表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が異世界に流されて…  作者: カルバリン
57/130

第54話 骸骨の騎士カリム


ベアトリクスの疑問は尤もね。


「なんと説明したらいいのか…」


そこで今まで黙って座っていたカリムが口を開く


「…うむ、我も自己紹介をしていなかったので改めて自己紹介をさせてもらおう。

我はアルフヘイムのカリム…遊撃団『双月の牙』にて副団長をやっていた…盟友の援軍として参戦した折、魔大公との戦いで戦死したということしか分からぬが…」


「…!!『双月の牙』副団長だと?まさかあなたは欠け月のカリムなのですか?!」


カリムの言葉にレリックが驚きの声を上げる


「おお、我の事を知っていたか。もしや貴殿も同業者か?」


「あなたを知らない訳が無い!我々傭兵にとっては貴方とその盟友…アカツキの翼初代団長にして『傭兵王』ジャックは伝説と言って良いですから」


「そうね、欠け月とその兄…月光のカシムは私でも聞いた事があるくらいだしさ」


ベアトリクスがそう言うとガストロノフもそれに頷く


「ああ、あの時代の最強の剣士は誰かって話題になると必ず出る名前だな。あのアルフレッドも憧れていたと言っていた」


へぇ、カリムって有名なのね。


「我が盟友のジャックは確かに有名ではあったが…肝心な事を聞いておらんかった、あの戦はどうなったのだ??カシム兄さんやジャックは生きておるのか?」


カリムの言葉にレリックは…


「俺がアカツキの翼に入ってから教えて貰ったことでよければ話はしますが…何十年も前の話を団長から聞いただけですからあまり詳しいことは…」


「…何十年だと?今が何年なのか教えてくれまいか?」


「今はアーレス歴1792年です。ダノン平野攻防戦から50年以上が経っています」


カリムの骸骨の顔は表情が分からない。だが雰囲気を見るに驚いているようだった


「そう…か、もうそんなに時が経っていたか…。この骨の体を見て少なくとも1、2年は経っているだろうと見積もっていたが…甘かったらしい」


自信の手のひらを眺めながらそう呟くカリム


「それで先ほどの話なんですが…ダノン平野攻防戦に参戦した傭兵団の内、アカツキの翼は団長が魔大公と相討ちで行方不明になり撤退、双月の牙は団長並びに副団長、構成団員の大半が戦死の為解散の後残った団員はアカツキの翼と合流したと聞いています」


「…カシム兄さんもジャックも死んだのか。だが魔大公は…カストールは倒したのだな?」


「そう聞いていますし、それ以降魔大公カストールは今まで姿を見せる事は無かったそうですから」


「有難う。奴が死んだという事実があれば死んだジャックやカシム兄さん、団員達も浮かばれよう…」


胸の前で拳を握り祈りを捧げるカリムを見ていると私も胸が締め付けられる様な感情が込み上げてくる。


私にも同じような経験があるからかな…。


「おっと、すまぬな。湿っぽい空気にしてしまったようだ…まぁあやつらの分まで我がこの世界を見ていようと思うがな…先ずは目の前の恩人の助けにならねば」


するとカリムは立ち上がり腰に提げていた錆びだらけのロングソードを鞘から抜き払うと私へと向き直る


「こんなナマクラで申し訳無く思うが許してくれ。我が愛剣でないのが悔やまれるが…」


そして両手で捧げ持つと左手を離し、自身の顔の前で剣の腹を見せるように構えた。


いわゆる騎士の礼だろう


「我を闇より解き放って頂いた恩人たる貴女に捧ぐ!我が剣は貴女とその周囲を守護する為に在ることを宣言する!我が名はカリム、アルフヘイム所属双月の牙副団長『欠け月』のカリム」


堂々たるその姿は生前の彼の姿を知らない私たちでもその勇姿が浮かぶかの様だった。

そうして跪いたカリムに私は…


「よろしく。まぁ私がどうかしたからじゃないかもだからあまり気にしないでもらえると助かるんだけどね」


「ははは、貴女は面白いな!まぁ我はどのみち貴女に協力すると決めたのでな。…しかしこのみすぼらしい装備はなんとかせねばならぬな…鎧は捨て置くとしても剣はな…」


「それだったらなんとかなるかもよ??」


ベアトリクスの言葉にカリムが振り向く


「なんとかなるとは?」


「簡単な事よ。この街の領主様が貴方の愛剣の片割れ…『欠け月の大曲刀』を保管してた筈だから」


「それは本当か!…しかし何故こちらの領主が?」


カリムの疑問に答えたのはレリックだった


「…!そうか、この街の領主は確か初代団長の孫…シレーナ=アストラルだったな」


「なんと、シレーナ嬢が領主とは…。そう言えばジャックはどこぞの街の領主をやっていたと言っていたな…まさかこのような巡り合わせがあるとは」


「あ、なら丁度いいかもね。この街に来た時にワイバーンを倒したんだけど、そのお礼をしたいとかで呼ばれてたから。今まで忙しくて忘れてたけど…多分会ってくれると思うわよ?」


それから少し話をして、今夜は遅いからと皆を部屋に案内するとソファで寝かせていたカオリを抱えて自分の部屋に戻ってきた。ベットにはレンが寝ていたが少しずらして隣にカオリを寝かせるといつも整備などで使っている机の椅子に腰を下ろす。


そして懐から煙草を取り出して火を点け一息吸う


「…ふぅ。なんかこの世界に来てから問題ばかりね…。まぁとりあえずはなんとかなってるからいいけど…」


ぼんやりと考えているとまたズキッっと頭に痛みが走る


最近やたら頭痛がするけどなんなのかしら?偏頭痛なんて持ってなかったはずだけど…


しかし流石に疲れたわ…。


吸っていた煙草を揉み消し、デザートイーグルをホルスターごと外して机に置くとベットまで歩く


カオリの隣に入ろうとしてふと…


「朝起きたら目の前に知らない男の子が寝てたら驚くかもしれないわね…」


幸いな事にベットは充分な広さがあるからレンとカオリを少しずつ動かして真ん中に入るとレンが腕にしがみついてくる


いつもの事だから起きている訳でもないと分かってるから特に気にする事なく目を閉じる。


するとすぐに眠気が襲ってきたのだった……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