと逆鱗に触れないような丁寧な言葉を持って国王の前に跪き報告した。

「ミルマ穏健派幹部アンリュースⅧ世は、穏健派でなく、最強硬派でした。魔法を使える人材狩りを実施し、ミルマは崩壊状態となっております。既に国外に逃亡したものも多いのですが、高僧・大魔導士は全員死を賜りました」

 アンリュースⅧ世の、狂乱と見るか、冷徹に世界バランスを見て、魔法を使えないもので固めることによる生き残りをかけたか、どちらにしても呆然とする出来事だった。

 シチリナ国王はあまりの出来事に、口を開こうとした瞬間胸を押さえて倒れこむ。


 ……それから百年ほど経った。


 アリアドネ王国屈指の勇者と言われたオルティンガー・フォン・ガルディーノは密かに姿を消した。

 王国は騒然となった。王宮随一の、いや、世界一と言っても過言で勇者の失踪。家族すら知らなかった。そう、あの日が来るまでは……。

え~と……これはあるゲームを下敷きにした創作です。あくまでも創作です、誤字があったとしても気にしないでください。

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