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私が異世界に流されて…  作者: カルバリン
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閑話 ある騎士の回想

            閑話

         ある騎士の回想


その日、俺はいつものように街の周辺を巡回していた。

最近は盗賊による商人の馬車が略奪される被害が多発していたので巡回の頻度も多くなり、範囲も拡大するように上から指示が降りていた。


「なぁ、クライス。俺らって最近働きすぎじゃねぇ?普通は四人で一つの班だろ?それなのに俺達だけ二人だぜ…いくら人員が足りないからってよぅ…たまんねーよな!最近俺達の休みが少ないって嫁からチクチク嫌みを言われるんだがお前はどうだ?奥さんから文句言われたりするんだろ??」


馬を歩かせていると隣にいた騎士がフェイスガードを上げて話しかけてくる。この目の前で愚痴をこぼしている俺と同期であり昔からの親友でもある男、ボルドはまぁ腐れ縁というのかどこに配属されても基本的には俺達は二人組で配属される

「いや、俺はとくに何も言われはしないな。妻も仕事だし、俺も妻が仕事から帰る頃には家に着くからな、大体お前が毎回仕事終わってから飲みに行って帰るのが遅いから奥さんが怒るんだろ」


そう、ボルドは毎日仕事終わりに酒場で酒を飲んで帰るからそうなるのであって、哨戒自体は夕刻までには終わるから早く帰れば良いだけの話だ…まぁボルドとは毎日こんなやり取りをしてる気がするが。


「いやいや、休みが少ない上に酒も飲めねぇ毎日なんて勘弁してくれよ」


「あぁ、早く帰る為にもなにも異常がなければいいな」


ここ何日かは俺達の班は盗賊にも魔獣やモンスターにも遭遇はしていないからな。それにもう少しで巡回も終わるだろう

「まぁでも確かに最近は嫁さんと一緒に過ごす時間が少ないのは自覚してるからな。今日くらい早く帰って一緒に過ごすか」


ボルドは肩をすくめているがなんだかんだ彼も家族は大切にしているみたいだからいいんだろう。


「さて、もうそろそろ帰るか」「今日も異常なしか」


そうして俺達はいつものように周辺を警戒しつつ街までの道のりを戻り始めた。





巡回も終わりに近づいて少し経ったころにソレは現れた。


大空を凄まじい速度でこちらに向かって飛んでくるソレは……


「クライス!ワイバーンだ‼ちくしょう、なんで今日に限って…このままじゃ街にまで被害が出る!ここで迎撃するしかねぇぞ!」


ボルドは馬から飛び降りると剣を引き抜き、すぐに迎撃体勢を取る。


「ボルド、俺が奴の初撃を止めるからその間に奴に一撃入れてくれ!俺よりもお前の攻撃の方が奴には効くだろうからな」


俺の剣は一般的な騎士が配給される騎士剣だ、少し幅広のロングソードなのだが、ボルドは元は冒険者だったからその時から愛用しているツーハンデットソードを使っている、だからいつも攻撃はボルド、守りは俺が、といつものようにお互いの役割を決めている。


それがたとえワイバーンであるとしても…だ。


ワイバーンは竜種の中では弱いがそれでも危険等級はBクラス、普通は前衛が攻撃を防ぎ後方から火力の高い魔法を撃ち込むのが基本的な戦法だが生憎俺達はどちらも前衛だから空に逃げられると討伐は難しくなる


だが、ワイバーンは雄叫びをあげながら真っ直ぐにクライスに向かって突っ込んできたかと思うと足の爪を突き出してきた


それに対して盾を構えて大地にしっかりと足を踏ん張ると魔力を体に巡らせて身体を強化する。

次の瞬間に盾とワイバーンの爪が激突し激しい衝撃がクライスを襲う

「ぬぅぅ!ぐっ!おぉぉぉぉ」

やはり下位でも竜か、これは…不味い!

クライスの足が地面にめり込んでいくが止められると思わなかったのだろう、ワイバーンは一瞬だが目の前の俺だけに注意を向けた………今がチャンスだ!


「いまだ!やれ!ボルドォ!」


「任せろ!食らいやがれ!!レイスラッシュ!」

ボルドは自身の魔力を剣に纏わせると戦技を放った、剣は輝きを放ちながらワイバーンの右腕を斬り飛ばすと返す刃で胴体を斬りつけさらにボルドが胴体に蹴りを打ち込みワイバーンのバランスが少し崩れる。


