第120話
「……とりあえずソフィに任せるしかなさそうですね」
あれから自分の屋敷へと戻ってきたサラ達…
「奥様、まだご無理は…」
「セリア、私は大丈夫です。大した怪我ではありません…しかしニビルとベティは…」
実際はサラもあまり状態は良くないが…それを表に出さずにいるのは軍を率いる者として必須の技能だ。率いる者が弱みを見せればそれが原因で敗北することもある。
「サラ、少し良いかい?」
扉をノックして入ってきたライリーにええ、大丈夫ですよ、と言って立ち上がると…
「サラよ、これはまた手酷くやられたな」
ライリーの後ろから現れたのは着流しを纏い…腰には2本の刀を提げたソフィアの夫にして修羅のサムライ…
「シリュウ!あなたが何故ここに??」
「ちと野暮用でな。同郷の志から頼まれていた仕事を片付ける為に来たのだが…少し前に強大かつ面妖な気配を感じて駆けつけたらもう終わってしもうていた」
誠に残念。と言うシリュウ
「ああ、それと…この人相書の人物を見かけたら教えてくれぬか?修羅から手配されている者なのだ」
渡された紙に目を通す…
桜間桔梗。この者は国宝”止水“を盗み、逃亡の最中13人を斬り伏せた後国外へ逃亡せり…速やかに国宝を回収し捕縛、または斬首せよ。
「其奴は女子なれど剣の腕のみならず槍術も極めた者でな…昔指導した故に知っておったがまさかこの様な大罪を仕出かすとは…」
人相書きには儚そうに見える女性が描かれていてとてもそんな事をするような人物には見えないが…
「何故この方はそんな事を…」
「思い当たる節はある、キキョウは…自ら仇を探したかったのだろうよ。其奴に剣を教えた師…伊丹龍蔵と共に消えたドラゴンをな」
「それは…確か修羅戦争で最も多く敵を斬った、と言われているあのリュウゾウですか??」
彼が刀を抜けば周りの兵士が斬られたのを理解出来ないまま絶命し、血と臓物の雨を降らせると恐れられた剣豪…帝国ではリュウゾウが現れると死を運ぶ風が吹く、とまで言われている。
「うむ。俺も昔は世話になった恩人だ。この口調も彼を真似ていたらいつの間にか染み付いていた」
シリュウ曰くそのリュウゾウは襲われていた子供を助ける為にドラゴンと戦い…空間の裂け目へと吸い込まれて消えた。
その後彼が帰って来ることは無く…今も彼の妻アリアは彼の無事を祈り続けている、と。
「今回俺がここへとやってきたのはそのキキョウが目撃されたからなのだ。奴は端からドラゴンを襲っているらしくてな」
『それなら知ってるよ!ママがくれた紙に書いてたから!』
庭の窓から覗き込んでいたシルフィがそう言って紙を渡してきたのでサラが受け取る。
「…危険指定最新版??……何ですかこれは!この私が何故ソフィに負けているのです!!」
「サラ……それはどうでも良いでしょう。それより…ああ、この部分ですね。キキョウという名前が確かに書かれています」
「ふむ……何故俺の名が載っていないのだ!」
『だってシリュウは無闇に襲わないんでしょ?ママが言ってたよ、それに書かれてるのは私達にとって”危険“な人だけだってさ。私にはサラもソフィアも優しいからそんなことないと思うけどね』
そう言ったシルフィをサラが撫でる。
『それより…ブレアルードが一緒にいた人間?が一番怖かったよ!噛みついたのに気にもしてなかったし…ニビルも…』
「…確かにね。私もあんな存在はロイズ以来です」
教国の騎士ロイズ…かつてソフィから右腕を奪った不死の化物…
「いや、今回戦った彼女は…ロイズとは違った恐ろしさを感じましたよ。彼は一応急所とされる部分はしっかりと防御していましたが…彼女は違います。首を斬り落としても、全身を焼き尽くしても…全く堪えた気配がありませんでしたし…その程度では死なないのを理解していてワザと攻撃を受けている節があったので」
更にはジンが聖属性を纏わせた剣で攻撃しても変わりは無かった。
つまり彼女はアンデッドでも無いということだ。
