第66話 目覚めてみたら…
「……や……く……い!」「ぶっ……し…や…!」
何だか騒がしいなぁ…
リンは覚醒しつつある意識の中であと少しゆっくりと眠りたいと思いつつ瞼をゆっくりと開く。
しかし、瞼を開いた次の瞬間…
ガンッ!
「痛ッ!?」
目を開くと同時に飛来したナニカが顔に激突し、顔を押さえて悶絶するリン。
「あぁ!?先生大丈夫ですか?!」
駆け寄ってきたカオリを手で制し問題ないと告げたあと状況を把握する為に周囲を見渡してみる。
周りにはアディ、カオリ、ベアトリクス、ガストロノフ、シーラが居たが何故かガスとベアトが掴み合った状態で此方を伺っているし、シーラは二人を止めようとしたのかベアトを羽交い締めにしている。
………なにこの状況は。
そして自分の身体に視線を落とすと、ベッドの上に居るのだが…何故か下はちゃんとスカートを履いているが上は下着しか着ていない。
「………キャッ。とかって言ったほうがいいのかしら??まぁ言わないけど…って言うかあんた達はなにやってんのよ…」
ふとベッドの上を見ると先程飛来した物が落ちていた
「……靴?」
なるほど。さっき私の顔面に直撃したのはこの靴か…へぇ、靴がね…。
ちらりと組み合っている3人を見るとベアトの靴が片方脱げているのが見えた。
「あ…いや、それはね…リン落ち着いて!お願いだから話を…」
ベアトが何か言ってるみたいだけれど…関係ない。
手元にデザートイーグルを取り出すと3人の足元に向けて構える。
「それはシャレにならないって!やめ…」
「馬鹿共が……踊れ」
そしてデザートイーグルの銃声と3人…主にガスとベアトの悲鳴が木霊したのだった…。
全弾撃ち尽くし、ガキンとスライドが音を上げた時点でまぁスッキリした。
「で?なんであんたらはこんな場所で暴れてたのよ…」
目の前にはバツが悪そうに縮こまる3人がいる…当然の如く正座である。
「俺はリンが決闘すると聞いて……って服を着てくれないか?」
あ…そういえば下着しか着てなかったわね。
元々着ていた服は心臓…左胸の所で穴が開いていたからアイテムボックスに収納していた軍服の上着を取り出して羽織る
「私はガスがすっとんで行ったから追いかけてきただけ。リンから元々こうなるだろうって聞かされてたからね…この馬鹿はリンの話を聞いてなかったからこれがリンの計画だって分かってなかったのよね。それでこの部屋に着いてリンが目を覚まさないって聞いた途端、この女に掴みかかってここで暴れだしたから私が止めようとしたんだけど…」
あぁ、そういえば説明してるときも私の胸を凝視してたわね…男ってなんで気付かれないと思うのかしら?普通に視線が下に向けば気付くし…まぁ別に減る訳じゃないから良いけれど。
ようするにベアトはミイラ取りがミイラになったって訳ね…それでそれを止めるために彼女…シーラがベアトを羽交い締めにしてたわけか。
「なるほどね、それで私の顔面に靴が飛んで来るとは予想出来なかったけれど…まぁでも心配してくれたのは嬉しいわね、ありがとう」
そう言って今度は二人より更に縮こまっているシーラに視線を向ける
「それで?あなたは満足したのかしら?私の素性が分からないのは異世界から来たからよ。そしてこの前の件は私の生徒が誘拐されたから取り返しに行った…それだけよ」
シーラは黙って私が語る話を聞いていたが
「…本当に貴女には申し訳の無いことをしてしまいました…。あらぬ疑いをかけた挙げ句にその様な重症を負っている貴女に対して剣を振るってしまいました…この罰は如何様にでも…!」
「別に良いわ。私も煽るような行動をしたし、あなたが想定よりも強くて途中は割りと本気で目的を忘れてたから」
気にしないで?っと言ってこの件を終わらせようとしたのだが…
