第28話 この世界にくる前の話をしようか…
私がこの世界に来るキッカケ…あの時の事は多分一生忘れる事はないだろう。
「このままじゃジリ貧ね…。まったく貧乏クジ引いたわ」
地図を見ながらため息を吐くと煙草を1本取りだし火を点ける
「生き残ったのは…私の隊と第二、第四、第八分隊のみ…」
他の分隊は昨日の戦闘で壊滅した、予想外の敵が現れたからだ…敵の側が雇った傭兵一人に瞬く間に壊滅させられた。私も奴と闘った際に手酷くやられはしたが…一先ず撃退することは出来たけどまた奴は来ると思う
自分の顔に巻かれた包帯に触れる…油断したわけでは無かった。ただ奴の方が私より強かっただけ。
これは私が弱かった結果ね…
野営テントの中で今日何度目か分からないため息を吐くと外が騒がしい事に気付く
「さて、今度はなんで騒いでるのやら…」
テントから出てみると屈強な男達が集まって騒いでいた
「そこだ!ブチかませ!!負けんじゃねぇぞ!」
人だかりの中心部では男二人が殴りあっていた
その片方の男が右ストレートを放ったがそれを回避してカウンターを叩き込むのが見えた
「頼む!!俺達の分隊には癒しがねぇんだぞ!!このままじゃ女神の写真が奪われちまうぞ!?気合いいれろ!」
「馬鹿野郎!!?カイル!!隊長の水浴び写真を取り返せ!!あれは俺達が命懸けで手に入れたんだぞ!?この前は奪われたが…いつまでも奴等に良い目を見させるな!!」
あれは私の隊のカイルと…第四分隊の奴等ね?なにをやってるのよアイツ等は…まぁ息抜きは必要だしあれならそこまで酷い事にはならないでしょ…
そうして眺めているとふとある物が目に入った
「…いまだ!!蹴りいれ……はっ!?たたた隊長?!」
周囲の男達の動きが止まりその場を静寂が支配する
「へぇ、よく撮れてるわねぇ…私に気付かれずにこんな写真を撮るなんてこの技術に感心するわ…」
写真を手に取るとポケットからライターを取り出して写真に火を点ける
「ああっ!?そんな…俺達の宝がっ……!」
「そんな…、ハヤサカ隊長に慈悲はないのかっ!?」
「一番人気の写真を失うなんて…神よ…」
「さて、誰がこの写真を撮ったの?私に教えてくれないかしら…?」
男達を睨むと
「わ、我々は恐怖に屈して仲間を売ったりはしない!」
先程まで戦っていたカイルがそう叫ぶが
「あっそ。じゃあ一人ずつ身体に聞いてみるかしら?先ずは…」
「「「「すいませんでしたー」」」」
「まぁ、いいわ…それより無駄な体力使う暇があるならちゃんと自分の装備の点検整備しておきなさい?夜明けと共に撤退するわよ!!」
「「「「了解!」」」」
「返事だけは良いわねあんた達…明日は厳しい戦いになるわ、各々覚悟しておくように」
「隊長がついていれば怖いものなんてないな」
「間違いない、今までもそうやって来たんだからな」
「あはは、あんた達となら大丈夫かもね!なら無事に撤退出来たら私が皆に酒を死ぬほど飲ませてあげる、だから皆で生きて帰るわよ!!」
「「「「おぅ!!」」」」
毎回騒がしい奴等ね、でもまぁ…そんな奴等が私は好きなのかも知れない
「さて、私も装備の確認しておかないと」
そうして作戦開始の時刻……
「我々の分隊は他の隊の撤退を支援しつつ後退する!さぁ、作戦開始!」
私達は敵が出てくるまでは他の分隊と同様のスピードで後退してゆく
「ランス!クレイモアの設置は抜かりないわね?!」
「大丈夫だ!指示された場所に設置した!おかげで荷物が軽くなったがな」
ランスと呼ばれた50代の隊員が返事をする、彼は元々お爺ちゃんの私兵だったから私とは一番長い付き合いだ
「しかし、お嬢!確実に奴等は来るぞ?どこかで迎え撃つしかねぇ」
「この先に廃墟が何件かある!そこで迎撃する予定よ!そこで廃墟にありったけの爆薬を仕掛けてある程度やり合ったら我々も撤退する、その後敵には地の果てまでぶっ飛んで貰うとするわ」
「了解、爆破なら任せてくれ!」
「頼りにしてるわよ、光輝」
そこで返事をしたのは隊員の中で唯一日本人の相沢光輝、彼は一年前に私の隊に配属された
暫く走って行くと目的の廃墟に到着する
「よし、ここまでは予定通りね、問題は奴だけ…来ないことを祈るしかない…か」
「お嬢、それじゃ俺は所定の配置につくぞ?他の奴等も配置についてる」
「えぇ、もし奴が来たときは私が相手をするから他の敵兵は任せるわよ」
「了解だ、援護が要るときは合図してくれ」
ランス達が配置に着いた後私も廃墟の一つに身を隠して対物ライフルを構え待機する
すると遠くで爆発音が響いた
『隊長、クレイモアの爆発を確認。敵兵到着までおよそ10分』
無線から連絡が入る
『了解、各員抜かるなよ…他の隊が離脱するまで持ちこたえるぞ』
それからすぐに敵兵の第一陣が姿を見せる
敵兵の姿が見えると同時にランスの狙撃によって頭を撃ち抜かれて倒れる
『クリア』
『エドガー、フォード、カイル、後続の敵兵を凪ぎ払え!』
『了解…』『了解です』『了解だ』
三人がそれぞれに返事をすると同時に射撃が開始される
次々と敵兵が倒れていくが敵は途切れる気配がない…
私もライフルで遮蔽物に隠れた敵を撃ち抜く
しかしやはり私達と敵では戦力に差がありすぎた
『お嬢、このままじゃ押しきられるぞ!!どうする!?』
ランスが敵に向けて手榴弾を投げる
『ランス!スモークグレネードを投げるわ!それと同時に後退!3、2、1、GO!!!』
合図と同時にスモークグレネードが炸裂する
『各員撤退!爆破するわよ!!』
乱れなく敵に向け牽制射撃を繰返しつつ撤退し、距離を稼ぐ
「光輝!起爆!全員伏せなさい!!」
一瞬遅れて閃光と轟音が轟き目の前を爆炎が包み込む
「今のうちに撤退するわよ!!」
それからは追撃してくる敵を排除しつつ後退していくが………
「やっと追い付いたぜぇ…もう逃がさねぇ」
奴が来てしまった…私にこの傷を負わせた男
噂は知っていた…名前以外の一切の素性は分からずただ標的の死体が後に残るだけ…それが目の前にいる…
「俺はなぁ、今まで標的を逃がした事はなかったんだがよぅ…お前だけだせ?1度とはいえ逃げれたのはなぁ!!だがそれも終わりだ…今度こそ殺す。この俺…死神ジュードがなぁ!!!」
そうしてジュードとの2度目の闘いが始まった……




