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私が異世界に流されて…  作者: カルバリン
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閑話 地球にて

日本の山奥…とある一軒家にて……


「どういうことだ!まだ見つからないのか!?」


バン!と机を叩いて怒鳴り声を上げる男性


「いいか?どんなに小さな痕跡でも絶対見逃すな…燐が最後に居た地点をくまなく探せ…いいな?」


そう言って男性は携帯の通話終了ボタンを押す


「燐…一体何があったんだ……」


呟く男性は特徴的な銀髪を短く刈り込み、瞳の色は黒、目付きが鋭く体格もかなりガッシリとしている。見た目は30代半ば位で全体的にみて整っていると言われる部類だろう


「もし…燐になにかあったのなら…その時は…!」


男性は手に持った携帯電話を握り潰す


すると、不意に男性のすぐ後ろから声がかかる


「零士さん、また携帯壊して…大体燐はもう成人して私達の手から離れた…自分の道を進んだ結果なんだから…私達の仕事はいつ誰が死んでもおかしくはないでしょ?」

現れたのは黒のスラックスに白のYシャツは着崩し、裾をお腹の所で結んでいる為ヘソが見えている…見た目20代後半の若い女性だった

黒い髪に瞳は燃えるような緋色、その艶やかな黒髪は腰の少し上の所をリボンで纏めて自然に流している

スタイルはYシャツを押し上げて自己主張している豊かな胸元からも分かる通りナイスバディである


「裕子…そうなんだがな、やはり一人娘が行方不明になれば心配するのは当たり前だろ?そもそも燐は危なっかしいんだ、この前だってせっかく裕子に似て美人なのに顔に跡の残る傷を作って…」


まぁ相手はきっちり天に召されたのだが…零士の手によって強制的に。


「そうよねぇ…あの子は見てると危なっかしいのは否定出来ないわねぇ…あの子は切羽詰まるとやたら突っ込んで行く変な癖があるし…でも普通の人間に燐を倒したり出来るのかと言われたら出来ないでしょうけど…」


そもそも燐が最後に参加した戦い自体、苦戦するようなモノでは無かった。だが足取りを辿れば燐が最後、確かに追い詰められていた事までは分かっているのだが……


「裕子も俺も手掛かりすら掴めないとはな…父さんはなにか情報ないか?」


「いや、俺の情報網にすら何一つ情報が上がってきてねーな…」


父さんと呼ばれた男性は顔立ちは零士に似ていて銀髪、体格も零士に比べてさらにガッチリして、顔にも無数の傷痕が走っている様は歴戦の戦士と呼ばれる者の風格を醸し出している

年齢は見た目40代のダンディでさらに特徴的なのは耳が長く俗に言うエルフ耳であった


「お義父様の情報網に引っ掛からないなんて…どんな国の諜報機関でも不可能よ?一体どういうことかしらね……」


「それなんだが、1つ気になることがあるのだ…燐に渡した銃を覚えているか?アレには俺が追跡の魔術を施していたんだが……」


「ああ、記念に俺達で一から作ったデザートイーグルだろ?燐はえらく気に入ってたからなぁ」

燐の喜んだ顔が浮かんだのか零士は顔がだらしなく緩む


「零士さん、顔が大変な事になってるわ…本当に親バカよねぇ…。でもお義父さま、そのデザートイーグルがどうしたんですか?もし燐になにかあったとして、その銃を追跡しても燐が持ってない限り居場所が分かるとは…」


「その通り…裕子さんの言った事は正しい。流石は我が家の嫁だ、だがな…違うのだ、俺が引っ掛かっているのはあの銃の反応がまったく無い(・・・・・・)と言うことなんだ」


零士と裕子は驚く、常識的に考えて殺されるか捕まった場合は大抵その場に置き去りにされるか、取り上げてそのまま使うかなどだろう…だが零士の父、ジャックは反応がまったく無いと言う…


「それはおかしいな、あれは確かかなり特殊な素材で作っただろ?刻印を刻むだけでも相当苦労したんだ、そう簡単に壊れるようなモノではないぞ?それがこの世から消えるなんてことが……」


そう言いながら零士は1つの可能性に気付く


「気付いたようだな、そう…もし燐がこの世界にいない(・・・・・・・・)のだとしたら…」


「なるほど、お義父さまの場合と逆のパターンと言うことですね?それならば色々と説明は出来ますが…ありえるのでしょうか?確かに目の前にお義父さまという実例はありますけど…」


