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私が異世界に流されて…  作者: カルバリン
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第71話 激突


バレットから撃ち出された弾丸は轟音と同時にシレーナ姉さんの障壁へと突き刺さる。


「え…!?」


シレーナ姉さんは一瞬の出来事に驚いたが…その後更に目を見開くこととなった。


連続で何かが割れるような音を響かせた後、地面へと止められた弾丸が落ちたと同時に障壁も光を散らしながら消滅する


「…まさか4枚も削りとられるとは思いませんでした。中々に貴重な体験をすることが出来て何よりですが…これはやはり再現するのは難しそうですね」


「これをこちらの技術で再現するのは無理よ。まぁ近いモノは作れるかもしれないけど……」


前に聞いた話によれば大砲はあるみたいだったから銃もあるかもしれないが…現代の銃を再現するには加工技術などが足りていない。


「無い物ねだりはしても意味が無いですからね、それに…そんなモノが大量に出回る様な事態になれば正直言って恐ろしい。今回は予め用意した上で4枚も障壁を破られてしまいました…咄嗟にあんな速度で攻撃されては障壁も間に合わず防ぐのは不可能ですからね」


この世界であれば要人の暗殺なんてやり放題だしね。だけど…今までにも銃を持ちこんだ人間がいない訳が無いと思うのよねぇ…まぁ私の場合は弾切れの心配が無いからあれだけど。


考えている内にシレーナ姉さんが槍を構えたので私もバレットを収納して鍛練用の長剣を鞘から抜き払う。


「リン、手加減なしでお願いしますよ?ここでは死にはしませんけど殺すつもりで来てください」


じゃないと鍛練にすらなりませんからね…と言うシレーナの表情は先程までとは比べられない程に無表情だ。


今回は正直勝てないかも…今まで戦った誰よりもシレーナ姉さんが強い。


「最初から手加減なんてする気は無いわよ。息子や自分の生徒も見ている事だしね」


抜き払った剣を振って感覚を確かめながら返事を返す


どちらも準備が整ったと同時…その場から二人の姿が消えた。


一瞬でお互い距離を詰め、シレーナが槍を横凪ぎに振り抜き…リンがそれを剣で受け止めた。


ギィンと金属音を響かせて激突するリンとシレーナ。


「やはり速いですね、私についてこれる人なんて何十年振りでしょうか…」


くっ!力で負けてるのはわかってはいたけれど…これは辛いわね

力で負けた上にスピードも負けては話にならない。


「そんな余裕で言われても…ね!!」


槍を受けていた剣の角度をずらして槍の穂先を体からずらし、そのまま刃を槍の柄にそって滑らせる


シレーナは受け流されたとみた瞬間に柄を小さく円を描く様に回して長剣の軌道を僅かに反らせてから身体を横に動かして回避すると槍の柄を短く持って間合いを詰めたリンの攻撃に対応する。


何度も剣と槍が激突する度に火花を舞い散らせながら切り結ぶリンとシレーナ…

シレーナはリンの剣閃に巧みに合わせつつ槍を回転させて必殺の間合いを取らせないようにステップを踏む。


「リン、あなたまだまだ本気じゃないでしょう?せっかく本気でやれるのだから遠慮は駄目ね…!」


回転させていた槍を脇に引き戻したシレーナにリンは警戒して防御の体勢を取ったが…繰り出された攻撃は予測を超えた一撃だった。


構えたと思った次の瞬間には目の前に槍の穂先が迫っていた事に驚いたリンは一瞬だけ動きが遅れたが…身体は反射的に回避行動を取っていたのか僅かに掠めただけだ…首の直ぐ横を通り過ぎる槍の感触に寒気を感じながらもこれは不味いと、いま全力で反撃をしなければ確実に次の瞬間に致命的な一撃を貰う。とリンの本能が警告していた


