第9話 口の悪い奴同士は必ず喧嘩になるよね
次の日私はギルドへ向かう前に装備を整えようと武器屋の前に来ていた
店の中に入ると様々な武器が置いてあるが店内には誰もいないようだ
「すみません!誰か居ませんか?」
呼んでみたが返事がない。さて、どうしようかな?
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リンが武器屋に来ていた同時刻、街の騎士団詰所にて
「なぁ、クライス、お前の家に泊まってる女はどんなだ?」
ボルドが唐突にそんなことを言ってきた
「リンの事か?どんなと言われてもなぁ、不思議な女性だとしか言いようがないな。どこから来たのかも分からんが美人ではある」
「そうなのか?包帯だらけでわからんかったがそれなら見てみたいな、しかしどこから来たのか分からないだと?なんでだ?」
「正確には日本というところから来たらしいが、そんな所は聞いたことがないから分からないと言うことだ」
「なるほどな」
「だが、分かっていることもあるぞ」
「お?なんだ?」
「それはな、リンに喧嘩を売ってはいけないと言うことだ」
クライスがそういうとボルドは怪訝そうな顔で
「あ?どういうことだ??」
「まず、ワイバーンを単独討伐したのもだが、昨日ギルドに行った時に鉄拳を叩き潰したんだ」
それを聞いたボルドは
「なんだと!鉄拳っていやAクラスに近いBクラスだっただろ!それがあんな怪我した女に負けただと?どんな手をつかったんだ?」
「見ていた奴の話じゃ尻を触られたことに腹を立てたリンが鉄拳に罵声を浴びせたら鉄拳がぶちギレてリンに殴りかかったらしいが軽くあしらわれた挙げ句腕を折られたらしい」
「ありえねぇ」
「残念だが事実だ。しかも彼女は昨日登録したんだが…」
「……………彼女のランクはSSランクだ」
「はぁ!?それこそ冗談だろ?SSランクっていや、《灰塵》や《雷帝》《天剣》、奴等みたいな化物クラスと同ランクだってか?!」
「確認もしてるからな。間違いないぞ、だから絶対に喧嘩を売るなよ?」
「わ、分かった、そうするぜ」
さて、そろそろ巡回に出るか、しかしなにか忘れているような気がするが…………。
その頃街の中のある武具屋ではちょっとした騒動が勃発していた
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声が小さかったのかな?今度はもう少し大声で…
「すいませ「やかましい!!聞こえとるわい!叫ぶな!馬鹿もん!」
怒鳴りながら出てきたのは髭もじゃのちいさいオッサンだった。
てか、イラっときた。居ないから呼んだら怒鳴られるってなんて理不尽でしょ!
「いるならさっさと出てこい馬鹿野郎。」
あ、しまった。つい本音が口から漏れた
「なんじゃ!このくそ生意気な馬鹿アマは!礼儀もへったくれもない!こんな奴初めてじゃ!」
「お前もな!オッサン。客に怒鳴り散らすなんて馬鹿としかいいようがないんだけど!」
オッサンはどんどん顔が真っ赤になっていく
「かぁ~ッ!!こんのガキゃ、おまえみてぇな生意気な女には売るものはねぇ!さっさと家に帰って包丁でも握ってろぃ!」
「なんだァ?文句でもあんのか?」
オッサンは腕を組んで私を睨み付けてくるけど、身長差がありすぎた
私は屈んで目線を合わせて睨み返す
「どうしたら武器を売るの?ここ以外店を知らないから買いに来たのに」
「ふん、どーしてもってんなら自分の腕を証明してみろ!まぁお前のような小娘に扱えるようなもんはないがな。それで駄目なら大人しく帰りやがれィ」
「わかったわ、やってやろうじゃない」
そして二人は店の裏にある庭に来ている
庭にはフルプレートアーマーがカカシのように立ててある
「ほれ、こいつであれを斬ってみろ、扱えるかは知らんがな」
投げ渡されたのは普通の長剣だった。
鞘から引き抜くと刀身に自分の顔が映りこむくらいに磨かれている
「どうせ無理だろうがな」
いちいちムカツクおっさんね。でも腕は良いみたいね、この長剣、重心のバランスもとれているし、握りもしっくりくる。鞘の方も鋼で補強されているから攻撃や防御にも使えそうだ
私は一旦刀身を鞘に納めると目を閉じた。
あれくらいの鎧なら斬るのは簡単だ、だけどただ斬るのは面白くない。
そして一呼吸して目を見開くと、一息に鞘から刀身を抜き放ち片手で鎧の斜め下から上へ向かって振り抜く。その体勢からさらに体を捻り回転しながら真横に2撃目、最後に持っていた鞘を地面に突き立てると剣を両手で持ち鎧の頭部から真下へ打ち下ろした。
「……おい、鎧には傷一つ入ってねえぞ。駄目だな、さぁかえ…」
言い終わる前にリンは剣を振って逆手に持つと地面に突き立てた鞘に納めた。ガチンと剣が鞘に収まると同時に
キィンと澄んだ音がしたかと思うと鎧が音を立てて崩れ落ちた。
「これでどうかしら?まだ文句があるなら…」
「……………」
ん?まだ呆けてるみたいね…
「ねえ!聞いてるの?!」
「っは!お前さん一体なにをしたんじゃ??傷どころか鎧をぶった斬るとは思わんかったぞ!」
するとオッサンは頭を下げて
「すまんかった!ここまでの使い手の実力を見極められず散々文句を言ってしもうた…申し訳ない!」
「いや、私も言い過ぎたから。お互い様と言うことで終わりにしましょう?」
「そう言ってもらえると助かる。ワシはドワーフのバドじゃ、お前さんは?」
「私はリンよ、よろしく!」
それからは店内に戻って色々武器を見ていたんだけど、なかなかこれっていうものが見つからなかった
「リン、お前さんは普段得物はなにを使ってるんだ?」
バドじぃは私の隣であれでもない、これでもない、と武器を一緒に探してくれている
「普段はちょっと特殊な武器を使ってるのよ、目立つからあんまり使いたくなくてね、別に素手でも良いんだけどもしもの為にね」
そう質問に答えるとバドじぃは
「ほう、特殊な武器じゃと?どんな武器じゃ?」
さすがドワーフ、特殊な武器というところに興味を惹かれたらしい…まぁ教えても大丈夫かな
「バドじぃが誰にも喋らないなら見せてもいいわよ?」
「約束する、見た内容は誰にも喋らん。」
その言葉を聞いて私は手の中にデザートイーグルを呼び出す
「!お前さん、空間魔法が使えるのか!して、それが特殊な武器かの?」
デザートイーグルのセーフティを確認してバドじぃに手渡す
「そう、私の故郷では銃と呼ばれているわ、簡単に言えば弓がかなり発展したようなものよ。それは矢のかわりに鉛玉を撃ち出すんだけどね」
って、聞いてないし。手にもった瞬間にあれやこれと眺めたり撫でたり色々やってるし
「これは、このサイズでこの重さといい、どうやったら鉄をこのような形に出来るんじゃ!?これを作った奴は間違いなく天才じゃ、これが弓の発展じゃと?こいつはどうやって使うんじゃ!?」
あ、話は聞いてたのね
「相手に向けてそこの引き金を引くだけよ。ただ間違ってもここで引いたら駄目だから!」
引き金を弄くっていたバドじぃに釘を刺すと結局また裏庭に行くことになった




