第22話 それは日本の奥義、DO☆GE☆ZAです
今から約20分前の事だ。
私はクライスとマリーの目の前である行為を敢行していた…
「えーと、リン?なにをしてるのかしら?」
それは所謂《DO☆GE☆ZA》である
「…これは日本、私の故郷に伝わる最上級の謝罪とお願いを行う時に使われる奥義です」
もう一度深々と頭を下げる
クライスとマリーは意味が分からぬままリンともう一人…リンに良く似た子供も自分達と同じようにどうしていいのか分からずオロオロしていた
「母さん…?それはなにを?」
「レン、これはね相手に対して最上級…」
「…?待って、リン?ずっと気になっていたんだけど、貴女の事をお母さんって呼ぶその子は……?」
リンはようやく頭を上げると
「実は………」
そして今現在私はクライス夫妻と私、レンの四人でテーブルを囲んでいる
「なるほどねぇ…話は大体分かりました、私達はむしろ喜ばしいわ…子供は私達も好きですしね。それよりも、本当に良く似てるわねぇ…。本当にリンが産んだ子供じゃないのよね?」
マリーはお菓子…ドーナツに似た物を食べているレンに視線を向けると顔を綻ばせる
「間違いなく私は産んでないわよ、この子の母親もちゃんと確認したから。まぁ母親も瓜二つだったんだけど…」
「まぁ、いいんじゃないか?とりあえず暫くはリンも家を探したりと、する事があるんだろう?我が家はまだ部屋もあるし、ゆっくりと準備したらいいさ」
「そうねぇ、今日の所は夜も遅いからお風呂に…「風呂!?こちらの世界にも風呂があるの?!」
リンが凄まじい勢いでマリーの言葉に食いついた
「え、えーと、リン?少し落ち着きなさいな?お風呂ならあるから、だから落ち着きなさい」
リンはそこで我にかえると恥ずかしそうに顔を伏せた
「リンはお風呂が好きなの?なら今から用意するからその子と一緒に入って来たらいいわ、ちょっと待っててね!」
パタパタと家の奥へといくマリーを見送るとクライスが口を開く
「リンは本当に驚かせてくれるな、イキナリSSランクになって、さらにそのまま緊急依頼で飛び出した後、まさかあのEXランクの『双剣乱舞』と闘って生きて帰ったあげくに子供を連れて帰ってくるとはな」
クライスはなにやら懐からなにかを取り出すと口にくわえて火をつけようとしていた
「クライス…それは??」
「…パロルだが?リンの故郷にはないのか??これは俺の楽しみの1つでな、マリーからはやめろと言われるんだがな、中々やめられなくてね」
なるほど、要するに煙草じゃない。この世界にも煙草があったのね
「私も似た物を吸ってるわ、辞めれないのは一緒ね?」
リンもポケットから煙草とジッポを取り出すとクライスに見せる
「ほお、見たことがないな?1つ貰っても?」
リンは煙草の箱から1本取り出すとクライスに差し出すとくわえたのを確認してジッポで火をつける
「お、おぉ!これは…旨い!この吸った時のヒヤッとする感覚……そしてその点火具は素晴らしいな」
私がテーブルに置いたジッポをみながらクライスは楽しげにそういってまた紫煙を吐き出す
すると今まで私の隣で大人しくしていたレンがジッポに手を伸ばしてくるが
「駄目よ、レン。それは子供のオモチャじゃないんだから…」
私はジッポを持ち上げるとポケットに仕舞う
「ごめんなさい…」
「分かればいいのよ、レン…でもね?これからも私は駄目な事は駄目って言うし、やったほうが良いことはどんなことでも応援するしさせてあげる。だからこれからも遠慮しないで色んな事をしてみなさい」
リンは頭を撫でながらレンにそう伝えるとレンはくすぐったいのかわからないけど体を震わせながらもされるがままになっている
「こうしてみると本当に親子に見えるな、リンがそんな表情も出来るのをみれたのは良いことだ」
