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第25話 占い師エリザベス

「あら〜、あんたがセスちゃんから紹介があったぴかりんかしら〜」


 えっと……まずどこからツッコめばいいのか分からなかった。


 口調はオネエ、見た目はがっちりと太っていて、ファッションはその身体を隠すようなワンピース……マジでモロにマチコデラックスなんだけど。


「は、はい……セスさんがここに来るようにって」


 聖女の墓地の近くにあるやってるのかやってないのか分からない占い屋にあたしはいた。


「最初はおどろかれるとは思いますが、男性では稀な魔力量の持ち主で、占い師としても一流の方です。頼ってみてください」


 セスさん……マジで驚くよ、このキャラは。紹介の時の言葉の意味を実感していると――


「へ〜、あんた、とんでもない役割を持ってるじゃないの。あたしは、初めて見たわ、こんな運命……いいわ、何でも協力しちゃうわよ」


「へ?」


 まだ何もお願いしてないのに、あっさり承諾されて、あたしはかえって困惑した。


「大丈夫よ、あんたを取って食ったりしないから。聞いてると思うけど、あたしはエリザベス。占い師よ、宜しくね」


「は、初めまして。観月ぴかりです」


「早速だけど、あんたはあたしに何をして欲しいの?」


 展開早っ! どう伝えたらいいかな……


「ここから話す内容は、くれぐれも他言無用でお願いします」


「もちろん。占い師は顧客の情報を守秘する義務があるもの」


 この人を信じなかったら、結局何もできない。前に進むには、信じるしかないんだ。


 向かい合ったテーブルのうえにドンと、魔石粉末瓶を置く。


「何これ?」


「これは小魔石を砕いた粉末です」


「は? 魔石砕く? ただ事じゃないわね」


「これに、雷の魔力を注入して貰いたいんです」


「そんなことでいいの? お安い御用だわ」


 エリザベスさんは、瓶に手をかざし、呪文を唱える――


「ちょっとっ! やだっ! 何これっ! 小魔石よね? 身体の魔力が全部吸われちゃったわよ」


「魔石は砕くと容量が増すようです。たぶん、表面積に比例しているのかな、と思ってます」


「……特大魔石級ね」


 マチコ……じゃなかった、エリザベスさんは、そのまま黙ってしまった。しばらくすると、探るような目をあたしに向ける。


「あんたは、この力を使って何をするつもり?」


「エレーナ様を守ります」


「何から?」


「全てからです」


「ふ〜ん……確かに凄いけど、その瓶1つじゃ何も守れないわよ?」


「はい。まだまだ作ります」


「どのくらいなの?」


「まだ分からないんですけど……300個くらい必要かもしれません」


 あたしの言葉に、テーブルにつかれていたエリザベスさんの頬杖がガタンと崩れる。


「こ、この魔力量で300ですって?」


「それも仮です。実際に試してみないと何とも言えなくて」


「あんた、それ、武器じゃないわよ? 兵器よ、兵器」


「ですよね。でも、あたし、体力はないし、剣や槍は使えない。銃も使えず、魔法も使えないんです。だから、近付かれる前に殲滅できる武器が必要で……」


「たまげたわ、でもその発想は、面白そうじゃない。あたしも乗ってあげるわ。口の堅い仲間に声かけて、1日で20個くらい作ってあげちゃうわよ」


「そんなに……本当ですか?」


 あたしは疑った。


 仮にこの人が魔力量紫だとしても、エレーナ様で青、リネちゃんで黄色だったんだ。紫の人を20人なんて集められるのかな?


 それ以外だと、何十人、何百人規模で約15日も拘束することになる。タダは怪しい……


「あら、何よ、その疑いの目? あんたはたぶん知らないのね。魔力注入は呪文だけじゃないのよ? 魔物を吸収させることもできるんだから」


「えっ!?」


 初めて知る事実に、期待は一気に膨らんだ。


「セスちゃんたちに同行して、魔物を吸収して回れば、1日に大魔石20個分くらいになるんじゃないかしら」


 一番の問題点がこの瞬間、解決した。ように思えたんだけど、本当に大丈夫なの? あまりにご都合展開過ぎて、若干ビビってるあたしがいる。


◇◇◇


「ぴかりん、こちらはもう良いと思います」


「え、あ、はいっ!」


 セスさんの言葉に弱って動けなくなった魔物の元へ走り込む。そして、粉末魔石瓶をかざす――


 キュイイーンと魔物は瓶の中に吸い込まれていく。もう、何回繰り返しているだろう。溜まった瓶は5個。あたしはもうバテバテだった。


 その横では見かけによらず軽やかに戦場を舞っているエリザベスさんがいて、あちらはすでに15瓶に届く――


 エリザベスさんと会った翌日から、1人で3日かけて、20個の小魔石を集めた。


 それが出来たのは、サンダーソードと魔導アーマー、疾風の靴という、ミラちゃんが残してくれたあたしのための魔導具のおかげだ。


 苦労して集めたそれを砕いて瓶に詰めてのに1日かけて、皆とのスケジュール合わせで、そこから3日過ぎた。


 そして今日、魔物を吸収してる現状――


「集まったわね、ぴかりん」


「はい。でも、正直体力の限界です。エリザベスさんに頼り切りで申し訳ないです」


 それだけじゃない。こんなペースじゃ、完成する前に何か起きちゃうよ……


「……あたしのペースじゃ、とてもエレーナ様を守れません」


「何言ってんのよ、あんた? 特大魔石級20個よ? 戦争でも始めるのかって言われてもおかしくないわよ?」


 エリザベスさんの言葉に、セスさんが続く。


「ぴかりん、あまり気負ってはよい結果には繋がりませんよ」


「はい……」

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