第119話
時は少し戻り…
『ねーニビル、そろそろ休みが欲しいぞ!』
「おう、そうだな…帰ったら休みにするか」
最近働きすぎた。サハラディールやソフィアが問題ばかり起こすせいでその尻拭いの為に行ったり来たり…いい加減疲れた。
竜騎士ニビル=ハイゼンとその相棒…”風竜シルフィ“はいつも問題貴族二人…学院からの腐れ縁であるサハラディールとソフィアが起こした騒動に巻き込まれ…それを解決していたらいつの間にか帝国4騎士に名を連ねる事になってしまった。
ただただ運が悪い…しかしそれに負けずに努力したら強くなっていた、それがニビルという男だ。
『やった!そろそろママから一回帰って来なさいって言われてたんだよね。ニビルも一緒に来る?』
「いや、お前の母親と俺が仲悪いって知ってるだろ…“ウチの娘を傷つけたら殺す!”とまで言われてるんだぞ?」
『そうだっけ?細かい事は気にしないからママも忘れてるんじゃない?』
「そんな緩いのはお前だけだ。お前の母親は本気で俺を殺す勢いだったから忘れたりする訳がない」
シルフィはまだ幼い…とは言っても数十年は生きてるから俺より歳上だ。
しかし竜からすればまだ子供…人間でいうやっと学院中等部に入る位か、それよりも下の年齢くらいでしかなく、母親の”風魔竜シルフィアーネ“が怒るのも理解できる。
端から見たら俺は自分のそれもまだ幼い子供を連れ回して遊び歩き家に帰さないクズ男、という事になる。
昔シルフィが帰って来ないと探しに来たシルフィアーネから出会い頭に殺されそうになったのは忘れもしない。
「大体お前がちゃんと説明してくれたらそんな事にならなかったんだ。”しばらく外でニビルと遊んでくるね!“なんて手紙を置いただけって知ってたら…」
昔…学院の実習中に怪我をしたシルフィを見つけ、たまたま持っていたポーションを使って治療したら次の日寮に押し掛けてきた。
”ガデス寮風竜襲撃事件“は俺達世代の学院卒業生の中でいまだに語られる位大騒動となり、俺が原因だと分かった皆が、主にソフィアが俺をロープで縛り、シルフィの前に差し出し…
“望みの品はくれてやる!だから暴れるなら寮ではなくグランドでやれ!”と。
それからずっと一緒にいる訳だが…やはりその内ちゃんと説明に行くしかないか。
『大丈夫、ママはああ言ってるけどそんなに怒ってないよ?本気で怒ってたらニビルはとっくに死んでるし』
「冗談…ではないよなぁ」
『本当だしね。ただ…そうなったらちゃんと一緒に戦うから安心してよ』
安心出来る要素がないぞ。考えるだけでも恐ろしい…俺だけ切り刻まれる未来しか見えねぇ。
それぐらい上位竜というのは恐ろしい存在で…かの有名な冒険者アルバートが”皇竜“を使役しているらしいが…シルフィ曰く”里の修行か家出“だそうだ。
竜には一生の内必ず達成しなければならない課題、というのが存在するらしい。
内容は竜各々違うみたいだが…シルフィの場合はまだ幼竜なので課題は知らない。
「まぁおまえの母親と会うのは前向きに検討する…だからシルフィ、約束通り俺が死ぬまで位は付き合ってくれよ」
『うん、いいよ!約束だしね!ニビルも約束守ってよ?“最高の宝を一緒に探す”最高の宝が何なのか分からないけど…ワクワクしたからニビルと一緒にいるんだし』
「分かってるさ。俺の一生を使って相応しい何かを探す」
『…期待してるね!』
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もうすぐサハラディールの領地か…久しぶりに挨拶でもしていくか?