「彼女があの時本気で殺すつもりだったなら私達は今頃ここには居ないでしょう。それにしても何故ニビルを…?私達はともかくとしてニビルだけは本気で殺すつもりだった様ですが…」
『私が悪いの!あの時逃げよう、なんて言ったから…ちゃんと大丈夫?って言いに行ってたら…』
シルフィの話を聞いた後サラはジンさんを呼んできて頂戴、と控えていたメイドに指示する。
「不運な事故に勘違い…それらが合わさって偶然この様な状況になるとは…最悪よ」
彼女が頑なにニビルを襲った理由…ニビル達が避けた槍が彼女らに直撃、そのライン上にいたニビル達が一旦離れようとしたら…それはニビル達がやったとしか思われないでしょうね。
そして私達はそのニビルの仲間…直接的な恨みは無いが先に攻撃を仕掛けたのは私達だ…ニビルを助けるには仕方なかったとはいっても逆の立場なら私でも同じ様に敵対しただろう。
「失礼します、ジン様をお連れしました」
「呼ばれてると聞きましたが…まだニビルさんとベアトは治療が終ってなくて…申し訳ない」
「いえ…あなたがいなければ私達は皆こうして生きていなかったでしょう。それで…ジン、あなた何か彼女について知ってるのですか?最後…私は意識が薄れる中で…確かにあなたと彼女が何か話していた、と思うのですが?」
「それは…」
「あなたが自分の素性を語りたくないのは分かりますが…そうも言ってはいられない状況ではないですか?」
「…………もうとっくにお役御免になったからあまり言いたくなかったんだが…確かに俺は昔ティレニス公国に召喚された異世界人だ。そして戦った彼女も俺と同じ世界から来たんだと思う」
「やはりそうですか。貴方は覚えていないかもしれないですが私はあなたと面識があったのですよ?ただ…それにしては年齢などが一致しないので確信は出来なかったですけれど。…ジンと同じならばあの能力は…やはりギフト、ということですか?」
「恐らく。ただ…絶対にそうだ、とは断言出来ない。彼女の言葉の端々から昔からそうだった、と取れる言い方が多かったからな」
実際どうかは分からないが…
「それと…レンは多分無事だ。彼女の正体が俺の予想通りなら…だが」
「何か心当たりが??」
「俺の予想が正しいなら彼女はハヤサカさんの姉ではないかと」
「身内、ということですか??」
頷くジン。
「ハヤサカさん…レンの母親と似た動きと雰囲気を感じましたし…彼女は確かに“あの子”と言っていた。レンを拐ったのも敵として現れた中に血縁者の持ち物を抱えたそっくりな子供が…となればいきなり本気になって拐った…いや、連れ出したとすれば頷ける」
分かるが…出来れば対話で解決して欲しかった、とは思う。
「なるほど…命を脅かされる可能性は低いかもしれない訳ですか。ただ確定で無いのならば私達が取るべき行動は変わりません…準備が終り次第火竜の巣へ行きますよ」
「俺も連れていけ。…シルフィが見た槍…シルフィとそのブレアルードを狙った物だとしたら…キキョウが放った物だろう、ならば仕留め損なった火竜を狙って奴も姿を現すやも知れん」
『ブレアルードのとこに行くの?なら一応言うけど…絶対に敵対しちゃ駄目な人が一緒にいるから気をつけてね?』
「…火竜とあの女以外にも誰かいるのですか?」
『うん…リーニアが居るんだよ』
「リーニア?それは…?」
『リーニアは魔族だよ。昔ブレアルードの巣にママと遊びに行ったとき遊んでくれた人!ブレアルードとママが一緒に戦ってもリーニアには勝てないって言ってた!』
「上位竜2体を相手にして勝つ魔族と不死の女…そして魔炎竜…普通なら絶対に遠慮したいな」
『リーニアは怒らせなかったら優しいよ?怒ったら怖いけど…』
「出来るだけ穏便にいこう。戦わずに済むならそれに越したことはないさ」
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「カディス!!全速前進!!」
「あ、アイサー!!」
姉御がこんなに慌てるのは珍しいが…一体どうしたんだ??
