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昔、英雄やってました  作者: 福来 由良
プロローグ
2/13

2.現世

サラサラとした美しい金の髪

日に焼けることを知らぬような白磁の肌に薔薇色の頬

長い睫毛は髪と同色で、少し垂れた大きな桃色の瞳を縁取っている

まだやっと10歳を過ぎたばかりの幼さでありながら、万人がその美しさに振り返ることだろう少女

……が、鼻歌を歌いながら、鏡台の前に座らせた少女の髪を楽しそうに梳っている

自身と違う、父親譲りの濃茶の髪を緩く編んでおさげを作り、満足そうに微笑んで妹の肩に手を置いた


「はい、完成よユーディット。今日もかわいいわ」

「……………ありがとうごさいます、ねえさん」





どうも、ユーディットです。5歳です

平民なので姓はありません。ナバル村で生まれたので、ユーディット=ナバルと名乗ることもあります。500年ほど前に英雄やってました

……何を言っているんだと思われたでしょうが、事実です。誰にも打ち明けたことは無いし、今後も打ち明ける予定はありませんが

ちなみに、私の後ろでうふふと可憐に微笑んでいる美少女ですが、姉のエルシーと言います。ものっそい美少女です。10年と言わず5、6年後が楽しみでならないくらいの超☆絶、美少女です。眼福眼福。あ、自分ロリコンの気は決してありませんですよ、念の為

話が逸れましたが、まぁ、ぶっちゃけ、『死んだと思ったら生まれ変わっちゃいました〜前世の記憶、能力付きで(てへぺろ☆)』ってヤツです。しかも、『生まれ変わったら性別変わってました〜(爆)』ってオマケ付きで


まっっっったくもって有難くないがな!!


どうせ生まれ変わるなら故郷である日本に、とか贅沢は言わないからせめて地球に生まれたかった

しかも最悪なことに、生まれ落ちたその瞬間から前世の意識があったもんだから、それから1年ちょっとは本当に地獄だった。主に食事や排泄の関係で

あれ、俺前世で何か悪いことしたっけ?

と、何度頭をよぎったか。…まぁ現実逃避ってヤツだ

おかげで現在、鏡に映る自分の顔の中で唯一の姉との共通点である、大きなピンク色の瞳は、自分でもビックリするぐらい濁っている。まるで死んだ魚のような目だ。毎朝髪を結ってくれる姉ににっこり笑ってお礼を言うべきだと分かってはいるが、浮かぶのは愛想笑いとすら言えない薄ら笑いだけ。俺の表情筋は既にへんじがない。しんでいるようだ


そうして地獄の乳幼児期を耐え抜いた俺に襲いかかる第二波。なんとこの世界、前世こと俺、斎藤由規が死んでから500年も経っていたらしく、なんとなんと、『魔法剣士ヨシノリ(=俺)は魔王を倒した英雄の1人』ってことになってるんですよ〜!しかもうっかり最終決戦で勇者(聞いた瞬間噴き出すかと思ったわ。俺にとっては単なる悪友で親友だ)を庇って死んじゃったりしたせいで、『勇者を守った悲劇の英雄』とか呼ばれてるんですよぉ〜!


恥ずかしいわ!!!!


初めて勇者(笑)の英雄譚(子ども向けの絵本)を読んだ時にはあまりのこっ恥ずかしさに悶え死ぬかと思ったわ!ベッドの上でゴロゴロゴロゴロ悶えてたら心配されたわ!

絵本だけでなく、伝記などの書物に演劇の題材、吟遊詩人の歌う詩その他諸々に取り上げられていて、あまつさえその悲劇的な最期(笑)のせいで前世の俺ってば大!人気!!だったりする

王都の広場には英雄たちの像が建っているらしいし、俺、王都には絶対近づかない…!

前世の話なんて絶対絶対誰にも出来ない…!!

何故か引き継がれた能力スキルも絶対絶対ぜぇったい使わない!!!


この小さな片田舎の村で、平凡な村娘として極々普通な生涯を過ごすんだ!!!!



…あ、うん。でも結婚とかそういうのは無理かな…

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