「私は普段はこんな感じなんだけど…とゆうか私はまだ24歳なんだから私の故郷じゃ本来は10歳になる子供の母親ってゆうのも体験出来ない事だけど…」
「…24??リンはまだ上かと……っとすまん」
慌ててクライスは謝るがリンは苦笑しながら
「よくいわれる事だから気にしないわよ」
そこへマリーが戻ってくる
「お風呂の用意が出来たわ、さぁ入っていらっしゃいな」
リンとレンはタオルを渡されると風呂場まで案内する
「着替えは私が用意しておくからゆっくり疲れをとってちょうだい」
そうして今、私達は脱衣場で服を脱ぐ
「さあ、レンも早く脱いで入るわよ?風邪を引いたら困るしね」
リンが自分の服を脱ぐ。レンは恥ずかしそうにしているがリンのその体をみた時驚いた
服を脱いだリンの体には至るところに傷があった、背中や腕、顔以外にも…自分の母親には無かったその跡にびっくりしているとリンが見られていることに気づく
「あら?どうしたの?」
リンがそう聞くとレンは
「傷が…痛くない?母さんには無かったから…」
「そっか…、でももう治ってるから痛くないのよ?心配してくれたのね、ありがとう」
さ、入ろう?そういって風呂に入ると体を洗って湯に浸かりしばらくして風呂から出る
それからはマリーが用意した服を着るとクライス達に挨拶して部屋に入る
私はレンの髪をタオルで拭いてから櫛で溶いてあげる、すると疲れていたのかレンはうつらうつらとしていた
「レン。眠いなら先にベットに行きなさい?私はまだやることがあるから」
そう言うと素直にベットまで歩いていく
「ねぇ母さん、やることって?」
レンは目を擦りながら聞いてくる
「ん?まぁ武器の手入れよ、興味あるの?」
レンがコクコクと頷くのをみてリンは笑いながらやっぱり男の子ね、と呟くと
「子守唄…の代わりになるかはわからないけど、寝るまでは眺めてるといいわ」
それからリンは最初にデザートイーグルを取り出すと手慣れた手つきで分解していく
「流石に壊れる事は無くてもメンテはキチンとしないとね」
分解したデザートイーグルのパーツを磨き、マガジンからも弾丸を全て抜き取ると一つ一つ光に翳して眺める
そして磨き終わったパーツを組み立て引き金やスライドの動作を確認するとマガジンに弾丸を込め装填するとセーフティーをかけてホルスターに納める
「これでよし…と、あとは村雨ね…」
リンは立て掛けてあった村雨を手に取り鞘から抜き払うと澄んだ音を立てる
「剣……?凄い…」
レンは目を輝かせながら村雨を見ている
「へぇ、剣に興味があるの?これはね…カタナっていうのよ?私の故郷の剣なんだけど…」
「俺…も母さんから貰った自分のナイフを持ってたんだけど…母さんを助けようとして魔物に刺したまま…」
なるほどね、そうリンが呟くと
「そっか、今となっては形見だったのね…。なら……」
アイテムボックスに念じてある物をリンは取り出した
「それは…?」
リンは取り出したモノをレンに渡す
「それはね、私が幾つもの戦場を戦い抜いた時にいつも装備していたものよ…レン、あなたにあげる」
レンは受けとると鞘から抜く
「これは、ナイフ?見たことない形…」
抜かれた刀身は艶消しの黒、肉厚の刃は武骨な印象を受ける
「コンバットナイフっていうのだけどね。でも、レン…私と約束してちょうだい。絶対に無闇に抜かないこと、それが約束よ?それを破った時は……お仕置きだからね…?」
そういって村雨を鞘に納めるともう1つアイテムボックスから取り出す。
ナイフをレンから一旦受けとるとナイフの鞘をベルトに固定する
本来は肩に下げるようにして装備するけど子供なら腰に装備出来る
「また明日調節してあげるから、今日は寝ましょう」
そうしてベットに入るとレンを抱き寄せる
「おやすみ、レン……」
「お、おやすみ………」
そうして緊急依頼から始まった一連の騒動は幕を閉じて夜は更けていった………




