願い~幸せを
智希は起きてからも
心の落ち込みは回復していなかった。
一生、記憶を取り戻せないとは
担当医は言っていない。
だから、玲花は智希に
一時的な記憶の喪失で
落ち込まないでほしかった。
一緒に居れるだけでも
幸せを感じて欲しかった。
玲花
「前にも言ったけど…
怒りや哀しみの失意の中でも
幸せを必ず見つけられるわ。」
智希
「自分だけ思い出せないのは
俺だけが置いてかれた気持ちになる!
孤独になる…感じるんだよ。」
最後の声は弱々しくなった。
玲花
「孤独の中でも幸せはあるわ、
それを探せばいいの。私のように。」
玲花は涙目になりながら伝えた。
智希
「俺には乗り越えられそうにない。
こんな思いをしないとだなんて…」
玲花
「この試練は絶対に乗り越えられるの、
だから智希に与えられたの。
限界を決めるのは諦めるのと同じよ。」
智希の目が一気に涙で溢れそうに
なっていた。
いつ流れてもおかしくない位に。
一番優しく智希に語り掛けた。
玲花
「私だって同じだよ。
相手が覚えてなくて、私だけ覚えてるの程
哀しいものはないんだよ。
愛し合ってキスしたはずになのに、
相手が覚えていなかったら…どう?」
智希
「…自分の気持ちばっかり。
辛いのは、玲花も同じ…なのに…。
俺は……言われて気が付いてばかり…」
智希は声を震わせて、声を詰まらせながらも
伝えると、玲花は智希に抱きついた。
そして、2人で初めて涙を流しながら、
声を上げながら泣いて温もりを感じ合った。
これは初めての経験だった。
玲花もこの時ばかりは
気持ちがコンントロールしきれず、
感情が溢れ出した。
そんな会話を病室の中で聞いていた人がいた、
智希のお父さんと玲花のお父さんだった。
でも、見てはいけない所だと思い
抱き合う少し前には病室の外にいた。
星夜
「玲花さんが隣に居るからでしょう。
智希が変われるのは…。
不安定な気持ちでも前を向かせられるのは
玲花さんの言葉だけだ。」
2人は様子を見に来ただけだったから
そのまま、仕事に戻った。
智希は約束した。
何があっても悲観的にならない
自分で限界を決めない
記憶の断片を見つける努力
これと同時にこんな約束もした。
智希
「もし、悲観的になったり諦めたり、
努力を投げ出しそうになったら…
玲花が説得してくれ。」
玲花は、無言で小さく何回も
頷いて答えた。
智希は
完全にメンタルが治ってはいない、
いつ不安定になるか…分からない。
だけど…
玲花はどんな姿でも智希を受け止める
そう心に誓った。




