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14/16

piece14:願

「なんだ、あいつまたやったのか。」

   

「ああ、大神官。ええ、まぁ。」

   

「お前も大変だな。」

   

「慣れました。」

   

「ははは。…あいつあんなところで何をしてる?」

   

「…哀れな運命の少年を助けに…助けにいったのではないかもしれませんが。」

   

「あいつが誰かを助けるようなことをするとは思えないな。自分が何かを得るためにしか動かない奴だ。」

   

「…ええ。」   

   

   

*+*+*+*+*+*+*+*

   

   

「プレゼント…?」

   

「そう。辛い思いをさせたからね。君の願いをなんでもひとつ叶えてあげるよ。」

   

「願いを…なんでも?」

   

「うん。僕は神様だから、なんでもできるよ。」

   

僕が、望むもの。

一番に、願うことは。

   

「…レンくんを生き返らせることもできるよ。」

   

「え…?」

   

「レンくんを生き返らせて、君も人間になって次の世界でまた二人で生きる?」

   

「…っいい!!…それは…願わない…。」

   

「どうして?レンくんは君の親友じゃない。」

   

レンは僕の親友だ。

でもそれは、僕にとってだけであって。

レンは僕を、『化物』と呼んだ。

   

「……父さんが言ってた言葉、やっと理解できたんだ。」

   

「『愛しているから、殺した』?」

   

「…愛している人を殺すなんて、わからなかった。なんでそんなことするんだって、思ってた。…でも僕は…」

   

あの時、必死にレンを探したのは、レンを助けるためじゃなかった。

誰か、他の誰かに殺されてしまう前に

   

僕が この手で

   

   

   

殺したかった。

   

   

   

「……『化物』って呼ばれてたもんね。許せないよね。一緒にまた生きる気にはなれないよね。」


「違う!!僕は…」


僕が許せないのは


僕自身。


「…ま、なんでもいいけど。僕忙しいんだ。次の世界、どの組み合わせで創るか考えなきゃならないんだから。」


「教えてください…僕達が生きてきた世界は…なんだったんですか…?」


あんなにも幸せだった、喜びの満ち溢れたあの世界は


「夢、だったんじゃないの。儚く消えてしまう、夢だったんだ。」


夢?

僕は永い夢を見ていた?


それならば


「僕の願いを、なんでも叶えてくれるんですよね?」


「もちろん。」


「それなら…どうか…この夢に終わりを。」


もうこんな悲しみを生み出す夢を終わりにしてください。


こんな悲しみを、苦しみを、絶望を味わうのは僕達だけで充分だ。


もう、終わらせてください。


「…それはつまり、種族の違う世界を創るなと?こんな憎しみの溢れた形で、世界を滅ぼすなと?」


「僕の願いを叶えてくれるんですよね。」


「…わかったよ。この夢に、終わりを、ね。やってくれるじゃないか。それで、君はどうするの?」


「僕は…自分は自分でどうにかします。だから…どうか」


「わかったよ。わかったってば。もういい?」


「…はい。」


僕が頷いたのを確認して、神様は風のように消えた。


嗚呼

   

これで終わりになる。


「ねぇレン、これでよかったよね。」



+・+・+・+・+・+・+・+・+



家に戻ってきた。

レンの亡骸は、埋めた。

家はぼろぼろに崩れている。


元は物置があった場所を掘り起こして、刀を探す。

父さんが、母さんを殺した刀。


「…あった」



父さん、母さん、レン。

僕も今、そこに。



「僕はもう、夢は見ないよ。」




。・*゜・゜。+・.゜・.゜*

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