「姉御、俺達は何処に向かってるんで?」
「魔族領よ、確か…ラスベルク火山だったかしら?」
「ラスベルク火山?……って”火竜の巣“ですかい!?」
「そうらしいわね…どれくらいで到着する?」
「こっからなら最短5日て所ですかね。ただ途中で大型の魔獣どもが縄張りにしてる海域を突っ切らないといけねぇんで最悪の場合大量の魔獣に襲われる可能性が…」
「問題ない、邪魔する奴は全部私が叩き斬る」
リンが腰に提げた刀をクイッと上げて見せる。
「そいつは…修羅の奴等が使う剣ですね?いつの間に手に入れたんで?」
「フィリアから託された刀よ。銘は”建御雷神“っていうらしいわ」
そう言って抜き払った建御雷神は村雨よりも少し刀身が長く幅が広い刃に映るは美しい薄紫の波紋…
リンがヒュンッと風斬り音を響かせて振り抜くと弧を描きながら紫電が刀身の軌跡をなぞる。
「こいつは…なるほど、世界中の剣士が探し求めるのも頷けますね」
「確かに凄い業物だとは思うけど…そんなに?」
「姉御…そいつが本物なら…売れば国1つは余裕で買える位の値がつく…いや値段なんざつけられねぇでしょうよ。それくらい有名な代物ですぜ?」
「まぁ手放すつもりなんてないからどうでも良いけどね。フィリアも大切な友達に貰ったんだって言っていたからね」
「それが良いと思いますぜ。騎士が自分の武器を託すってのは命を預けたのと同じですからね」
それから暫く…慌ただしく駆け回るスケルトン達を眺めているリンの表情が暗いのは何故か聞こうとしたカディスにリンが口を開く。
「ねぇカディス、あんた達はいつでも故郷に帰って眠る事が出来る…いつまでも私に付き合わなくても…」
「姉御、俺達は好きで姉御についていくんでさ。どうせもう一回死んだ身ですぜ?寿命もねぇ、死ぬこともねぇ…これは姉御が俺達を救ってくれたからだ。その姉御と一緒に行けるならそれ以上はねえってもんさ」
「そっか…ならもう何も言わないわ。私についてくるって大変な目にしか合わないと思うけど…精々置いてかれないようについてきなさいよね」
「勿論、俺達の身が滅ぶその時までお供しますよ」
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それから2日……リン達は食堂に集まってテーブルに広げていた地図と睨みあっていた。
「ヤバいわ」
「ふむ…不味いな」
「ピンチですぜ」
「………」
何故リン達がこんな事をしているかというと…
「まさか数十年に1度あるかないかと言われる”アクアストリーム”が発生するとは…折角遠回りしてまで海魔の縄張りを避けてきたのだがなぁ」
アクアストリーム…この海域で稀に起きる自然現象で海底火山が噴火し、その影響で一時的に海流が激しく乱れてしまう現象…しかしただそれだけならあまり問題はない。
「この近辺は海底火山だらけでして…1つが噴火すると大抵別の火山も噴火しやがるんでさぁ」
勿論海底火山が噴火してもよっぽど運が悪くなければ影響はないが、今回のアクアストリームだけは普通とは違う。
「さっきソフィアが説明してたけど…本当なの?」
「ああ、事実だ。帝国の記録にも残っているからな…ごく稀に起きる特殊なアクアストリームに巻き込まれると…空へ打ち上げられる」
「空へって…ちょっと浮く、とかではなく?」
