第24話 そうだ、アルバートに報告しよう
さて、普通に出かけて来たもののここに来て少々問題が発生していた
そう、よく考えたら服屋の場所なんて知らないのよね
そもそも私はこの街に来てから自由に出歩いたのは武器屋だけだし…
「レン、服屋は後にして先にギルドに行くわよ」
「分かった、けどなんで?」
不思議そうな顔で私を見上げるレン
「大人の事情よ、細かい事を気にしたら駄目」
「???」
それから普通に歩いているとギルドにたどり着いた
そのままギルドの中へと入ると中に居た人達の視線が私達に集まる
「そんなに目立つかしらね、面倒くさい…」
視線を無視してカウンターまで歩いていく
「フラン、アルバートは居るかしら?」
「ふぁ?!リンさん?!少々お待ちください…!!」
フランは慌てて走って行く
「あっ!ちょっと……ってあの子意外と足速いわね。ついでに登録しようかと思ったのだけど…」
「母さん、ここってどういう場所なの?」
レンが掴んでいた服を引っ張って聞いてくる
「ここ?ギルドって言うのよ、私もまだ3回くらいしか来たことないけどね、冒険者が利用する施設よ」
すると隣のカウンターから声が掛かる
「おや?リンさんじゃないですか?どうしたんですか…って子供?リンさんは子持ちだったんですか…?お母さんに良く似てますねぇ」
すると背後がざわめく
「うそだろ…?!子供を連れて来た時点で気になってはいたが…」
「いやいやいやいや!なんかの間違いだろ?!あの尻のラインは子持ちではありえん…だがあの子、彼女にそっくりだし…」
「まぁ残念だったな?所詮俺らには高嶺の花だったんだ…しかし旦那はどんなやつなんだろうな?羨ましい、毎日あんなことやこんなことを…」
「変態ども、変な話してるんじゃないわよ!てかあんた達じゃランクも見た目も釣り合わないじゃないのさ」
後ろでそんな会話が飛び交っているけど…ほっときましょ
「えぇ、まぁ色々あってね…血は繋がってないけど私が育てる事になったから登録しようと思ったのよ」
「血が繋がってない、ですか?まぁ色々事情がおありのようですね、分かりました…ならこの書類に必要項目を記入してください」
差し出された書類に必要な事を書き込んでいく
「これでいいかしら?」
書類をトールに渡して確認してもらっていると
「リンさん!ギルドマスターの部屋までお連れします!!」
…いちいち騒がしい娘ねぇ
「フラン、もう少し落ち着きなさいよ?じゃないとその内…」
怪我するわよ?と言おうとしたが
「ぷぎゃっ!!」
間に合わなかったわね
目の前にたどり着く前に盛大にコケて転がっていくフランを眺めながらため息をつく
「……トール、貴方も大変ね」
彼もその光景を眺めながら
「…ええ、まぁもう諦めましたがね」
それからフランは放置してアルバートの部屋へとやって来た私はアルバートに大体の事情を説明する
ちなみにレンはフラン達に預けてきた、大人しく待っててねって言うと「分かった!」と素直に頷いてくれたからだ
レンは聞き分けの良い子だから助かるわね
アルフレッドとの交戦状況、1人冒険者を助けた事、謎の男の事など詳細に説明していく
「………とまあ大体こんな感じね」
アルバートは聞き終えるとリンの方に視線を向ける
「なるほどのぅ、しかしまさかアルフレッドがリンに勝てぬとな…つくづく規格外じゃの、お主」
「まぁ今はって言ってたけどね…所で怪我は大丈夫なの?」
「うむ、ガストロノフに早い段階で助けてもらったからの、それにまだまだ若い奴らにゃ負けんぞぃ」
なんというか、この世界の人は逞しいわ……