「…っ!?十分本気でやってるんだけど!」


剣を下から掬い上げる様に走らせたリンの攻撃はシレーナの胴に直撃して手に骨が砕ける感触が伝わった…と同時にリンの首にはシレーナの腕が伸びていた。


「マズっ…!?」


骨を砕かれたとは思えない動きでリンの首を掴むシレーナに驚愕の表情を浮かべたリン


「やっぱり…愉しいなぁ!あの頃はこんな闘いがありふれていたのに」


骨が砕けてるにも関わらず嬉々として首を掴まれたリンはシレーナが浮かべた表情に一瞬だけ自分の母親が本気を出した時に見た表情が重なった。


あ、これはヤバい。


地面から自分の足が離れるのを感じた次の瞬間には物凄い勢いで鍛練場の壁が迫るのを感じた。

逃げるのを諦めたリンは全身に力を入れて衝撃に備えたのだった…




リンが壁に叩きつけられた轟音と土煙で辺りが騒然となる中……学院長室では


「…やれやれ。あれだけ大人しく闘いなされといっておいたというに…昔の血が騒いだか?ハリケーンめ」


鍛練場から響いてきた振動と轟音に顔をしかめつつため息を吐くアルバート


「アルバート様、あの方は領主様ですよね?一体なにを…?」


普段は掛けていない眼鏡を掛けたシーラが書類を整理しながらアルバートに問いかける


「ふむ、シーラはまだ若いから知らんじゃろうな。シレーナ様はこの街の領主になる以前は魔王配下の軍勢を尽く叩き潰し、またある時はその力を恐れて仲間の家族を人質に取り意のままに動かそうとした国の軍を壊滅させたりと数々の逸話が残っているんじゃよ…主も聞いたことくらいはあるはずじゃ、傭兵団…『餓狼』最凶のハリケーン…それがシレーナ様じゃて」


ワシも若い頃は憧れておったのじゃよ、というアルバートの言葉もシーラの耳には入っておらず…


「今鍛練場には中等部もいたはずですよね……あぁ!!」


シーラは何かを思い出して立ち上がると猛烈な勢いで学院長室を出ていってしまった。


「…そうじゃった。確か中等部にはシーラの……だがまぁ大丈夫じゃろ」


アルバートは机にある書類を眺めながら温くなったお茶を飲むのだった…




少し時間は戻ってリンとシレーナが始まる前の確認をしていた頃……


「いやー、まさかあんなに待たされるとは思わなかったな…だけどアディ、お前のお蔭で良いモノが手に入ってよかったぜ」


「うん、この間先生と行ったんだけどさ…凄く質がいい武器を置いてるのを見て思い出したのよ。ガイが短剣を探してたなぁって」


「……というかなぜ僕まで連れていかれたんだ」


「だって、カオリは真面目だから一緒に来てくれないし…ガイと二人で行ったら恋人なんじゃないかって馬鹿な勘違いされそうじゃない?そんなの嫌だもの」


「つーかなんで俺がさりげなくディスられてんだよ!」


鍛練場の入り口に姿を現したのはリンが居ないならとサボって街へと繰り出していたガイ、オルト、アディの3人だった。


「だがそうは言ってもよ、お前だってしっかり新しい剣を買ってたじゃねーか」


ガイが言った通り、オルトの腰には元から提げていた剣とは別にもう1振り剣が吊り下げられていた。


「当たり前だろう?目の前に素晴らしい剣があれば買うのが当然だからな」


「…満足出来たようでなにより……ってあれ?」


二人の会話を聞きながら鍛練場の中を見たアディはそこに居るハズがない人物を見つけて驚いた


「あー、ヤバいかも。私達がサボってたのバレてるかな」


「あぁ、バレているぞ」


不意に背後から掛けられた声に驚いて振り返った3人


『残念だったなぁ、お前らが居ない間にリンの奴が来ちまったんだ。今から模擬戦をするってな』


「後からお前達には話をするって言ってたから諦めろ」


シュノアとガルから言われてガックリと肩を落とす3人…


「しゃあねぇか、サボりはサボりだからなぁ…つーか模擬戦ってあの人が相手なのかよ」


シレーナを見て、見た目はとても強そうに見えない女性を見てガイが首を傾げていると


『見た目に騙されてる内はまだまだだな。…ありゃお前らなら瞬殺されるレベルだなぁ。…だけどこの気配…俺はどこかで………』


そう言ったっきり黙ってしまったガルの代わりにシュノアが口を開こうとしたが


「あ、帰ってきてたの?」


ちょうどリン達が居る場所からカレン達が戻ってきた。


「おう、すげえ良い店だったぜ?カレンも今度行ってみろよ、その剣よりすげぇのが幾つか飾ってあったからな」


「へぇ…なら今日いってみようかな?カオリも行くよね?」


「えっと、バドさんの店?私もちょうど用事があるから行くよ」


皆でワイワイ喋っていると、一瞬だけ寒気が走った


『そうか…思い出したぜぇ!ありゃ間違いねぇ…『ハリケーン』の嬢ちゃんじゃねぇか!』


ガルの言葉に


「ハリケーン?って誰?」


カレンが首を傾げてそう問うと


『むかーしにあった傭兵団で『餓狼』ってぇ傭兵団があったんだがよ…人数こそ5人だったがありゃ間違いなく当時最強の一角だと言って間違いない。俺も美人ばっかだって聞いたからちょっかいかけたがよぉ…まぁ半殺しにされたわな。…そうだ、そうだったな、奴の身内だったよな…名前は確か…シレーナ=アストラルだ!』


その名前を聞いた瞬間、全員が驚く


「「「「「領主様じゃん」」」」」


驚く彼らを他所に闘いは始まったのだった。


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