「文字通りの意味だ。何故そうなるかは未だに解明されていないが…昔巻き込まれた船がかなり離れた街の近くに落ちてきたという報告もある」
「そんなのに巻き込まれたらひとたまりも無いよねぇ」
「俺達海賊の中では度胸がある奴が空に浮かぶ遺跡に行けるってんで狙って巻き込まれていた奴もいましたぜ?ま、そいつらは帰っちゃきませんでしたがね」
「遺跡ねぇ…そういや前に読んだ本にそんな話があったような」
「カルネの冒険記だろう。…そういえば冒険記に出てくる島が近くにあるんではないか?」
地図を見たソフィアがある場所を指差す。
「ここだな」
意外と近い、となれば…どのみち下手に動けない以上補給もしないとだし…
「姉御達に必要な物資を調達する必要があるんで俺はその島に行ってみても良いんじゃねえかと。どうせアクアストリームが収まるまでの数日間はこっから先に進めねえ…姉御が急ぎたい気持ちは分かりやす、ただ…」
「大丈夫よカディス、私も補給に寄った方が良いんじゃないかと考えてたから」
レンは心配だが話からして命に危険は無さそうだし…不死身の女性が何者かは気になるけど下手に焦って進んで皆を巻き込んで死んだ、なんてなれば目も当てられない。
「その島に行くわ。見張りの連中に伝えて、少しでも海面に怪しい兆候があればすぐに知らせるように」
頷いてカディスが食堂から出ていく。
「全力で突破する!と言いそうなものだったが…よかったのか?」
「良いわよ。無理に急いだ時に限って良くない結果になるって経験があるから」
実際もう物資に余裕がないのも事実だ。元々私とロッシが使う分には充分以上に積んでいたが破損して物資が心許ないミレディに分けたし、ソフィアの分もそう大した量ではないとはいえ消費は予定よりかなり早い。
「…驚いた。キミは私と同じで前線で戦って引っ張るタイプだと思っていたのだが…」
「どいつもこいつも…何で私の事を脳筋で戦うのが大好きバトルジャンキーにしたがるのよ…これでも元々は部隊を率いてたのに」
「そうなのか?ふむ…」
話を聞いたソフィアが何故か考え込む。
「なぁリン、少し頼みが…「断る」いや、話を聞いてからでも良いだろう!?」
「………何よ?」
「今度我が騎士団と四大侯爵家の1つが模擬戦争を行わなければならないのだが…ルール上私は出られないのさ。だから代わりに指揮官として…」
「嫌よ、帝国に行くかも決まってないのに引き受けたら結果的に行く羽目になるじゃないの!大体部隊にあんたが居なくてもその補佐役がいるでしょうが。ソイツにやらせたら良いでしょ?」
「それが…居なくてなぁ。いや…いるには居たんだが…産休だ」
「いやいや…部隊として雑すぎない?」
「そうは言うが…私の主戦力は海兵だ。陸の方も鍛えてはいるが…正直私が居ない時間の方が長くてな。かといってシリュウに見て貰うと帰ってきた時には人員が半分以上居なくなった事が前にあって以来任せる訳にいかんのだ」
「知らないわよ…だとしてもいきなり現れた奴が指揮官です、なんて言われても誰も納得なんてしないでしょうが!」
「む…確かに…いや、そこは叩きのめして実力を示せば良いのでは?」
「何でそんな面倒な事しなきゃ…」
「あーイタタタタ!急に腕が痛みだした!うッ!右足も…痛みが…」
この女…っ!!
