第20話 竜って……以下略
そしてガストロノフ達が待つ民家に戻った私はガストロノフにさっきの出来事を話す
「なるほどな…、お前が抱えてきた女性があの子の母親だったか」
今は彼女の亡骸はベットへと寝かせてある
「残念だけど、間に合わなかった。でも、最後の頼みは叶えてあげようと思ってる」
彼女の最後の頼み……息子をよろしくと言った彼女の言葉が頭に響く
「引き取るのもまずは本人の意志次第だけどね、とにかく今は避難場所まで行きましょうか」
避難場所までガストロノフは彼女の亡骸を、私は男の子…レンをおんぶして走る
「しかし、これからどうするんだ?その子…レンだったか?引き取ると言ってもリンは子供を育てたことはあるのか??」
「無いわ!そもそも男と付き合った事もない!でもなんとかするわ」
ガストロノフは呆れたのか
「まぁ、いいさ。なんにしろまずはこの街から帰ってギルドに報告が終わらないと俺たちは緊急依頼の拘束から解放されないからな」
それから避難場所に戻ると既に街の住人のほとんどが移動したようで、そこに残っていたのは……
「リン!ラルフ!無事だったのね!!」
「これ、落ち着かんか…興奮すれば傷口が開くぞぃ」
至る所に包帯を巻いたベアトリクスと杖をついているアルバートの姿があった
「ってそもそもあんたたち動けるの?!二人とも死にかけてたハズだけど…?」
「二人ともしぶといからな、あのくらいでは死なんだろ。それより撤退のほうはどうなんだ?見たところほぼ終わっているみたいだが…」
「しぶといとは失礼ね、これでもか弱い乙女なんだけど?ラル…」
「くっ!俺はガストロノフだ…ラルフなんて名前ではない…!」
ガストロノフは慌ててベアトリクスの口を塞ぐ
「なにをやっとるんじゃお主らは……ともかく避難も完了するからの。主らを待っておったんじゃ、ところで…お前さんらが抱えているのは街の住人かね?」
「名前は分からんが、色々あってな…」
「事情は私から説明するけど…帰りながらにしましょう?早く彼女を弔ってあげないと」
そうして来た時と同じように竜に乗って街まで帰る
「…なるほど、つまりお前さんに似た子供を保護したと…それで母親も見つけたがこれまたお前さんに瓜二つ、そして見つけた時には既に手遅れだったんじゃな」
「えぇ、最後に息子をお願いって言われたからね…独り立ち出来るまで面倒を見るつもりよ」
リンは膝に乗せたレンに掛けた上着を掛けなおす
「そういえば…こんな場合って子供を引き取るのは問題はないのかしら?親としての資格とかなんとかが大丈夫ならいいんだけど…」
「そうじゃのう、基本的には問題ないが…ギルドに申告して彼の情報を登録しなおしてもらわねばならん」
「登録?戸籍情報みたいなものかしら?」
「コセキとは?よくわからんのじゃがまぁ登録とは冒険者という仕事は死ぬ可能性が高いのでな…、その家族の情報を登録しておく事でもしもの時は王国とギルドから支援出来るようにするのが目的なんじゃよ」
なるほど、意外とちゃんとしてるのね。
それならちゃんとしないといけないかな、私もいつ死ぬかは分からないし
「ならこの子が目を覚ましてからちゃんと話をしてみるわ」
「だがのぅ…その子は果たして母親の死を受け止める事が出来るのじゃろうか」
「そればっかりは私にはどうしようもないわ…でも私も両親にはもう会うことは叶わないから気持ちは分かるつもりよ」
アルバートが少し済まなそうに顔を伏せた所でベアトリクスが話しかけてくる
「ねぇ、リンって最初は冷たい印象だったのに今はそんな雰囲気微塵も感じられないけど…もしかして子供好きなの??顔は傷のせいでちょい怖いけど身体は母性に溢れてるもんねー?」
胸を鷲掴みしてきたベアトリクスの腕に手を添えると
「…なにするのよ?人が真面目に話してる時に。まぁでも子供は好きかな、でも子供から好かれたことはないのよね…なんでかはわからないけど」
ベアトリクスの腕を掴み捻り上げる
「いだだだだ!ごめん!ごめんって!私が悪かった、だからやめてー!」
手を離してやるとベアトリクスは
「冗談だったのにー、でも私が力で負けたのは久しぶりよ。リンはどんな鍛え方したのか知らないけどさー…一回本気で闘ってみたいわ…」
ベアトリクスから一瞬殺気を感じて体が反応するといつの間にかデザートイーグルに手を添えていた
「…ベアトリクス、殺気を飛ばすなら相手を考えたほうがいい。生きていたいのならね」
「…やっぱりリンは怖いわね。悪ふざけがすぎたかな、ごめんね」
「分かればいいのよ、私こそごめんなさい。よく言われるんだけど…私って闘ってるときは別人になるってさ、やっぱり戦場にいたら殺気に対して条件反射するのは癖になってるのよね」
後はおじいちゃんや両親との修行のせいだけど……
それからも竜の背に揺られながらアルバートや、ベアトリクスと色々な話をして過ごす
ちなみにガストロノフはずっと黙って下を向いていた(笑)




