第21話 息子が出来ました
それから暫くして私たちはカルドナの街の近くまで着くとバハムートから降りていく
「では、わしらは先に戻るが…いいのか?一人では大変じゃろうに…」
アルバート達がそういってくれるが
「いえ、あなた達は早く報告に行ったほうがいいわ。特にアルバートはギルドマスターなんだから」
アルバートにはギルドに、ガストロノフはベアトリクスを治療院に送っていって貰わないといけない。それに私はレンが起きるまでは動くわけには行かない…レンを抱えて彼女の亡骸を運ぶのは無理だ
「わかった、しかしリンよ…お主もあとから報告に来るんじゃぞ?」
「わかってるわ、後から必ず行くから」
そうしてアルバート達は街へと戻っていく
「さて、起きるまでは待つしかないわね……」
レンを地面に寝かせると私は少し離れた所でポケットから煙草を取り出すと火をつける
「はぁ…」
紫煙を吐き出しながらこれからの事を考える
引き取る事になったとして、生活費をどうしようか……依頼を受けて稼ぐのはなかなか限度があるし安定しないわよね……てゆうか……
「一番大事な事を忘れてるじゃない…!家が無いじゃないのよ…」
それからも独り色々考えていると
「……あれ?ここは……?」
レンが体を起こして周りを見渡す
「起きたのね、身体は大丈夫??」
私が声をかけると
「…!母さん!!無事だっ…」
慌てて振り返ったレンは
「あっ……」
私が母親ではないと気づくと私に駆け寄り
「母さんは!?母さんはどこ!助けてくれたの?!」
「…ちゃんとこれから話すから…だから落ち着きなさい、レン君」
レンは驚いたように私を見て
「…え?なんで名前を…?」
「あなたのお母さんから聞いたわ、それから…」
それからゆっくりとレンが気を失っていた間の話を聞かせる…。母親を見つけた事、既に手の施しようが無かったこと、彼女が私に語った最後の頼みの事……全てを語る
「……話はここまで、先ずはあなたのお母さんを埋葬にいきましょうか…街の外れに墓地があるって話だったから」
レンは話を黙って聞きながらも涙を流していた。
私は膝をついてレンの目線に合わせて抱き締める。
「ごめんね…私がもう少し早く見つけていたら…」
レンは嗚咽を洩らしながら泣き続けた
その後、墓場に行くと彼女……エルを埋葬するために管理者に話をした…名前をレンに聞いて墓に名前を刻み花を添えて祈る、レンは膝をついて祈っているが、私は手を合わせ黙祷を捧げる
貴女の息子はいい子ね、安心してちょうだい…ちゃんと約束は守るから
「……ありがとう、ございます…お陰で母さんを……」
「いいのよ、子供は大人に頼るのは当たり前なんだから…それよりもレンに話があるのだけど」
「話…?」
「ええ、レンさえ良ければだけど…私と暮らさないかしら?私はまだこの街に来てまだ間もないから頼りないかもしれないかもだけれど」
「いいの…?」
「もちろん、これからよろしくね」
「…はい、よろしくお願いします、え…と」
「そっか…名前を言ってなかったわね。私はリンって言うのよ?呼び方はレンの好きなように呼んでいいわ」
さてと、これから忙しくなるわね…まずクライス達に相談して、ギルドに報告して………あーこれから大変じゃない…でも、頑張らないとね
「…………さん」
むぅ、とにかく帰ろう
「母さん!!」
「…え?」
見るとレンが私の服を掴んで
「母さんって呼んだら駄目?母さんに似てるからつい呼んじゃったけど……」
私を見上げるレンが少し目を伏せてしまう
「…そんなことないわ、レンは今日から私の息子よ」
しゃがんでレンを抱き寄せる
「さぁ、これから忙しくなるわよ?とにかく帰りましょうか」
私が手を差し出すとレンはその手を握る
そうして私たちは街へと歩き出した…。