「可能性はある。燐には俺のエルフとしての魔力と血、零士の母親で俺の妻である真里の巫女としての先見の異能、さらには燐の母親である裕子さんの吸血種としての力…この世界でもかなり珍しい能力、種族の混血だからな、これだけ揃えばなにが起きても不思議ではないさ、実際俺も魔力が高いのもあってこちらに飛ばされたみたいだからな」


「父さんの予測が当たっていたらもしかすると燐には二度と会えないと言うことなのか…?」


零士はこの世の終わりの様な表情を浮かべながら椅子に深く腰かける


「まぁまて、むしろそっちの方が都合がいい。生きてるならどうとでもなるさ」


「いや、生きてるならそれは嬉しいが二度と会えないなら死んだのと変わらないじゃないか…!」


「零士さん、少し落ち着いて。お義父さま…もしかしてなにか手立てがあるのですか??」


零士を宥めながら裕子はジャックに訊ねる


「あぁ、ある。俺の亜空庫に仕舞いっぱなしにしてたとびきりのヤツがな…」


ジャックはそう言って手元にとある長剣を取り出した


「…それは??」


零士と裕子はその剣が放つ異質なオーラに圧倒される

刀身にはびっしりと不可思議な文字が刻み込まれていて柄には赤い宝玉が嵌め込まれている


「こいつはな、俺が若い頃向こうの世界で迷宮のガーディアンを倒した時に手に入れたものさ。向こうの世界での等級…レアリティが『神級』と言われる最上級の等級…神々が作ったと言われ、それらは奇跡と言えるレベルの事象を引き起こす事が出来る」


「凄い剣なんですね…もしかしてそれが?」


「そうだ、こいつは世界を渡る事が出来る。その名も『ディメンションイーター』だ」


但し片道切符だがな…とジャックは付け加えた


「片道だけですか…ならよく考えてからの方が良さそう「よし!父さん、今すぐ行くぞ!」…零士さん、駄目よ?もし行ったはいいけど燐がそこに居なかったらどうするの?もしやっぱりこの世界のどこかに居たとしたら燐はこっちで一人になってしまうわ…」


「確かに…すまない、可能性が見えたから少し先走ってしまった…というか、そんな凄い物を持ってたんならなんで父さんは元の世界に帰らなかったんだ?」

零士のもっともな疑問に裕子も「そうよね、帰る手段があったのだからすぐに帰るって手もあったのに」

二人がジャックの方を見るとジャックは頬を掻きながら


「それはな、この世界に飛ばされた時、俺は瀕死の状態だったんだが…運良く近くの住人に助けてもらったんだがな…」


そこの娘が美人だったんだ……とジャックは語る


「まぁそれがお前の母親なんだがな、息子も出来たし、こちらの世界の方が居心地が良かったのもあって使わなかったわけだ」


そうして話し合った結果、世界を渡るのは一ヶ月後でその間に探して見つからなければ…という方向で落ち着いた



そして一ヶ月後………日本のとある山の中に3人は集まった


「やはり見つからなかったな、痕跡が完全に途絶えているのだから当然ではあるが…」


ジャックの服は前の世界の服を着た上に皮の胸当てを装備して、腰にはディメンションイーターと愛用の刀、霜月(そうげつ)を携えて切り株に腰かけていた


「父さんの故郷にいればいいんだが…まぁすぐに分かるかも知れない分急ぎたいが…」


零士は背中にサプレッサー付きのスナイパーライフルを背負い、腰には大型のマチェットを2本装備して服は野戦服だ


「燐はそう簡単に死ぬような子じゃないから案外その世界で上手くやってるかもしれないわよ?」


裕子は一ヶ月前と同じような服を着ているが、その手には拳の部分に突起があるフィンガーレスグローブを装備、腰のホルスターにM500をベースに改造した大型リボルバーを納め、太ももには柄に鋼線を仕込んだ特殊ナイフと投擲用ナイフを数本携帯している

ジャックは二人が近くに集まると腰の鞘からディメンションイーターを引き抜く


「さて、始めるぞ…もうこの世界に戻ることは無いだろう……二人とも覚悟はいいか?」


魔力を剣に込めながらそう問いかける


「あぁ、勿論だ。我が子を助ける為ならば些細な事だ」


「燐の事もだけど、零士さんが行くところに私の居場所はあるから…」


ジャックは二人の言葉を聞くと剣に魔力を込める


「よし、ならば行くか!真里と出会う事の出来たこの世界は素晴らしい世界だったぞ……」


そうしてジャックが剣を振り抜くとディメンションイーターが空間に裂け目を作る



「ディメンションイーターよ!アーレスに道を繋げ!」


ジャック達3人が裂け目に飛び込むと後には何もなかったかの様にまた静けさを取り戻した…………。





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