『……ニビル、ちょっとヤバいかも?』
「どうした?」
『まだかなり後ろだけど…風が乱れてる。かなり大きい…?気配が読めないから分からないけど…とにかく後ろから気配を消してる何かが来るよ』
風竜の索敵範囲はかなり広いし正確だ。その索敵を誤魔化す事が出来る存在…
「まだ相手には気づかれていないのか?」
『うーん…多分。風の乱れ方が綺麗だから人が騎乗してるかもね、風圧から保護してる時の乱れ方だし…近づいてみる?』
「流石に危険じゃないか?」
『こんな飛び方するのって竜だけだから多分風竜じゃないとしても他の竜だよ。ハッキリ分かんないからニビルの判断に任せる~』
竜ならいきなり襲われる事はないか…
ニビルが近くに寄ろう、とシルフィに言って方向を変えた時…それは起こった。
ニビル達よりも遥か後方…先程まで進んでいた方角から高速で飛来した何か、をシルフィが察知して躱す。
『うひゃ!?』
「何だ?!」
すれ違い様に見えたのは…多分槍だった。
「どこから飛んできた!?」
『わたしの感知範囲外から!!ニビル!逃げよう!』
シルフィが慌てて反転する。
「いきなりターンするな!」
『ごめん!でも早く離れないと私達が攻撃したみたいになっちゃうよ!!』
「それはどういう事だ?!」
『さっきの槍!あれが後ろを飛んでた人達に当たったの!当たった瞬間隠蔽が解けたから分かったけど…あれブレアルードだよ!!』
馬鹿な!何故魔炎竜がこんな場所に?!…それより問題は位置関係的に俺達がやった、と思われた可能性があるって事か…最悪だ!
「逃げ切れるか?」
『ブレアルードと乗ってた人どっちも怪我したみたいだからすぐには追って来れないと思う』
「仕方ない、一旦逃げて犯人を捕まえれば誤解も解けるか…」
槍が飛んできた方角はちょうどサハラディール領の先にある山からだったがあそこは聖教国との国境付近…まさか教国…?
『槍が飛んできた方向に行くんだよね?』
「ああ、犯人を捕まえなければまずい」
シルフィが頷いて飛ぶ速度を更に上げた瞬間…ニビルの耳元で…
「何処に逃げると?」
冷たい響きを持った女性の声がして…
『ニビル!!』
無理矢理体勢を崩してニビルと女性を振り落としたシルフィが落下していく女性に噛みつく。
『ににるふぁひゃらへにゃい《ニビルはやらせない》』
「…一応ブレアさんの同族ですしあなたを殺すのはやめましょう」
女性が噛みつかれながらそう言ってシルフィの頭部を殴るとシルフィは意識を刈り取られて落ちていく。
シルフィから放り出されたニビルは落下しながらその光景を目の当たりにし…次の瞬間には目の前にその女性が現れ…
「っ!?」
女性が振り抜いたナイフを間一髪剣で払ったニビルは迫る地上を見てギリギリの高さで風の魔術を使い、落下速度を弱めて着地したが…女性と気絶したシルフィは地面に直撃して轟音を響かせた。
「シルフィ!!」
慌てて駆け寄ったニビルはシルフィが気絶しているだけで大した怪我をしていない、と分かって安心したが…背筋が凍る感覚がして振り向く。
「…なぜ生きてるんだ?本当に人間か…?」
土煙の中から現れた女性は怪我をした様子もなく手に持ったナイフをクルクルと回しながら笑う。
「あの程度では死にませんよ。…とはいえ今回は私の慢心が招いた事態ですね」
ユウコはどうせ死なないからと防御、回避、という基本的な事を疎かにしていた。
だからユウコが死なないと知っているブレアがまさかユウコを庇うと思わず、やろうと思えば防御することも撃ち落とす事も出来た…それをしなかった。
「…俺達じゃない。本当だ…!」
「もっとマシな言い訳をした方が長生き出来るかも知れないですよ?」
「クソ!なに言っても…どのみち殺すんだろ?なら俺も抵抗はさせてもらうぜ?」
ニビルが腰に提げた予備の剣を引き抜く。
「お好きなように。抵抗してもしなくても……」
ユウコがその整った顔に嗜虐的な笑みを浮かべてゆっくりと近づく。
「私を殺して生き残れるか…どうぞ好きなだけ試して良いですよ。だけど結末は…変わらないでしょうけどねぇ」