「とまぁ報告はこれで終わりじゃな?今回の助力感謝する。緊急依頼の報酬は受付で貰うとええ、しかしそれだけではちと足りんな…」
他になにか欲しいものはあるかの?そうアルバートが聞いてくる
「いいのかしら?私は別にたいした働きしてないんだけど……」
「いいんじゃよ、お前さんが居なかったら儂らは生きて帰ってはこれなんだ。じゃから遠慮はせんでくれんかの」
でも、欲しいものって急に言われても………ん?そう言えばあったわね
「なんでもいいの??」
「まぁの、流石に叶えられる範囲で頼むが…」
「じゃあ………小さくていいから家が欲しい…って流石に無理よね」
「ええぞ、それだけで良いのかの?あと1つ位なら大丈夫じゃが」
「いえ、とりあえず家があればそれでいいわ…とゆうか欲しいものじゃないけど頼みを1つ聞いてもらえると助かるのだけど…」
「なんじゃ??」
「暫くは街から離れるような依頼は受けたくないのよ、レンは私に心配かけないように普通にしてるみたいだけど…
そもそも母親が死んで平気な子供なんていないわ。私の事を母親と言ってくれるのは嬉しいけどそれは顔も声も似ている私に母親の影を重ねてるだけだと思うのよ……そんな訳で今は出来るだけ傍に居たほうが良いと思ってね」
「……そうじゃな、だがの?レン君の心がお前さんに完全に分かるわけではあるまいて。彼なりにお前さんを母親として見ているのかもしれんぞ?じゃから気長に付き合っていけばええと思うぞぃ?焦らずにな」
「……そうかもね、まぁそういう理由で冒険者の仕事はそんなに受けないと思うわ。そこでなんだけど、なにか普通の仕事ってないかしら?酒場のウエイトレスでも掃除婦でもなんでも良いんだけど…」
生活するにはお金が要る。まぁ仕事が無くても最悪ギルドの壁に貼ってある高額賞金首を捕まえに行くのも考えてはいるけど…出来れば今は離れるのは避けたいし……
「………そうじゃなぁ、あるにはあるんだがのぅ…」
なにやらアルバートが考え込んでいる
「リン、1つ聞きたいのじゃが…お主は算術や体術などの指導をしてくれと言われたらやれるかの?」
「……?指導…ねぇ、出来るかといわれたら出来るけど…」
「ならお前さんに1つ長期で頼みたい仕事があるんじゃが…最近騎士学校の教員に空きが出来たんじゃがの、ちと問題があって誰もやりたがらんのだ。ちなみに待遇は破格じゃぞ」
「えーと、それは助かるのだけど…その問題ってなに?」
「うむ、実は…今年の新入生が皆中々の実力を持っておるのだが、指導出来るレベルの教員が居らんのじゃ。最初は良かったのだが自分達より実力が下の者に教わるのは時間の無駄だといって教員を追い込んでしまうんじゃよ…何人かはそれでも指導しようとしておったんじゃが…結果みな辞めてしもうたんじゃ」
はぁ、どこの世界にも天狗になる奴らはいるのね、そりゃあ誰だってやりたがらない訳よ
「へぇ、面白そうね。でも私って指導するならかなり厳しく行くかもだけど…最悪その生徒達辞めちゃうかもね、それでもいいなら」
素直に聞く生徒にはちゃんと指導するけどね
「…いいじゃろ、どっちにしろ集団行動が出来ぬ奴等を騎士団に入れる訳にはいかんのでな。リンの好きにしたらええ」
「分かったわ、その仕事引き受ける!だけどそんなこと勝手に決めて良いの?学校には学校の方針とか校長とか居るんじゃ…?」
「大丈夫じゃよ、だってワシが学院長じゃしな」
それから色々と条件や待遇の話や報酬の家の話をした後、アルバートの部屋を出て受付にレンを迎えに行く
リンが出ていった後、アルバートは一人呟く
「…ちゃんと母親しとるようじゃのぅ。彼女らにヘレナ様の加護があらんことを…」




