第27話 過去の話の前に
……さて、もう寝たかな?
私の服の裾を握って寝ているレンの手をそっと外して布団を掛けなおす
「色々有りすぎて実感ないけど、本当に育て上げる事が出来るかしらね…?これからはなるべくレンの見本になれるように考えて動かないと駄目ね」
今まで普通の生活なんてした事があまりなかったから大丈夫か心配だけど、そこはなんとかするしかないか…
「まぁとりあえずお金もあるし、家も仕事もあるから後は頑張るしかないかな…」
よし、頑張ろう。
ドアを閉める時に音を立てないように気を付けながら部屋を出るとマリーが立っていた
「もうレンくんは寝たのかしら?私は飲み物を用意してくるから先にクライスとリビングで待っててね」
マリーがそう言ってキッチンに消えていくのを見送ってからリビングに向かう
「レンは寝たのか?」
「えぇ、疲れてたのかベッドに入った途端ぐっすりよ。そういえば今日はレンと二人でなにをしてたの?レンに聞いても教えてくれないのよね…」
「ふむ、レンが秘密にするなら俺が教えるわけにはいくまい」
「…そっかぁ、まぁ男同士の秘密ならしょうがないわよね。ふふ…男同士の秘密…か」
リンは口角を少し上げて微笑む
「秘密にされたのにやけに嬉しそうじゃないか??」
「まぁね…、レンが少しずつでも周りに打ち解けていってるというのは嬉しいかな。少し寂しく思うのもあるけどね」
「そうだな…、しかし子供の成長は早いからな?しっかり面倒を見てやることだ。幸いレンはリンの事はちゃんと母親として見ているようだな…彼は強いぞ?自分の境遇を理解し、それでもリンを母親と認めてるみたいだからな」
「そう、なら私もちゃんとしなきゃ駄目ね、正直私は母親には向いてないと思ってたのよ。怒りの沸点低いし、今までの人生殆どが荒事の中で生きてきたから子供の親になるとは思ってなかったしね…、まぁ弱音を吐くのはこれっきりにしとくわ」
「俺にはまだ子供が居ないからなんとも言えないが…、まだまだ先は長い。焦らずじっくり付き合って行けば良いさ」
「そうね…私なりにやってみるわ、ありがとうねクライス」
それから少し話をしているとマリーが戻ってくる
「さて、マリーも来たしリンが話したい事を聞こうか…」
「……まず最初に言っておくわ、私がこれから話す事は多分信じられないかも知れないけど誓って嘘偽りはないとだけ」
「わかった、どのような話かは分からないが信じるさ、な?マリー」
「勿論よ、短い付き合いだけどリンは嘘をつくような人間じゃないというのは分かるつもりよ」
「ありがとうね。それじゃ始めましょうかね…私がどこから来てこの世界になぜ来ることになったのかを…ね…」