世界には様々な種族が存在している…人間、獣人、エルフ、ドワーフ、竜人、魔族…他にも細かく分ければキリがない位に。
種族毎の基礎身体能力というものが存在し…同じ様に鍛えたとしてもある一定の強さより先に進める者は多くない。
先に進めるのは並み以上の努力、技術の研鑽を重ねた者か…或いは天性の才能か…
そして…そのどちらも備えた者が世に言われる”強者”として名を馳せる事が多い。
ニビルは努力を惜しまず、修練を積み…その域まで自己を高めた。
しかしそれでも絶対に敵わない相手というのが存在するというのは知っていた…だがそれも自分の常識の範囲内での話だ。
「もっと速く斬らないと私を殺すことは出来ないですよ?」
何度も斬った、腕を斬り飛ばし、首を斬り落とし、心臓を抉り…あらゆる方法を試したが全て効果が無い。
化物…そんな表現しか出てこない程にこの女は圧倒的な不死で…強大な威圧感を放っていた。
「なぁ、頼むから話を聞いてくれ。あの槍は俺達よりも遥か後方から飛来したんだ!」
「そうですか」
目の前に居た筈の女が突然地面に溶けるように消え去りニビルの背後から現れてニビルの腕を捻りあげる。
「それが本当だとしても…逃げようとしたでしょう?だから信用出来ない」
耳元でそう囁いた女が一気にニビルの心臓目掛けてナイフを突き立てようと動いた時…2人を爆炎が包む。
燃えながらでもニビルに数回ナイフを突き刺して捨てた女が邪魔をした人物がいる方を向いて口を開く。
「邪魔をしないで欲しかったんですが…何者ですか?」
「ニビルは私の同僚ですから襲われていたら助けるのが当たり前でしょう?」
燃える様な赤い髪をかき上げながらそう言ったのは帝国でも最高の火力を誇る魔術師…サハラディール=シュバイツァー。
「…同僚ですか。この男以外特に興味は無いのですが…少し待って下さいね?もう終わ……”フレイムカラム“」
話の途中で指を鳴らしたサラが唱えた魔術が発生させた巨大な火柱がユウコを焼き尽くす。
断末魔の叫びを上げながら炎に包まれたのを見てサラの後ろから飛び出したジンが倒れたニビルを回収して下がる。
「これは…酷いな。だがまだ間に合う!」
的確に肋骨を避けて刺された傷を見たジンが治癒術を使ってニビルの治療を始めたが何故か治癒の効き目が悪く、死なない様にする位にしか効果がない。
「サハラディールさん、治癒に時間が掛かりそうだ。早めにあなたの屋敷へ…」
「……ヒド…イジャナイ……」
サラが驚いて声の方を向くと黒焦げになって這いずっているユウコ。
「チッ!まだ生きて…!?」
直ぐにサラがまたフレイムカラムで焼くが…とうとう立ち上がってサラを見据え…ユウコの全身を紅い霧が包み込む。
「ゴホッ!……ア…アぁ……あ……ふぅ。久しぶりに死ぬかと…」
次の瞬間には元通りになっていたユウコだったが…全裸だったので手を叩くと深紅のドレスを身に纏う。
「あの服…お気に入りだったんですけどねぇ…まぁたまには昔の服を引っ張り出すのも悪くはないでしょう」
言いながらドレスをチェックしているユウコに油断なく視線を向けながらサラが魔術を構築しようとしたが…
「ああ、それはやめて下さいね?”カースネイル“」
ユウコが腕を振るとサラの真下から紅の爪が突き出し、サラの左腕を貫く。
「ッ!?舐めるな!化物が!焼き尽くせ!“フレアストーム”」
激しい痛みが襲いかかるがサラも今まで戦場を駆け抜けてきた魔術師…そのまま構築していた魔術を完成させて発動させた。
サラが放った魔術がユウコを包み、また全身を焼かれたユウコがそれでもなお笑ってサラに迫る。
「ア…ハハ…こノ感カク……」
「不死身かッ…!?」
サラが貫かれた腕を抑えながら目の前の光景に舌打ちする間にユウコの身体が霧散しまた現れたときにはもう元の状態へと戻っていた。
「…さぁ、あとは何を出来ますか?奥義?大魔法?全てをぶつけて構いませんよ?…あなた達では私を殺すには足りませ…」
「「喰らえ!!」」
