第49話 事の推移(2)
ガストロノフはベアトリクスが少年を助けに入っている内にもう一人の男を追跡していた
ふむ…、どうやら街から出て森へと向かうようだな。
ベアトリクスと戦闘している人物と合流する為の場所を突き止めるまでは見つからんようにするか…
前を歩く男と一定の距離を保ちながら歩く
……はぁ、今日はリンの家にいく予定だったんだがなぁ…
「はぁ…」
そうしてしばらく追跡していると…
『ラルフ、そっちはどう?こっちは逃げられちゃったんだけど…』
頭の中に直接響くベアトリクスの声に
『そうか、こちらは今追跡してる所だが…そろそろ事情を説明してくれ』
これは魔法の1つで念話…特定の人物にだけ聴こえる様に出来るのが特徴であり、上級の冒険者パーティならば必ず運用していると言える魔法である
『うん、それがさ…ソイツが荷物抱えてるでしょ?その中身はさっき襲われてた子のクラスメイトらしいのよ』
『なに?すると奴等は人拐いか…』
ガストロノフの表情は険しくなり、スッと自身の愛剣に手が伸びる
『うーん、それがまたなんともね…依頼とか言っていたから傭兵じゃないかと思うんだけど、人拐いをするようなレベルの強さではないというか…』
『お前が相手で逃げられる様な奴か…まぁいい。一先ずは様子を見るさ、今すぐ行って人質にされては敵わんからな』
『そうね…あ、後ねーこれが一番問題なんだけどさ…』
『なんだ?』
『拐われた子ね、リンの生徒なんだって』
『…なんだと?』
話を聞いてみれば襲われていた少年はリンが受け持っているクラスの生徒らしく、拐われた子も同様らしい…
『なるほどな、これは拐われた子にケガをさせるとなにが起きるかわからんな…っと噂をすればなんとやらだ…』
ガストロノフの視線の先には……
「ガス?こんなところでなにしてるのよ?」
こちらに気付いて近寄ってくるリン…
皆さんお気付きだろうか?なんと俺の度重なる努力の結果、リンから親しみを込めて『ガス』と呼んで貰っているのだ
「リン、少し話があるんだが…」
浮かれて踊り出しそうな気持ちを抑えて冷静に話しかける
話そうとしたところで少年とベアトリクスが合流してきた
「…なるほどね、シュノア達がカオリを探していたらたまたまカオリを連れ去る現場を目撃した…それで取り返そうとして挑んだけれど苦戦してた時に二人が通りかかって助けてもらったって訳ね」
事情を聞きながらも前を進む男から視線は外さない。
「はい、まさかSSランクのお二人に助けて貰えるとは思ってませんでしたが…」
シュノアは若干緊張しているのか普段の口調とは違って敬語である
「二人に頼みがあるんだけど…レンとシュノアを見ててくれないかしら?レンはもう少ししたら頼んでたお使いから帰ってくるはずだから」
「それはいいけど…もう一人は納得してないみたいよ?」
ベアトリクスが指し示した方を見ると
「俺も連れていってください!!お願いします…!」
「駄目よ。あなたも二人と一緒に待ってなさい」
リンは有無を言わさぬ口調でそう告げる
「でも…!」
それでも諦める気配が無いと悟ったリンは
トンッ
シュノアの首に手刀を叩き込んで意識を刈り取る
倒れるシュノアをガストロノフが支え
「いいのか?」
「えぇ…なにがあるか分からないからね」
「まぁ後の事は任せてくれ、そっちも気を付けてな」
そのままリンはガストロノフ達と別れて男の後を付けていった……




