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昔、英雄やってました  作者: 福来 由良
片田舎の小さな事件
7/13

7.

村の女衆に混ざっての救護活動も無事に終え、家に帰ると姉上がまだ若干青い顔で夕食の用意を始めていた。まだ休んでいるように声をかけても、動いていた方が気が楽なんだと言われればそれ以上どうこう言えないし

さて俺は何をしてようかと考えて、予備の包帯を作ろうと古着を引っ張り出してきてベッドに座り、黙々と鋏を入れ始めた


広場で男衆の手当てをしている合間にオジさんとジジさまの話を盗み聞きしていたが、どうやら騎士団に討伐を依頼するらしい。冒険者に依頼を出すと報酬いかんでは誰も受けてくれない可能性があるからだ

怪我が軽く足の速い若者を選出し助けを求めに出発させていたが、騎士が常駐している町まで最低でも片道3日はかかる。となると、村に戻ってくるのは1週間かそれ以上先になる

それまでボアのヤツが森から出てこなければ良いんだが、勿論そんな保証は無いので村にある木材でバリケードを張り、オジさんが指揮をとって警戒を強めているところだ



「ん?」



窓の方から物音がした気がして、そちらに目を向けてみるが特に変わったところは見られない

気のせいかと包帯作りを再開させると、再びコンコンと言う音が聞こえた。今度は気のせいじゃない

作りかけの包帯と鋏を放り出し、ベッドから飛び降りて背伸びしながら窓の外を覗き込むと



「フリュー?」



何やら不機嫌そうに眉を寄せた隣人君が立っており、俺は慌てて鏡台前の椅子を窓際に運んでその上に立ち、窓を開けた



「どうかし「おい!チビたち見なかったか!?」

……見てませんが」



人の発言を遮るな。と思いつつも焦ったように怒鳴られた内容で用件は分かった



「家に帰ってないんですか?」

「ああ。村中見て回ったけどいないんだ」

「それは…」



今のこの村の状況でどこにもいないってのは問題じゃないか?



「オバさんは?」

「気づいてない。疲れて寝てることにして、ベッドに色々詰めてごまかしてきた」



まだ確信は無いしイタズラに心配かけるもんじゃないからそれは良いが、バレるのも時間の問題だな

とは言え双子のことをよく分かっているフリューゲルが村中探しても見つからず、警戒のためいたる所に大人たちがいるんだから誰かが見ていれば必ず注意してるはずだし、行方知れずとなればもっと大騒ぎになってる

と、言うことは、チビたちは村の中におらずかつそれに誰も気付いていないってワケか!



「フリューゲル!最後にあの子たちを見たのは!?」

「…オレが家に帰ったときにはまだ広場にいた」

「それはワタシも見ましたね…でもいつの間にかいなくなってて、皆の手当てが終わる頃にはもういませんでした」



オジさんの手当てをしていた時は2人とも近くにいたのをチラッと見かけた気がするが、ジジさまと話している時にはいなかったな

まだ救護活動も途中だったし、バリケードだったりの行動も開始する前でほとんどの村人が広場に集まっていたから、いくらでも隙があったはず



「まさか村の外に出たとか…」



いくら幼いからと言って、あの騒ぎで外に出て行くとは思えないし理由も無いはずなんだが…

そう思ってポツリと呟くと、弾かれたようにフリューゲルが走り出した



「ちょっ!」



咄嗟に窓枠に足をかけて飛び降りる

真っ直ぐ村の入り口に走るフリューゲルを追いかけながら呼び止めようと声を張るが、彼は足を止めずに怒鳴り返してきた



「フリューゲル!入り口は見張りの大人がいるし封鎖されてますよ!」

「森だ!」「はぁ!?」


「あいつら森に行ったんだ!父さんの剣を探しに!」

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