piece8:壊
崩れてしまう。全て全て。
母さん 母さん。
幸せって何?
幸せって何かしらね?
母さんの幸せは今ユトと父さんが傍にいることよ。
僕の幸せは何?
それはユトにしかわからないわ。
ユトはどんなとき幸せ?
えーっとね…ご飯食べてるときとか
寝てるときとか
あとは…母さんと父さんと一緒にいるとき。
そう。
幸せは皆違うのよ。
父さんの幸せも違うもの。
けれど、その幸せにも同じところがあるの。
どんなこと?
その人自身が作り上げた幸せだってこと。
作り上げた?
そう。
生まれてすぐ幸せな人はいないわ。
誰でも自分で自分の幸せを見つけて作るの。
そっかぁ。
じゃあ僕もまだたくさん幸せ作れるかな?
ええ、きっと。
そしてその幸せを大事にしないとね。
うん。
********
母さん、僕らが作った幸せは、今崩れかけています。
鳴り響いたサイレンがやんで、世界中に放送が流れる。
『フィルターに異常が見付かり、使用できない状態です。只今早急に修理をしていますが、人間の皆さんは避難してください。繰り返します。フィルターに…』
誰もが耳を疑った。
フィルターが壊れた?
僕らの幸せを守るフィルターが?
それは、僕らの幸せが壊れたのと同じこと。
ああ、どうして。
僕らは普通に生きていたいのに。
僕らの幸せを 壊さないで。
「フィルターが…壊れた?それじゃあ私達はどうなるんだ…」
静まりかえった街の中で一人の男の人が呟いた。
顔は真っ青だ。
「そうだ…このままでは私達は…」
「どうするんだ…早くどうにかしなくては…」
「私達は殺されてしまうのか…」
「やつらを…吸血鬼を地下に閉じ込めろ!!」
誰かの叫んだその言葉は、街にいた人間を支配した。
ついさっきまで親しく話していた吸血鬼を引きずり倒し、地下牢へ放り込む。
吸血鬼達の悲痛な叫びが街に響いた。
泣き叫ぶ子供も人間達は容赦なく放り投げる。
これが僕らの世界?
どうして どうして。
誰か 助けて。