piece14:願
「なんだ、あいつまたやったのか。」
「ああ、大神官。ええ、まぁ。」
「お前も大変だな。」
「慣れました。」
「ははは。…あいつあんなところで何をしてる?」
「…哀れな運命の少年を助けに…助けにいったのではないかもしれませんが。」
「あいつが誰かを助けるようなことをするとは思えないな。自分が何かを得るためにしか動かない奴だ。」
「…ええ。」
*+*+*+*+*+*+*+*
「プレゼント…?」
「そう。辛い思いをさせたからね。君の願いをなんでもひとつ叶えてあげるよ。」
「願いを…なんでも?」
「うん。僕は神様だから、なんでもできるよ。」
僕が、望むもの。
一番に、願うことは。
「…レンくんを生き返らせることもできるよ。」
「え…?」
「レンくんを生き返らせて、君も人間になって次の世界でまた二人で生きる?」
「…っいい!!…それは…願わない…。」
「どうして?レンくんは君の親友じゃない。」
レンは僕の親友だ。
でもそれは、僕にとってだけであって。
レンは僕を、『化物』と呼んだ。
「……父さんが言ってた言葉、やっと理解できたんだ。」
「『愛しているから、殺した』?」
「…愛している人を殺すなんて、わからなかった。なんでそんなことするんだって、思ってた。…でも僕は…」
あの時、必死にレンを探したのは、レンを助けるためじゃなかった。
誰か、他の誰かに殺されてしまう前に
僕が この手で
殺したかった。
「……『化物』って呼ばれてたもんね。許せないよね。一緒にまた生きる気にはなれないよね。」
「違う!!僕は…」
僕が許せないのは
僕自身。
「…ま、なんでもいいけど。僕忙しいんだ。次の世界、どの組み合わせで創るか考えなきゃならないんだから。」
「教えてください…僕達が生きてきた世界は…なんだったんですか…?」
あんなにも幸せだった、喜びの満ち溢れたあの世界は
「夢、だったんじゃないの。儚く消えてしまう、夢だったんだ。」
夢?
僕は永い夢を見ていた?
それならば
「僕の願いを、なんでも叶えてくれるんですよね?」
「もちろん。」
「それなら…どうか…この夢に終わりを。」
もうこんな悲しみを生み出す夢を終わりにしてください。
こんな悲しみを、苦しみを、絶望を味わうのは僕達だけで充分だ。
もう、終わらせてください。
「…それはつまり、種族の違う世界を創るなと?こんな憎しみの溢れた形で、世界を滅ぼすなと?」
「僕の願いを叶えてくれるんですよね。」
「…わかったよ。この夢に、終わりを、ね。やってくれるじゃないか。それで、君はどうするの?」
「僕は…自分は自分でどうにかします。だから…どうか」
「わかったよ。わかったってば。もういい?」
「…はい。」
僕が頷いたのを確認して、神様は風のように消えた。
嗚呼
これで終わりになる。
「ねぇレン、これでよかったよね。」
+・+・+・+・+・+・+・+・+
家に戻ってきた。
レンの亡骸は、埋めた。
家はぼろぼろに崩れている。
元は物置があった場所を掘り起こして、刀を探す。
父さんが、母さんを殺した刀。
「…あった」
父さん、母さん、レン。
僕も今、そこに。
「僕はもう、夢は見ないよ。」
。・*゜・゜。+・.゜・.゜*