ユウコが喋っている途中で追い付いたベアトの大剣と、ニビルを治療していたジンの剣が別々の方向からユウコを貫き…そのまま両断、ベアトが大剣の能力でユウコの上半身を燃やし、不死性を見たジンが聖属性を付与した剣で下半身をバラバラに切り刻む。
「お母様!!無事ですか?!」
「ベティ!!最後まで油断するな!」
腕を抑えて片膝をついたサラに駆け寄ったベアトをサラが鋭く制する。
「まだまだですねぇ…”影槍“」
ベアトの耳元で囁くユウコ…そして後ろから迫っていたジンに影から飛び出した槍が、ベアトには手に持ったナイフを脇腹に突き刺して離れる。
追い付いてきた馬車から降りたライリーがその光景を見て叫ぶ。
「サラ!?ベティ!!」
「…あなたはベティとレンを連れて逃げて…アレは…誰かを守りながら勝てる相手じゃない。ジンさん!貴方もニビルを連れて行きなさい!ここは私が…」
「どうぞ逃げてください、但しその男は…?!」
言いかけたユウコが馬車の方を見た途端…黙ったのを不審に思ったサラが動くより速く、馬車へと近寄ったユウコが馬車の中を確認して……
「……見つけた」
見間違える筈もない…何故かリンに似た子供が驚いた表情でこちらを見ていて“誰…?”と言うがそれよりも重要な物を子供が大事そうに抱えていた。
「少しだけ眠ってくださいね」
ユウコがレンに手をかざすと眠ってしまったレン。
「その子供から離れなさい!!」
サラとジン、ライリー、ベアトリクスがすぐに動く。
「本当ならその男を殺して終わりだったんですが…状況が変わりました」
馬車から降りたユウコがまず標的にしたのはサラで彼女が魔術を唱える前に肉薄して顎に拳を叩き込み、怯んだ所へナイフを振り抜き喉を斬って詠唱を潰した。
「まず1人」
それを見たベアトリクスが激昂しながら大剣でユウコに斬りかかったがそれを影から伸ばした腕が止めた瞬間ベアトの顔面を掴んで地面へと叩きつけて沈黙させる。
「2人」
妻と娘を倒されたライリーが剣を走らせユウコの首を斬り裂いたがユウコは平然と地面に落ちる途中だった首を受け止めて首へと戻し、剣を振り抜いた姿勢でがら空きの胴に強烈な蹴りを入れて弾きとばし…
「3人目…後はあなたですが……」
ジンを視界に入れたユウコが少しだけ躊躇したのを見逃さずに駆け出すジン。
「アンタ…吸血鬼みたいな技を使うんだな…!」
一瞬だけ驚いた表情をしたユウコだったが…すぐに納得した様に笑う。
「ああ、なるほど…」
「…?」
ジンが繰り出す斬撃をナイフで弾きながら不敵に笑うユウコを見てジンには何故か既視感が芽生えた。
何だ…これは…
「一つ聞きますけど…いつからこちらの世界に?」
「なに?!何でそれを…?」
「だってあなた…………日本人でしょう?」
振り上げた剣がピタリと止まり…ジンが驚いているのを見て続ける。
「自覚が無いのかも知れませんが…吸血鬼という発音がこの世界の人達とは違うんですよ」
それは間違いなく日本語の発音です、という目の前の女性…
「…治療が?すぐ戻るのでそのまま待機しておくように」
スッと腕を上げたユウコの影から黒い人影が出てきて馬車へと向かう。
「強引なのは分かってますがあなた方の素性が分からない以上…あの子に繋がるものは全て預かりますね?」
ユウコからすればいきなり攻撃してきた敵の仲間という事しか分からない以上簡単な解決方法だった。
「待て!レンを…」
動こうとしたジンだったが下半身が動かず倒れ込む。
見れば自分の影が地面に刺さった針の様な物で縫いつけられていた。
「それと…回復は途切れさせないという判断、素晴らしいですね。私を追って来ても構いませんが…お仲間は確実に死ぬと思いますよ」
ただ…そのお陰で全力を出せないならまだまだ足りない。
「同じ世界から来た同士なので今回はこの辺りでやめておきますが…そこの男が気が付いたら伝えて下さい“自分じゃないなら証明してみせろ“って。そうしたら解除してあげますから、と」
では…またと言って影からレンを受け取ったユウコが影の中に沈んで行くのを見送るしか出来ないジン。
