第81話 守護召喚
街に帰る途中シュノアの魔力が尽きた為に休憩することになった時、ガルはジンに疑問をぶつけた。
「そんでよぉ…気になってたんだがお前…いきなり現れたよな?ありゃどうやったんだ?」
「ゲートって魔法があってそれの応用さ。短距離転移をひたすら繰り返して魔力反応があった場所を目指したら君達を見つけた。本当に良かったよ…レン君が撃とうとしていたコレは子供が扱える物じゃないからね」
そう言って取り出したリンのデザートイーグルを眺めるジン。
「だけどこれは…撃てないな。セーフティーが外れてない上にマガジンも…いや、これは薬室に1発込められてる……もしかして早坂さんのギフトはこの銃なのか…?」
銃身はロングバレルで延長され、グリップはステッピング加工…トリガーも軽量トリガーにカスタムされているな。それに加えてトリガーガードが普通のデザートイーグルより分厚く加工されているのは何か意味があるのか…?
装填されていた弾丸を排夾してみるとよくゲームとかで見る.50AEアクションエクスプレス弾だな。
良く見たら細かな傷もあるし、トリガーガードは特に傷が多いな…銃身には英語で家族からのメッセージが刻まれている……というかこれは本当にギフトなのか…?
「扱いに迷いがねぇ…お前さんはそれがどういう武器か知ってんだな。やっぱお前も転移者か?」
「昔やっていたゲームでよく使っていたからさ。転移…というより俺の場合は召喚だったけど。それももう何年も前の話さ」
「そうかい…ま、人間色々だな。それより嬢ちゃんとはどんな関係なんだよ?もしかして…コレか?」
ガルが小指を立てたのをみて慌てて否定する。
「いやいや!こ、恋人じゃない!むしろ振られたんだ!」
「まじかよ。嬢ちゃんに告白したんか?」
「高校時代の話だぞ?告白はしたけど…」
「もうそろそろ行こう、魔力もある程度回復した。早めに街に戻って報告した方がいいだろ」
「なぁにカリカリしてんだよ?…ははぁ…さてはお前…ライバルに嫉妬か?」
「煩い!黙れ。早く行くぞ!」
ムスッとしたシュノアをからかいながらついていくガル…その二人を見て苦笑いを浮かべながらリンをまた抱き上げて歩き始める。
しかしこんなに間近で早坂さんを見ることになるなんてな…
お姫様抱っことはいえ色々と当たるしチラチラと見えるその…谷間を見てしまうのはなんとも言えなくなるな。
リンの服はそもそも病室からそのまま出てきた状態だったからか上着の類いは着ておらず、普段着ているタンクトップだった上に気絶して力が抜けているので色々と目の毒だった。
しかしもう二度と会えないと思ってたんだけどな…まさか前に助けた少女…カオリがこんな運命を引き寄せてくれるとは思わないだろ?
ジンがここに来た経緯は数刻前に遡る…
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ジンはいつもの様にギルドで依頼を探して掲示板の前で依頼書を眺めていた。
旅の資金を貯める為に滞在してるが…この街では稼げそうな依頼があまりないよなぁ。
「そんなに難しい顔をしてどうなさいましたか?」
後ろからの声に振り返るとこのギルドのギルドマスター…エイギルだった。
「ああ、依頼を探してたんだけど特に良さそうな依頼が無くてどうしようかと考えてたんですよ」
「ジンさんはAランクですが…この街の依頼だと確かに見合った依頼は無いでしょうな。噂では遥か南の方がキナ臭いと聞きました…なんでも街1つが壊滅したとか」
南…カルドナがあるほうか。俺に何の反応も察知出来ないならあの子は無事だな。
あの子…カオリは俺と同じ世界から来た転移者だった。こちらの世界に来たばかりだったのか何も分からずに森でゴブリンに襲われていたのを助けた。
それから暫くカルドナの街でカオリに生活に必要な知識を教えながら過ごした…今考えたらあの頃は一番安らいでいたのかもな。
だけど俺にはやるべき事があったからカルドナにある学校への編入手続きをし、カオリに当面の生活費と俺のほぼ唯一の私物…初恋の人から貰ったミサンガに術式を追加して渡したんだ。
