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異正義

ーーー間違っているのは、俺じゃない。


そう言うと、みんな黙る。

否定しないくせに、受け入れもしない。

その態度が一番嫌いだった。


だから、世の中の方が間違ってる。


ーーー俺は、レン。

それ以外はいらない。

生まれた場所も、育った環境も、

自分を形作ったはずの全部、

すべてあいつらがかかわっているものは、

どこかズレていた。


名前だけは、ずっと正しかった。

最初から、刻まれていたみたいに。


だから俺はレンだ。

それで十分だ。


俺は一人で歩いていた。

人が多い場所は避けていたはずなのに、

だが、いつの間にか声をかけられていた。


『人生、疲れてそうですね?』


「話しかけるな」


『でも、顔に出てますよ?』


「だからなんだ」


『人間のこと、嫌いですか?』


「……別に」


『私は、好きですよ』


「うるさい」


女は笑っていた。

気味が悪いほど、まっすぐな目で。


『否定されるのって、嫌ですよね』


その一言で、足が止まった。


『正しいと思ってるのに、

 間違ってるって言われるの』


「……」


『だったら、正しい場所に行けばいい』


「正しい場所?」


『はい。ちゃんと、評価されるところ』


「……例えば?」


女はそのセリフを待っていたかのように言った。


『“役割”がある場所です』


「役割?」


『怒っていい役割。

 壊していい役割。

 間違ってないって、言ってもらえる役割』


胸の奥が、久しぶりに動いた。

止まっていた時間が動いた気がした


「……どうやって?」


『簡単ですよ』


女は、両手を広げた。


『認めさせてやるんです。

自らの力で何ができるのかを』


俺はうなずいた。

意味は、正確にはわかっていなかった。


『お名前はなんていうんですか?』


「……レンだ」


『...いい名前ですね』


『ようこそ』


女は、はっきり言った。


『ファミリーへ』


そこには、人がいた。

初めて、ちゃんと人間だと思えた。


誰も俺を否定しなかった。

怒りも、過去も、

全部「正しい反応」だと言った。


俺は決めた。

この場所のために生きる。


俺の中に溜まっていたものを、

全部、使うために。


任された役割は、前に立つことだった。

怖くはなかった。

正しいことをするだけだ。


俺たちは、間違っていない。

間違っているのは、外側だ。


だから進む。


それが、俺の正義だ。



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