「アテテ…リン達の為に戦ったのに帰ったら私はこんな身体に鞭打って仕事をしないといけないのか…」
「…………分かったわよ!やればいいんでしょ!但し皇帝とかには会わないからね?!呼び出されても無視して帰るから!分かった?!」
「充分だ、流石リン。引き受けてくれると…」
「ええ、任せなさいッ!!!」
返事と共にソフィアの折れた腕に思いっきりタッチしたリン。
「!!?!?」
声にならない悲鳴を上げたソフィアを背にリンは言う。
「貸し借りは今のタッチ、それで無し。模擬戦争はちゃんと引き受けるからさっさと怪我を治しなさいよ」
手をヒラヒラさせながら部屋を出たリン…残されたのはソフィアと今まで黙っていたロッシの二人…
「一度裏切った俺が言うのもおかしいが…リンを裏切らないで欲しい、彼女は仲間と認識した相手には優しいのが俺は身に染みて分かった」
「ふっ…言われずとも分かっているさ。なに、打算はあるが裏は無い。彼女を裏切る様な行為は一切しない、じゃなければこの船を始め厄介な奴等を纏めて敵にしかねんからな」
関わってみるとそんな風に見えないがリンの支配下にあるスケルトン達全員が確かな強さを誇っている上に忘れそうになるがこれは幽霊船だ。戦う分には補給の必要もない、本気なら風向きを無視して航行し、休まず戦闘を行える船…それを率いるリンがソフィアクラスじゃないと対峙するのも不可能と。
「キミは戦って船を沈められたのなら分かるだろう?どれだけ理不尽な存在か」
「確かにな。船乗りにとって最悪な敵、っていうのは同意する」
「だろう?そんな相手をわざわざ敵にするような真似はせんよ…そんな奴がいたとしたら余程自信があるか…もしくは只の大馬鹿者だ」
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カチャ…カチャ…………カキッ……
部屋の中に響く金属の音…
「ランスさん…本当にやるんですか?」
「ああ、一応契約は契約だからな」
分解していたライフルを組み立てながら頷くランス。
元フラムベルク隊のメンバーであり最古参のランスと一番最後に部隊へと入隊した爆発物担当の光輝…
二人はリンの情報を求めて2年…世界を旅をしてきた。
元々は他のメンバーも居たが1人、また1人とこの世界で生きる決意をして離脱していった結果…残ったのはランスと光輝だけだった。
2人が今回ここ…サフィール海賊団の船にいるのはリンの情報を知っているというサフィールと神の方舟という代物を手に入れる手伝いをする、そしてその報酬として情報を受け取る、そういう契約を結んだ。
「いくら隊長を探す為とはいえ島民を襲撃などしたら…隊長に顔向け出来ませんよ!」
たださえリンはそういう理不尽な行為はしないと言っていたのだから。
「別に誰も傷つけるつもりなんざねぇ。俺達がやることはアイツらが神の方舟って呼ばれるもんを手に入れるまで島民を護衛すんだよ」
「島民から反撃を受ける可能性も…そうなる前にコイツらを制圧したほうが…」
「情報を手に入れるまでは我慢しろって。大体な…神の方舟とか言っちゃいるが実際何なのかも分からねぇ…それが使えるなら御の字だがよ、使えなきゃ俺達はこの島に足止めされちまうだろうが」
「それこそ…この船を確保すれば…」
「確保して、その後は?船員全部を俺とお前2人で監視出来るか?出来ねぇだろ。んな事すりゃ早晩寝首を掻かれて魚のエサだ」
帆船は大きさに比例して人員が必要になる以上下手に乗っ取った所で意味は無い。
「…分かりました」
納得したのか光輝も向かい側のベッドへと座って自身の装備の点検を始める。
「弾薬も結構減りましたね。こんな世界じゃ弾薬の補給なんて出来ないでしょうし…」
「無理だろうな。だが別に構わねぇさ…どうせ補充するアテが無いならさっさと使い切って破棄したら良い。いつまでもこんなもん大事に持ってた所で余計なトラブルを招くだけだろ」
「確かに…今までもかなり面倒な奴等がいましたね。どっかの貴族とか…王だとか…やれその宝具を売れだの、国に献上しろだのと偉そうに要求してくるのは本当に頭にきましたよ」
「ははは!確かにな!何度殴ろうかと思ったか…」
「いえ、ランスさんは殴ってましたよ。それはもうしっかりと」
「んな細けぇこた忘れたぜ、それに…同じ事があったらお嬢も殴ってるだろ?」
「それは…確かに!隊長なら殴る、間違いない」
お互いに笑っていると扉が乱暴にノックされる。
「お二人さん、仕事だ」
すぐに光輝が扉を開ける。
「仕事?到着にはまだ少し早いだろうがよ」
ランスの問いに海賊は島に近づく船がいると。
「とりあえず頭が呼んでるから来てくだせぇ」
「ああ…すぐに行く」
チッ…面倒な事になりそうだ。