「ちくしょう………ッ!!また俺は…!」
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「…ユウコ、あなた…それは流石に駄目だと思います」
「うむ、我もそう思うんだがの…」
「…つい」
「つい、で人の子を拐ってくる馬鹿がいますか!!貴女は何を考えて…」
ユウコを怒るリーニアとそれを頷きながら同意するブレア。
「でもこれには理由が…」
「でも、じゃないです!……こんな場所まで連れてきて…」
「こんな場所とは言い過ぎではないか?リーニアよ…一応我の巣なのだが…?」
「ブレアは黙ってて下さい!大体貴女も親ならば何故ユウコを止めなかったのですか!」
「え?いや…我は…のう?」
「………はぁ。何か問題を起こすのではないかと思ってはいましたが…まさか出ていって数日でここまでやらかすとは…流石に想像出来ませんでした」
疲れた表情で椅子に座ったリーニアが紅茶を飲みながらそれで?と聞くとユウコは説明する。
「実は…多分だけどこの子私の孫じゃないかと」
「…それは何か確信が?」
ユウコが頷いてドレスの胸元に手を突っ込んで何かを取り出す。
「あなたの胸はポケットですか…」
「それなら我にも出来るぞ?」
ブレアが自分の胸を押し上げながらそう言ったのをリーニアが睨み付ける。
別に自分の胸が小さいのではない。この2人が無駄に大きいだけなのよ…と下を見下ろして呟く。
「それが私の娘でリンっていうのだけど…似てるでしょ?」
確かに目の前で寝かされている子供と渡された絵姿に写った子供は似ているけれど…
「ユウコ…何故こんな絵姿を…?」
「え?唯一リンがおねしょした時の記念ですけど…何かおかしかったですか?」
絵姿の中で泣きながらベッドの濡れたマットレスと写る幼女を見てリーニアは首を振る。
可哀想に…こんな生き恥を残されて、更にそれを見ず知らずの他人に晒されてるこの方には同情しかない。
「それと…この2つ。刀の方からはリンの気配がしますし…こっちの銃はリンの物で間違いありません」
「それをこの子が大事そうに抱えていたのを見て確信した、と?」
頷くユウコ。
「では話を聞いてみたら良かったのでは??まず何故本人が居なかったのか…とか」
「それは無理だったのだろ?我々にいきなり攻撃してきた輩の仲間だったとユウコも言っていたし…なにより近くにはそ奴らの気配しか無かったからの」
「いくら死なないとはいってもずっとあんな威力の炎で焼かれ続けるのはしんどいですし。既に話を出来る状況ではなかったので諦めて倒しました」
本当の所はブレアの治療が終わったと従者から報告されたので一気に熱が冷め…一刻も早くゆっくり確かめたかったから一番簡単な方法を実行しただけだった。
ユウコからしてみれば家族より大事なものなどないし、それ以外がどうなろうが正直興味は無い。
「確認しますが…殺した訳じゃないのですよね?」
「多分死んでないと思います…一応回復出来そうな人を残したので」
「不安しかありませんが……様々な要素が絡んでこうなったのは分かりました…しかしその方達がここに乗り込んで来るとは考えなかったのですか?」
リーニアがそう言ってテーブルに置かれた刀を手に取ると何かを呟く。
「この武器には追跡魔術が掛かっていましたよ、2人とも気がつかなかったのですか?」
ブレアとユウコは顔を見合わせて首を振る。
「…もしその人達がここにやってきた場合…私が話をします。あなた達に任せるとロクな結果にならなそうなので」
最近出来た友人として守るリストに入っているブレアとフレイ、リーニアに危害が加われば殲滅するだけですが…としか考えていないユウコと人との対話なんて最近はリーニアとユウコ位しか話をしたことがないブレア…どちらに任せても良い方向には転がらないだろうとこめかみを抑えながら溜め息を吐くリーニア。
「リーニアさん、溜め息は幸せが逃げますよ?」
「あなた達のせいですよ?!」




