第18話 リン、技を魅せる
あの後私は近くに倒れていたガストロノフを叩き起こしてから状況を教え、ベアトリクスを街の住人が集まっていた避難場所まで連れていき治療を受けていたアルバートと一緒に治療を施してもらってる間にガストロノフとまた街へ引き返した
ガストロノフと周囲を警戒しつつ歩きながらふと気になった事を聞いてみる
「ちょっと気になってたんだけどさ…アルフレッドって私が戦った時に感じたのは剣技とかもただ身体能力に任せて斬りつけてくるような感じだったし、魔法も喰らったけど吹き飛ばされて気絶しただけだったから、そこまで強いとは思えなかったんだけど…実際どうなの??」
「奴はアンデットになっていたから生前よりかなり実力は落ちてるはず、そもそもアンデットは生ける屍とも言われる通りその多くは自我など無いただの動く死体だ、だが奴は生前の記憶を完全に残していた、…体裁きは生前の動きだったが…」
「へぇ、じゃあ私が喰らった魔法は派手ではあったけどそこまで威力はなかったのかもね…私の故郷では魔法なんて無かったからまったく分からないのよね」
「魔法が無い、だと?そんな国があるのか?」
「えぇ、私の故郷…日本では魔法は無かったわ、その代わり科学や気功術なんかの技術とかはあったけど」
「ニホン?カガク?キコウ?少なくとも俺は聞いた事がないな」
そうでしょうね、そもそも世界が違うから知ってた方が驚きよ
「リンはなんの魔法を受けたのか覚えているか?」
ガストロノフの問いかけに私は
「たしか、『ボルカニックディストーション』とかって言ってたけど…」
「それは本当か?!そいつはアルフレッドが使う中でも最上級の攻撃力を持つ魔法だぞ?なんで生きてるんだ…?」
「さぁ?まぁ流石に喰らった瞬間意識を刈り取られたわ」
「なるほどな、となるとやはり奴は前程の実力は出せてないのかもしれん…普通は消し飛ぶレベルの魔法なんだが…それにアルフレッドが持っていた剣も解放すらしていなかったからな」
「解放?どうゆうこと?」
「アルフレッドの剣は宝具級の武器で…、む、知らないだと?しょうがないな」
ガストロノフが説明してくれた内容は
等級は大きく分けて7段階あり、現在確認されているのは下から『下級』『中級』『上級』『英雄級』『宝具級』『世界級』そして『アーティファクト級』となっている
ちなみに書物の中でしか確認されていない等級があり、それが『神話級』とのこと
「英雄級以上の物はなにしろ滅多に見つからないがたまに迷宮や遺跡などから発見されたりする、アルフレッドの持つ炎の魔剣『フレイムバンゲル』氷の魔剣『アイシクルエッジ』この2振りの場合、通常時は見た目が美しい業物といった程度なんだが使い手の魔力を消費し『剣気解放』を行う事で真の姿を現す魔剣なんだ」
「ただ使う必要が無かったのか、使えなかったのか…どっちにしても今は確かめようがないわね」
そうして話しているとある光景が視界に入ってくる
「あれは…民家に魔物が集まってるみたいね」
「逃げ遅れた住人がいるのかもしれん!蹴散らすぞ」
ガストロノフがそう言って剣を抜こうとするが
「待って、あの位なら私が片付けるわ。それに色々教えて貰ったから私もあなたに私の故郷の技をみせてあげる」
リンは15m位の位置に着くと刀の鞘を持ち、柄に手を添える
「なにを…」
ガストロノフが言いかけたその瞬間
「早坂流抜刀術、一之型…斬空閃!!」
リンの声と同時に刀からキィンと澄んだ音が響いた
ガストロノフは驚く、全く見えなかったがリンは目の前で刀を鞘から抜き放ち、尚且つ振り抜いた姿勢で止まっている。
「…振り抜いてもこの間合いでは当たらんだろう」
しかしガストロノフはさらに驚愕することになる
振り抜いた体勢からリンは手首を返しチィンと鍔鳴りを響かせて鞘に刀を納めると、群がっていた魔物に変化が訪れる
魔物の身体が斜めにずれていくと数瞬遅れて血飛沫が飛び散り、いつ斬られたのかも分からぬまま次々と絶命していった
「おぃおぃ、嘘だろ…?」
ガストロノフは驚きのあまり素の口調に戻っているのに気付かない
「これが私の故郷の技、まぁこちらで言うところのスキルの1つ《抜刀術》なんだけど、私程度じゃこの距離が限界ね…私の祖父に比べると威力、距離のどちらも劣るわね」
「いやいや、こんな技使う奴初めて見たぞ!?リンの故郷は凄まじいな…やばすぎる…」
「皆が使える訳じゃないけどね、てかあなたキャラ変わってない?」
リンが怪訝そうな表情でガストロノフを見ると
「……さて、生存者を救出せねば!行くぞ、リン」
ガストロノフはサクッと誤魔化して走り出す
「まぁ、いいけどね」
リンは苦笑しながらガストロノフの後に付いていった………