その術式はカオリに危険が迫った時に発動するかカオリが強く願った時に発動する…俺を強制的に転移させる術式"守護召喚"なんだが…特に反応が無い所をみるとカオリは巻き込まれてないと思う。
"カオリがもし…助けて欲しいと思ったら…迷わずこのミサンガに強く念じてくれ。必ず俺が助けてやるからな"
俺が旅に出ると言ってミサンガを渡した時、カオリはボロ泣きしてたからなぁ。今は大丈夫なんだろうか…
「…ジンさん?」
「おっと、すいませんね。南に知り合いがいるから心配で」
「そうですな…しかしこの街"ヴェルバル"からだと戻るには半年近く掛かりますね」
ここヴェルバルがあるのはアーレスの中でも北部大陸の更に北なので海を渡って南大陸に戻るならそれくらいは掛かるだろうな。
「いや、知り合いに危険が迫ったら俺に分かるようになってるからまぁ大丈夫だと思いますよ。もう暫くはこっちで調べたい事もあるので」
この大陸に来た目的…俺達を召喚する為の儀式を行っている馬鹿な組織を壊滅させる為に来たんだが…金が無いのはどうしようもないな。
「そういえばギルドの情報網に上がってきた情報に気になる事があったんですよ」
「…?」
「それがですね…大陸西部海域にある孤島に存在する"送り人の遺産"を奪おうと海賊連合が準備を始めているらしいんです」
送り人の遺産?どこかで聞いた事があるな。
「我々ギルドでも送り人の遺産がどういったものかは分かっていないんです。現地の民が断固として調査を受け入れないからなんですが…」
「調査を受け入れない?それなら別に放っておいて良いんじゃないのか?」
調査出来ないなら別に狙われようがなんだろうがギルドが介入する必要もない。
「それが…ジンさんはカルネの冒険記をご存知で?」
カルネの冒険記…そうか!確かカルネの冒険記に鉄の船とかいう話があったな。
「…まさか本当にあるんですか?」
あんなのはフィクションだと思っていたが…良く考えてみればここは異世界だから何があっても不思議じゃない。
「実際にあります、交渉に向かったギルド員が言うには巨大な鉄の船が島の中央に朽ちもせず鎮座していたと報告がありましたから」
送り人の遺産か…確か読んだ内容的に日本人だったから鉄の船の正体は間違いなく軍艦だろうなぁ…。
「鉄の船は海賊に奪われると厄介ですが…現地の民によれば動かないらしいので。それに彼ら自体が戦闘に長けた者が多く、我々ギルドが動く必要は無さそうだ、というのがギルドの方針として決まったんです」
「ではなぜ気になる、と?」
「海賊が凄腕の傭兵団を雇ったという情報が入っていてですね…その傭兵団は"フラムベルク"数人しかメンバーが居ないらしく大規模な活動はしていないようですが…メンバー全員がSランク相当の実力を持った武闘派の団です。なのですが…彼らは今まで悪事に加担するような事はしなかったので本当に彼ら"フラムベルク"が海賊に雇われたのか…」
なるほど。雇われた傭兵団が本物かどうかが定かでないし、本物だとしたら何故?という風に感じるくらいにはその傭兵団は悪事に加担するような連中ではない、という訳か。
だが俺にはどうしようもない。緊急依頼ならばともかくわざわざ辺鄙な孤島くんだりまで出向いてやる義理もない。……まぁ少し鉄の船には興味があるけれどな。
「興味深い話だった。…今日は依頼も無いみたいだし酒場で暇を潰すことにするよ」
そう言ってギルドを出た俺だったが…それは突然だった。
噂をすればなんとやら…カオリに渡したミサンガから発せられたカオリの強い念。
「……これはまたなんとタイムリーな」
自分の周囲に魔方陣が展開し、座標が固定される。
「カルドナか。まさかカルドナも魔物に…?」
カオリが簡単に俺を頼るとも思えない。ならこの召喚はカオリの強い意思で行われているということか。
この世界で拾った同郷の子供…妹みたいな存在のカオリ…そんなカオリが助けてくれって願ったのなら…
俺はどこに居ようと駆けつけるさ…そう約束したのだから。
「……待ってろ。必ず助けてやるからな」