「ってそういえばリン!あんたって人は…私はあれだけ無茶はしたら駄目だって言ったじゃない!あんたの怪我は普通なら死んでるレベルなんだって言ったでしょーが!」
思い出したようにベアトが怒り出す。
「これくらいなら大丈夫って言ったでしょ?動けるんだから問題ないわよ」
「動けるから問題ないって…そもそもなんで普通に生活出来てるのかが不思議というか…リンって本当に人間なの?」
なにを当たり前の事を…と思ったが確かに最近自分でもよく分からなくなるときはある。元の世界なら確実に死んでるか瀕死の重症の筈が何故かそこまで痛みは感じないし普通に動けるのだ。
「…多分ね」
どのみち一回はキチンと治療を受けた方がいいかもとは思ってたから今度マリーが働いている治療院に行ってみよう。
医務室?から出た後、ずっと申し訳無さげにしていたシーラにはもう敵対しなければ問題ないからと告げて家に帰る。
一応シーラは最後に私を攻撃した黒いオーラの正体を明かそうとしたけれどあまり人の秘密を握るのは好きじゃないからと断っておいた。
そもそも私が倒れたのもシーラがあれを使ったからではなく、自身の限界を見誤った私の落ち度だと説明した。
納得はしていなかったがシーラは最後にまた丁寧に謝罪をしてからギルドの奥へと戻って行った。
ベアトとガスはまた依頼を受けると言って受付へと行き、カオリとアディは寮へ帰りますと言って二人で歩いて行ったのを見送った。
騒がしい一連の騒動を終えて私が一人で家までの道程を歩いていると遠くにレンが同年代の子供二人と歩いるのが遠くに見える
「あの子達が友達になったっていうスタンとシアかしらね?」
なにやら楽しそうに露店を覗いたりしているのを見て子供同士で遊んでいるのを邪魔するのはやめておこうと思って別の道へと進路を変更する。
この街…カルドナは周囲を堅牢な防壁で覆われていて正門と裏門の2つがある。
中にはいるとメインストリートが3つあり、それぞれが正門から見て右端が工房通り、左端が商店通り、そして中央にあるのが宿場通りとなっている。
今まで私が歩いていた商店通りには露店や雑貨屋が並び、正門近くには様々な食材が集まる市場がある。
工房通りは武具の店や魔物の解体屋、解体屋で解体した皮などを加工する店が並び、奥の方には服の生地を販売する等の服飾関連の店が並ぶ。
そして今私が歩いている中央に位置する宿場通りは文字通りに宿が何件もあり、馬や馬車を貸し出したりする店や定期馬車の待合所なんかが正門近くにあって奥の方には領主館やギルドに街役場などの街の重要施設が集まっている。
確認を含めて辺りをなんとなく見回していると通りの向こうから1台の馬車が走ってくるのが見えた…なぜか気になって視線を外せずにいるとその馬車が目の前で停車した。
御者席から執事の男性が降りてくるとスッと馬車の扉の前まで行って綺麗な動作で扉を開く
「アルフォンス、ありがとう…少しだけ待っててくださいね?」
そう言いながら降りてきたのは私より少し年上位の女性だった。
彼女は真っ直ぐ私の方へと歩いてくると私をジッと見つめてきた…
「…私になにか用ですか?」
少しだけ警戒するように問いかけると女性は慌てたように頭を下げた
「…!申し訳ありません、あなたからとても…とても懐かしい魔力を感じたものですから…申し遅れました、私の名前はシレーナ、シレーナ=アストラル…一応この街の領主をやっています。もしよろしければ私と少しだけお話をしませんか?リン=ハヤサカさん」
まさか領主様と遭遇するとはねぇ……しかも名前まで知られてるとは…用事があったから丁度良いと言えば丁度いいのだけど。
それにしても懐かしい魔力ってなんだろうか?それに私も何故かこの人から目が離せないでいたので
「…分かりました、息子が帰ってくるのであまり時間はないですけれど…それでもよければ」




