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Chapter 3

私は、ゴスロリメイドに促されるままレストランの奥へと進む。


彼女の言葉が頭から離れない。来る人を幸せにするレストランなんて、まさか、まさかね。店内はどこか見覚えが会ったけれど、似たようなレストランはどこにでもある。ここに辿り着くまでに幾つものどこか似ていてどこか違うレストランに足を踏み入れた。記憶のレストランだもん。十年も前のレストランだもん。本当は見つけて嬉しいはずなのに、頭の中ではゴスロリメイドが言ったことを聞き間違いだと否定したがる。


STAFF ONLYと札が表示されている木造のドアをを彼女は開けた。入ってすぐの壁に並んだロッカー。映画に出てくるアメリカの高校にあるようなロッカーは長方形で縦に長い。多分、中にハンガーで制服を掛けられるようになっているんだろう。その右隣にはカウンターとソファ。カウンターにはクッキーの缶が置いてある。


「私は主にキッチンのお手伝いをするんですけど、時によってウェイトレスのお仕事もします。悠馬様はウェイターさんで、他にも籠目様というキッチン担当の方もいらっしゃいます。」


「羽月様は多分ウェイトレスのお仕事を任されると思うんですが、分からないことがあったらいつでも私と悠馬様に聞いてくださいね」


ゴスロリメイドの小鳥さんは、優しく微笑んだ。ふんわりとウェーブがかかった黒い髪をショートヘアーにして、ゴスロリを着ているのにナチュラルメイクを上品につけている。やっぱり大学生くらいなのだろうか、背は低いけれどどこか大人な雰囲気を漂わせていた。


「あの、それで、悠馬って言うのはさっきの男の子?」


「はい、悠馬様は東江オーナーの息子です」


オーナーの息子。十年前の男の子がレストランにいた理由が、オーナーの息子だったということなら説明がつく。確か、九歳くらいだったはず。私も小さい頃、お母さんと家のお手伝いをした事があるから、その子が家のお手伝いとしてウェイトレスの仕事をしていたと言えば説明がつく。それでも、手を伸ばした程の距離に座るメイドの口から聞こえる話は記憶とあまりにも似ていて、あまりにも都合が良すぎた。


「このレストランって、どれぐらい・・・」


・・・前から建ってるんですか、と聞こうとしたのに、突然私たちが居る部屋のドアを突然誰かが開け、「新人!」と怒鳴った。


「親父に相談したら、あんたが良ければ明日から働いて良いってよ」


オーナーの息子の悠馬だった。唇のピアスを嬉しそうにいじりながら、長袖の白いシャツの腕をまくっている。そんな彼を、私は茫然と見つめた。バイトをしたことがない私には良く分からなかったけど、バイトの面接は本当にこんな軽いノリなのだろうか。一応明日も明後日も来週も予定はない。新学期が始まるまで部活も始まらない。このままバイトを始めるのはどこか話が早すぎで抵抗があったけれど、それ以上に記憶のレストランがこんなに急に見つかったのも話が早すぎる気がした。まさか、ここがそのレストランなわけはない。でもここで働けば、何か見つかるかもしれない。


「どうします?」


小鳥さんが尋ねた。


「・・・よろしくおねがいします」


私の言葉に、小鳥さんが嬉しそうに歓声をあげ、悠馬も満足そうに頷いた。


「そういえば、名前聞いてなかったけど。こいつは小鳥で、俺が悠馬。まぁ俺の事は悠馬先輩って呼んでもいいぜ」


「斎藤羽月です」


「羽月様、これからよろしくお願いしますね」


「・・・あぁ、はい」

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