第14話 それぞれの状況
気が付くとそこはどこかの民家の中だった。民家の壁を突き破ってここで止まったみたいね…目の前の壁は人形で穴が空いていた
…マンガか…私…
「……それにしても魔法ってとんでもないわね、私も覚えようかしら」
起き上がろうと腕に力を込めたら左腕に激痛が走る。
「さっき掴まれた時ね…折れてはいないみたいだけど…」
握ったり開いたりしてみるが痛いだけでちゃんと動く事に安堵した。
しかしあれだけ至近距離で凄そうな魔法を打ち込まれた割には大した怪我はしてないみたいね。
立ち上がって周りを見渡すと壁に村雨が突き刺さっていたので引き抜くとこちらも傷一つついてなかった。
「あれって意外と威力は低かったのかしら?…でもそれにしては結構吹き飛ばされたな」
民家から出ると私は元の場所へ戻るべく歩き出す。
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「なんだ?さっきの爆発は…?」
ガストロノフが街の中を走っている途中で遠くの方から凄まじい爆発音が聞こえてきた。
「あっちは確か…リンが向かったほうだったな」
まさか…リンになにかあったのか?そう思ったが合図も上がってない以上はまず自分の受け持った区画を優先するしかない。
それに彼女は実力こそ見た訳じゃないから計りかねるが同じSSランクだ、アルフレッドに出会わない限りそうそう負けることはないだろう。
だがもしも、アルフレッドと遭遇しているとしたら…今すぐに向かわねば間に合わないかもしれない。
「やはり行って確かめるか……いや、だが…」
そうしてガストロノフはその場で考えこむのだがその内容は…仲間のピンチに駆けつける俺……格好いいだろうか?だが…リンのあの服装を見てしまうと身動きが…だがしかし!見たいのだ、俺は…!あの白い肌、よくわからんが体のラインが強調されるあの下着のような服の下にあるたわわに実った………
一人街の中で悶絶している彼には魔物も近寄れない。
ガストロノフ……本名ラルフ=コトルノス18歳…普段は冷静でクールなガストロノフを演じているが思考は青春真っ盛りの青年だった。
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その同時刻…ベアトリクスは……
「あー!鬱陶しい!次から次に!どんだけ魔物が入り込んでるのよ!」
いたる場所から魔物が飛び出してくる度に手に持った大剣を振り回して魔物を叩き伏せていたベアトリクスは苛ついていた
「来るならいっぺんに来なさいよ!」
またベアトリクスの前にゴブリンが躍り出てくるが…
「邪魔!」
彼女の大剣で真っ二つにされる。
「さっきからゴブリンとオークしか出てこないじゃない!あいつら気持ち悪いから戦いたくないのに」
そう、彼女が苛ついている一番の原因はゴブリンとオークにあった。
ゴブリンとオークに共通していること…それは他種族の雌を繁殖相手にするしか繁殖出来ない点である。
今彼女が斬り伏せたゴブリンもイチモツがアレな状態で飛び出し、真っ二つになったあとには臓物と白濁液をぶちまけている。
「くさっ!?…ほんと最悪!奴らをこの世から絶滅させる方法はないかしら?あるなら今すぐにでも実行するのに」
ベアトリクスはため息をつきながらまた現れたゴブリンを斬る。
「このぶんだと、リンの方も大変かもね…」
リンの場合も同じだったが、彼女は全て無視して見なかったことにしていた。
それからも相変わらずゴブリンとオークばかり倒していると北の方角で凄まじい発光と爆発、数瞬遅れて衝撃が襲ってきた。
「今のは…雷属性の高位魔法じゃないの!まさか…アルフレッドが…?」
吹き飛んでくる瓦礫を剣で弾きながら爆発が起きた方角へと目を向ける。
「あっちはリンが向かった方角だったわね…アルバートもガストロノフもあれには気づいているはずだし…」
四人で戦っても勝ちを拾える確率は低いけど、仲間を見殺しにするくらいなら戦って死んだ方がマシね。
「リン、私が行くまで粘りなさいよ……!」
ベアトリクスは爆発の方角へ走り出した。
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アルバートもまた爆発が巻き起こった時点でアルフレッドと誰かが戦闘していると気付いた。
「む、あれは…!バハムートよ、ワシをあの場所へ連れていってくれ!」
背中のアルバートからそう声をかけられる。
『解った、我はどうする?共に戦うか?』
「いや、引き続き今集めている街の住人を他の冒険者と一緒に安全な場所へ護衛するのを手伝ってくれんか?」
『了解した』
バハムートは頷くと爆発が起きた場所へ向けて降下してゆく。
「後は頼む…長い付き合いじゃったがこれまでかもしれぬな」
バハムートの背中を一撫でするアルバートにバハムートは呆れた声を出す。
『ふん、死ぬ前みたいなことを言うなアルバート、情けないぞ』
「奴は確実に前より強いじゃろう…ワシももう老骨の身じゃて、勝てるとは思っとらんよ」
だが、相討ちくらいには持ち込まねば若い奴らを死なせる訳にいかんからな。
「それにな、アルフレッドがああなってしまったのはすべてギルドと王国のせいじゃ。わしにも責任がある」
『…もしかすると全てひっくり返すかもしれんぞ?あの珍妙な小娘がな』
話している間に地上が近付いてくる。
「珍妙な…リンの事かの?お前さんが他人に肩入れするのも珍しい。彼女はそんなに強いかね?」
バハムートは少しの沈黙ののち口を開いた。
『………あの小娘は主の全盛期が比較にならんレベルだな、なにを考えているのかは知らんが今まで表に出てこなかったのが不思議なくらいだ…初めてだぞ、我が恐怖を抱いたのは』
「お前さんがそこまで言うとはのぅ…だが、どうなるかはわからんよ。どちらにしろ全力で相対するのみじゃ!」
そうしてアルバートはバハムートの背中から飛び降りて行ったのだった。
『死ぬなよ…アルバート』




