piece12:滅
嗚呼嗚呼
どうしてこうなった?
何が世界を狂わせた?
嗚呼 そうか
この世界は
最初から狂っていた。
□□□
弾き飛ばされたレンの頭を持って、街の中をふらふらとしばらくさまよった。
人間達の叫び声は、もう聞こえない。
滅びて しまった。
怒りと憎しみの標的がなくなった吸血鬼達は、僕と同じように街の中をふらりと徘徊するだけ。
僕には目もくれずに、ずるずると体を引きずっている。
「神様、助けてください。」
気持ち悪い。吐き気がする。
僕が今大事に抱えているのはなんだっけ?
そうか。これは
絶望の塊。
歩くのも辛くなって、狭い路地裏に座りこんだ。
体が重い。このままここで眠ったら、楽になれるかな。
楽に なりたい。
*********
「彼は死なないんだろう?」
「そうだね。吸血鬼の血が混じっていれは寿命はないよ。」
「…これから事故が起こるとは思えないしな。そんなつもりはないだろう?」
「ないよ。もうこの世界に手を加えるつもりはない。彼は死ねないよ。病気にもならないからね。…彼が自ら死を選んで実行したなら別だけど。」
「…そうなるかもな。」
「吸血鬼達はすぐ滅びるよ。」
「なぜだ?」
「見てればわかるさ。」
*********
目が覚めた瞬間、信じられない光景が目に飛び込んだ。
吸血鬼が吸血鬼を喰っている。
辺り一面に生臭い匂いが充満して、僕の体を侵食しようとする。
逃げなきゃ。
どこか別の場所へ。
レンと 一緒に。
あの日から何日経っただろう。
吸血鬼は共食いで滅びた。
人間も吸血鬼に滅ぼされた。
この世界には もう 僕だけ。
何もかもなくなってしまった。
何もかも。
ただ呆然と立ち尽くすしかない。
僕はどうしたらいい?
どうしたら 楽になれる?
神様 僕を殺してください。