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黒き騎士  作者: kaitemita


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1/1

癒し

ねぇ、けがしてるの?

ふわぁ、と弱い弱い、癒し。

まだ、幼いゆえか、その異形のものが怪我をしてることに気づき、習いたての癒しをかけた。


治らないね、痛い?

異形のものは首を振る。

そうなの。

それは、つまんないってこと。

異形のものは答えない。

うーん、そうだ!じゃあ楽しい歌を歌ってあげるね。


◇


人は愚かなもの。

くだらぬものを望み、同族を襲う。

愚かだ。

そのものは理に従い、ただ見ている。


◇


大軍の激突はすでに終わっている。

戦場は地獄のようだ。数多くの魔法使い、騎士、兵士、全て物言わぬものとなり、倒れている。

光を纏い、輝く剣、白い鎧。

勝利した軍の先頭には白き勇者。


◇


ある国の王。かつて、存在していた皇帝となることを夢見ているもの。全ての国を従える、誰もが成し得なかったことをなす。

この都ももっともっと美しく、豪華なものになる。この世の富の全てをかければ、もっともっと、美しい都となる。

煌びやかな冠をいただき、美しき都に住む、良い、良い、実に良い。


野心、もはや妄執と化したものに燃える王は重臣からの報告に歓喜した。やはり、やはり、伝承は正しかった。


◇

隣国に侵攻し、瞬く間にその王都を攻め落とす。その隣も、その奥の国も。

王は皇帝を名乗り、周辺の国々に従属を求めた。断れば、奴を差し向ければ良い。

皇帝は口元に暗い笑みを浮かべる。

我には奴がいる、伝承の儀式により見出したものがいる。


◇

周辺の国々は軍を集結し皇帝に挑んだ。

そして、集結した軍はことごとく破れた。

皇帝の軍の先頭の白く輝く騎士は桁外れの強さ。強力で大規模な魔法、皇帝の軍を強化し、敵対した周辺国の軍には減衰を浴びせる。


白き騎士は、皇帝の命により見出された勇者。

皇帝の軍は侵攻を続ける。

対抗した国々は負け続けたわけではない。

皇帝の軍の敗北は何回もあった。

だが、すると、次の戦いの場に、白き騎士が現れた。


◇


人は愚か、だ。

異形のものは、理に従う一族のもの。

黒い竜。

右目の下に赤い鱗を持つ。

野心を抑えきれぬ皇帝が周辺を侵し、抵抗する街、王族たちを踏み躙る様子を見ていた。

降伏した街も、皇帝の軍の略奪により大きな被害を受けた。


人は愚かだ。呆れるほどに。


癒しの光。

歌が聞こえる。

昔の出来事、だが、今もはっきりと覚えている。


◇


皇帝の軍は、とうとう、南の小国の近くまでやってきた。

皇帝の軍に、隣国の軍と共に挑んだ王は戻ってこない。


王の後継ぎはまだ幼く、この滅亡の危機には対応できない。

王の母が、王に変わり、国の運営を行うことになった。

その優しげな容貌と温かい癒しの技。


重臣達、いや、全ての家臣、この国の全ての民は、王の母に忠誠を誓っている。

あの皇帝に従うくらいなら、、、、。

王の母は、国母と呼ばれ、その国の全てのものから慕われていた。


◇

そうなったか。

異形のものは、赤いウロコに注がれた癒しの光を覚えている。

怪我、といっていたな。

小さなもの。この姿を恐れていなかった。


歌が聞こえる。

温かな癒し。

暖かなひと時。


理に従うことは、我らの役割。

だが、癒しの光は今も我を温める。

異形のものは、わずかにその身を動かした。


◇


小国は、残存した兵をかき集め、皇帝の軍を阻むため、小国の入り口にあたる山と谷に囲まれた狭い街道で迎え撃った。


国母は、自国の兵達が勝利に喜ぶ姿を見ていた。皇帝の軍は甚大な被害を出して後退していった。

国母は勝利にも浮かない顔をしている。

次はあのものがやってくる。

白き勇者が現れる。



◇


新たな名を与えられる前は王都と呼ばれていた。煌びやかな作りだ。


この国を統べるものは絶望している。

先ほどまでいた重臣達はすでにいない。

おそらくは逃亡しているのだろう。

自らもそうしようかと考えはしたが、これまでの行いを振り返り、できなかった。


開いていた窓から一人の男が入ってきた。

皇帝を絶望が包む。

男の纏うのは黒い鎧、なぜか一ヶ所だけ赤い。

「皇帝か?」

疑問形だが、問いかけではない。

野心を抑えきれなかった皇帝は、男の発する凄まじい威圧を受けて息をすることも忘れていた。


◇


わー、わー

小国の民も、家臣達も、英雄の帰還を歓迎していた。

黒き鎧を纏う騎士。

現れた勇者を一刀で葬り、皇帝の軍を追い返した。

そして、占領された国々全てを皇帝から解放した。

謎の黒き騎士だが、国母様はご存知のお方らしい。


国母の前で、黒き騎士は跪いていた。

一族の掟、理に従うことを破った。

永遠に近い寿命も、自慢の翼ももう失った。

だが、後悔はしていない。

国母に抱かれた幼子。

、、、よく似ている。あの時の姫に。国母の幼い頃に。

歌が聞こえる。

癒しの光の温かさも。


人は暖かなものも持っているのだ、な。

黒き騎士は微かに微笑んだ。

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