「クライス!今だ!吹き飛ばせぇ!」


ボルドが叫ぶより前にクライスは動き出していた

ボルドの最後の蹴りでバランスを崩したワイバーン…クライスは盾に魔力を込めながらシールドバッシュをワイバーンの顎先に叩き込む。


クライスの攻撃ではワイバーンは吹き飛ばせはしなかったものの相当堪えたのかクライス達から少し距離を開けると空中へと舞い上がる。


「おい!クライス、奴が逃げていくぞ!俺達に勝てないと思ったのかもしれねぇな」


…違うな。ワイバーンは狙った獲物は絶対に逃がさない。まして自分に手傷を負わせた俺達を逃がすわけがない


「ボルド、急いで街に戻るぞ!ワイバーンは俺達を必ず追ってくるはずだ。街に戻って迎撃の準備だ」


そうして俺達は街への道のりを駆け抜けていくのだが、街まであと少しの所で俺は不思議な女を見つける事になる。


________________________


「おい、クライス、あそこに誰か座り込んでるぞ」


ボルドが言うように誰かが座り込んでいるのが見える

「旅人か?今はヤバイ。逃げるように声をかけていくぞ」


近くまで来てみるとその人物は辛うじて女性だと分かるが酷い有り様だった。


顔は包帯で見えず、目も片方は完全に包帯の下だ。さらに服は今まで見たことがないような服を着ているがその服も穴だらけでボロボロだったが見たところ女性のようで…しかしなによりも目を引いたのは所々血で染まったその長い白銀色の髪だった。珍しい色合いだから異国人だと思うが…


「ボルド、お前は先に街へ行ってくれ。俺が話を聞いてみる」


「わかった!先に行ってるぜ?だが早めに戻ってきてくれよ!」


ボルドがそのまま街へ向け馬を走らせたのを見送ると女性に声を掛けるべく近づく。


「言葉が通じればいいんだが……おい、大丈夫か?見た所怪我が酷いようだが…?まだ動けるのならば早めに街に入ったほうがいい、異国の旅人よ」


話かけるとこちらを見て少し驚いたような表情をしたがすぐに口を開く。


「お気遣い感謝致します、騎士殿。道中盗賊に襲われまして…幸い相手が少なかった為撃退は出来たのですが荷物は途中で無くし、身体もご覧の通りの有り様ですが…」


見た目より意識はしっかりしていて丁寧に喋るな…言葉は通じるようだが今は時間もない。それに彼女も早めに治療をしなければならないだろう。


「そうだったのか、それは大変だっただろう。しかし急がねば間に合わなくなるな…もし貴女さえよければ街まで送っていこう」


________________________


それから俺達はワイバーンに追いつかれて迎え打つ事になった。

俺の剣はワイバーンの鱗を切り裂く事が出来ない、さらに言えば目の前の彼女………リンというみたいだがリンにもワイバーンを倒せるとは思えなかった。

むしろ全身怪我だらけの彼女を庇いながら逃げられるか……いや、もしもの時は俺が全力で逃げる時間を稼ぐしかないな…。


しかし話を聞けば彼女は遠距離を攻撃する手段があるらしいが魔法ではないらしい。弓か何かを持っている訳でも無いから不思議に思っていると…彼女はなにもない空中から突然黒くて長い物体を取り出してなぜか地面にうつ伏せになり始めた。

そして取り出した物体をワイバーンが追って来ている方角へと向ける

…まさか亜空庫が使えるとは思わなかったが取り出したあれはなんだ?杖にしては見たことのないタイプだし、なによりうつ伏せになる意味がわからん。なにかの魔道具かと思ったが魔力を使っている気配もない。


「それは一体なんだ?魔道具か?」


「説明はあとからする。耳は塞いだほうがいい、多分驚くだろうから」


どういうわけか彼女は先程とは別人なんじゃないかと思うくらい口調と雰囲気がガラリと変わっていた。

その纏う雰囲気は俺にも分かる…それはまさに何度も死線を潜り抜けた戦士の雰囲気だった。


そして俺は次の瞬間信じられない物を見た、凄まじい轟音を響かせた黒い棒のようなものだったが向けられていたワイバーンは血飛沫を撒き散らし、地面へと墜落してしまった。


「!!!、一体なにが…こんな武器は見たことがない。しかもワイバーンが一撃だと?」


「…まだよ、まだ仕留めていない」


彼女がそう言ってまた黒い武器をワイバーンに向けるとまた同じように轟音が鳴り響いたと同時にワイバーンの頭部が弾けとんだ。

そしてうつ伏せから立ち上がり黒い武器を杖のようにして立っている彼女の近くに走る

……ワイバーンがこんなにあっさりと倒せるとは………。


「リン、君は一体なにをしたんだ…?」と声をかけようとした目の前で彼女はそのまま前に崩れるように倒れた。


「おい!大丈夫か?!」


慌てて抱き起こすと俺の手に血が付いた、傷が開いたのか所々血でぐっしょりと濡れていたので心の中で謝りつつ服を捲って絶句した。


そこかしこに斬撃を受けたらしい傷が走っていて血が流れていた。どうやって出来たのか謎の傷も何ヵ所か……今まで酷く衰弱してる様子は無かったがまさかここまで怪我が酷いとは思わなかった。しかしこれは普通なら動くだけでも激痛で気絶しかねない…というか普通は死んでるぞ。


「急いで街に連れて行かないとな。彼女は俺の、いや、街の恩人だ。死なせる訳にはいかない」


そうして俺は彼女を抱えて街まで戻っていった…。


遅くなりました( ̄▽ ̄;)なかなかまとまらず(笑)






登場人物紹介


【名前】 ボルド


【武器】 ツーハンデットソード


【武技】 レイスラッシュ

 

【好き】 酒


【嫌い】 酒を飲めない毎日


【一言】 「いや、家族が一番大事だって!」

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