閑話 変態神再び
「ここは…?」
見渡す限りの真っ白な空間に3人は佇んでいた
「父さん、ここはどこだ?アーレスには着いたのか?」
零士の問い掛けにジャックは
「……いや、アーレスじゃあねえな。なんだ?ここは…」
「なんだか死後の世界って感じですねぇ…私達ってもしかして失敗して死んだのかもです?」
裕子の言葉に零士は
「裕子、縁起でもない…だが本当にここは何処なんだ…??」
3人は周りを見渡すが全くなにもない空間が広がっているだけであった
「……おやおや、こりゃまたどういうことだろうな?ここに侵入出来る奴等がいるとは…」
声のした方へ3人が振り向くとそこには…
「ようこそ、招かれざる旅人の諸君。どうやって来たのかは知らないがここは呼び出されたもの以外は入る事を許されていない『神域』だ。即刻立ち去る事をお薦めするよ」
目の前で語るのはヨレヨレの白衣を纏った40代ぐらいの男性だった
「神域…まさか…」
ジャックが呟くと
「その通りだよ、ジャック…いや『最古の傭兵王』ジャック=アストラル、お前が俺の世界に飛ばされたお陰でアーレスは大変だったぞ?俺の世界も大幅な修正をするハメになったしな」
白衣の男性は肩を竦めてそう語る
「そりゃあ俺のせいじゃねえよ。文句ならカストールの馬鹿に言ってくれや」
「アーレスの魔王配下…魔大公カストールはお前さんが相討ちで倒しただろ?……まぁいいさ。それで?なぜお前らはここにいる?『界渡り』はこの間の分で暫くは無いはずだが?場合によっちゃ…始末しないといけねえなぁ」
白衣の男の雰囲気が鋭くなるが
「ちょっとまって下さい!私達は自分の娘を探しているだけなんです!もし心当たりがあったら教えて頂けませんか?」
裕子が前に出てそう言うと、白衣の男は雰囲気を和らげながら
「おぉ、なんてこった…お嬢さん、ナイスオッパイ!!」
裕子の胸をガン見しながら白衣の男は裕子に近寄るが裕子は胸を隠しつつ後ろに下がる
「貴様!俺の裕子に手を出すな!」
零士が裕子を庇うように前に出る
「あー、わかったわかった…。野郎には興味ねえよ…んで?娘の名前は?」
「燐、早坂燐です…知りませんか?」
燐の名前を告げた途端白衣の男の目が見開かれ冷や汗を流し始める
「あー、いやまぁ、その、あれだ…!聞いたことないなぁ…」
狼狽え始めた男に裕子が素早く近づいてガッチリとヘッドロックを決める
「お前…なにか知っているな?」
先ほどまでとは別人の様に冷めた口調で男を締め上げる
「うほ!乳が背中…苦しい…だがこれはこれで…弾力、形、大きさ…これほど素晴らしい乳に抱かれながら果てるなら、我が生涯!一片の悔いは無し!!!」
白衣の男は拳を天へと突きだし涙を流す
「この変態が…!」
しかし、次の瞬間には普通に裕子の腕からすり抜けて
「…とまぁ、冗談はさておき質問に答えようじゃないか!燐ならこの前…三回前の界渡りでアーレスへと送った、これが証拠だ」
白衣の男は懐からあるモノを取り出して見せる
「「ブラジャー…?」」
裕子とジャックが怪訝な表情を見せるなかで一人だけ例外の反応を見せた者がいた…
「それは…!燐のお気に入りNo.3の『ピンクの誘惑』じゃないか!!?なぜ貴様がそれを…?!」
零士の叫びに
「ふふふ、戦利品だ!良いだろう…?匂いを嗅いだり装着してみたり、アイマスク替わりにして寝てみたり…その使用法は…無・限・大☆だ!」
ビシィ!とポーズを決めてそう宣言する白衣の男に
裕子はホルスターからM500を引き抜いて迷わず引き金を引くと白衣の男に命中して吹き飛んでいく
その横で零士は「まさか…そんな使用法が…?!」と愕然として呟く
その様子を裕子はゴミでも見るかの如き視線で眺めながら
「零士さん…?後で少しお話しましょうか?」
その言葉に我に返った零士は
「いや、俺は裕子のでしか試すつもりは無いからな?安し…「やったら殺すわ…」
「すいません、絶対にしません!」
素早く零士はDO☆GE☆ZA☆を敢行する
「我が息子ながら情けねえな、おい」
ジャックは盛大にため息をつく
「とまぁ、本物と分かっただろうから本題に入ろう。燐は界渡りでアーレスへと送ったが、あちらの世界で無事に生活している」
いつの間にか戻ってきて何事も無かったかの様に振る舞う男にもう一発弾丸を撃ち込もうとしていた裕子をジャックが止める
「そうか、生きているなら安心だ…俺達は燐を探すためにこの『ディメンションイーター』を使って世界を渡ろうとしたんだが気付いたらこの場所に居た」
「ほぅ、アレを持っているのか…?懐かしいじゃあないか…あれは俺が暇潰しに作った物でも中々の出来映えだったからアーレスの迷宮に送ったんだが…」
それから暫く話は続き、ようやく本題に入る
「俺達の望みは燐を返してくれって事だ」
ジャックが告げると白衣の男は
「無理だな、もう燐は地球での寿命を使い果たしている。だから界渡りを実行した」
至極真面目に白衣の男はそう答える
「じゃあ私達をアーレスへと送って貰いたいのだけど…」
「それも無理だ、ジャックだけなら元の世界に帰すという事も可能だが…いや」
白衣の男は手をポンと叩くと
「分かった、3人全員アーレスに送ってやる…ただし条件がある」
そう言って裕子を指差すと
「裕子さんのヌードを撮ら…」
そこまで言った所でまたM500が火を吹いた、今度は全弾を撃ち込む裕子
「死ねばいいのに…」
しかしまたしても何事も無かったかの様に起き上がると
「イテテ…ちょっとした冗談じゃあないか…、まぁ条件は武器の持ち込みはこちらが指定するものだけにしてもらうってだけだ」
「…わかった、その条件を飲もう。では指定してくれ」
零士はマチェット
ジャックは霜月
そして裕子は…
「もう、裕子さんは好きにしてください」
白衣の男は手に裕子のブラジャーを持って満面の笑みを浮かべる
「「……」」
男二人は諦めたかの様に肩を竦める
「それじゃあアーレスへと送るが…3人まとめて同じ場所には出るが…どこに出るかはランダムだからな?それじゃあ燐に会えたら宜しく伝えてくれ」
3人を光が包み込んでいくと、裕子が何事か叫ぶ
「…?!?!?!?!」
そして光が無くなった後には白衣の男ただひとりが残る
「これでいいか?ヘレナ」
背後を振り返ると長い金髪の絶世の美女が佇んでいた
「えぇ、感謝致します…地球の最高神、ガイウス…私の世界の為に…「いや、礼はいい。早く戻って力を戻す事に専念するんだ…君はまだ本調子じゃないんだから…」
白衣の男はヘレナに近寄ると頭を撫でるためにポケットから手を出す
パサッ………
手と一緒にあるモノが地面に落ちる
「あらあら……これは」
ヘレナがソレを拾い上げて広げる
「い!?それには深い事情が…」
「まぁ…どんな事情かしら…?じっくりとお話しましょうか…」
ヘレナに耳を掴まれて引き摺られていくガイウス
後に残されたのは転移の間際にガイウスが抜き取った裕子のパンティだけだった………




