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第3話「交わす約束、懇親会」(中編)

すみません、遅くなりました。ゲームやるとどうも時間を忘れてしまうものですね。ちょいちょいキャラの名前で誤字が出てしまうのですが、特に菊梨ちゃんの苗字は変換の都合上難しいですね。一応「七条」が正しい表記ですので、認知していただけると幸いです。

「幼い頃の話でね、一度私は両親と喧嘩になって家出をしたことがあるんだ。大雨が降っていたけれど、お構いなしに傘もささずにがむしゃらに走っていた。疲れていた私は休みたさのあまりに、河川敷に降りて橋の下に行ったんだよ。濡れた服を絞ろうと川の傍に寄ったら、足を滑らせて流されそうになってしまったんだ。そんな時、すんでのところで手を引いて助けてくれた人がいた。私と同じくらいの年の見た目で、柏と同じく白くてきれいな髪の毛が特徴的な女の子だった。雨の日なのに、晴れているのかと見紛うほどの明るい笑顔を向けてくれたことを、今でも覚えているよ」

 遠い昔を懐かしむように、菊梨は話を続けていく。

 白髪と聞いて引っかかったところではあるが、少なくとも自分は該当しそうにない。幼い頃の雨の日に出かけて、金髪の女の子と出会って助けたなんて出来事はないし。第一そんな特別な出来事があるんだったら、それなりに記憶に残っているはずだしな。

 などと思っていると、一息つく菊梨と視線が合った。

「今でも思い出せるよ、君そっくりの容姿だったとね。細かい特徴は違っていたけれど、その恩人には瓜二つだよ。本当に、彼女の名前を聞けなかったことだけが心残りだ」

 心底惜しがるように、菊梨は瞼を細める。それだけ菊梨にとって、恩人の光が強かったんだろうなあと伝わってくる。

「それじゃあ菊梨ちゃんが柏ちゃんに声をかけた理由って、その人の面影があったからってことなのかな?」

 聞いていれば当然浮かんでくる疑問を藤が投げてくれる。どこかやんわりと、楽しげな雰囲気で訊ねているあたり興味津々なのだろう。

「そんなことはない、と言ってしまえば嘘になる。だけど、柏に関しては私への興味が薄い理由が気になったことが大きなきっかけだよ。幼少期から芸能人として過ごしてきた人生だからね。何かと注目されることが当たり前だったし、誰からも声をかけられたといっても過言じゃない。そんな人生の中で、唯一柏だけが私に何も反応を見せなかった。だから気になって声をかけてみた、というのが私の中での始まりかな。今では声をかけてみてよかったと、改めて実感するよ」

 ニコニコキラキラ輝く王子様スマイルを向けてくる菊梨。ここ一週間の傾向だが、出会ってからというもの彼女からの矢印が異様に大きく感じる節がある。時折飼い主に構ってもらいたがる大型犬みたいな、大きいペットを彷彿とさせる雰囲気があるのだ。

 だって今もなんとなく見えるもん。尻尾をぶんぶん振って喜んでる姿がさ。

「分かったから話を戻してくれ。その恩人がどうしたってのさ」

「コホン、少し脱線してしまったね。私がこうして芸能界の仕事をやっているのは、彼女に誇れる私で在りたいからなんだ。あの日、私の手を引いて連れてくれた彼女と、雨宿りした時に交わした約束を守るためでもあるんだよ」

 遠い昔のはずなのに、まるでつい昨日の出来事かのように菊梨はつづけていく。きっと彼女の根底にある想いなのだろう。友として、聞き届けてやる他にない。

「あなたみたいに誰かを照らせる人になる、とね。そしたら彼女は、ちゃんと見てるから頑張って、と背中を押してくれたんだ。幼いころの口約束みたいなものだけど、それでも命と心を救ってくれた彼女に報いるために努力してきたつもりだよ。今でもきっと見てくれていると信じてね。……ここまでが私の抱えていたことだ」

 語りきった菊梨は、晴れやかな表情を浮かべている。

「あれ、じゃあ再会の約束はしてないんだ?」

 と、椎名が真っ先に質問を入れる。正直自分も気になるところだったので、突っ込んでくれたのはありがたい。突然の別れでもなければ、自己紹介する時間の一つや二つあっただろうに。

「してない、というよりは出来なかったと言うべきかな。彼女の名前を訊いたタイミングで彼女の家族が迎えに来てしまってね、そのまま別れたきりだよ。約束も、当時は私がいじけていたせいでまともに話す時間もなかったんだ。約束する間もなかったさ」

「ははぁ、本当に一期一会だったわけだ。エモいねぇ」

 茶化すような感想こそ向けるものの、共感したように頷く椎名。こっちの場合は再会も済んでる分、綺麗に落ち着いたといえるだろうに。

 いや待て、寧ろ再会できていなかったらと考えて聞いてたのだろうか?約束が果たされず、恋焦がれたまま月日だけが流れていくことだけを想像してみる。不可能と割り切れるんだったら幸いとしても、子供の約束というのは簡単に済ませる問題じゃない。軽く語るように交わしこそすれ、お互いの信頼と甘えから成る微かな希望と重い期待の代名詞だ。それが裏切られ続けて、叶わなかったらどうなるだろうか。少なくとも自分なら人格拗れて擦れる自信がある。

「昔からの約束を守り続けるなんて、菊梨ちゃんは一途なんだね」

「初めて私に寄り添ってくれた相手なんだ。たとえ会えなくとも、約束はつもりさ。……さて、私の番はこれでおしまい。あとは二人のどちらかにバトンを譲るよ」

 こうして最後に締めくくり、菊梨の話に区切りがついた。

 確かに菊梨の根底にある約束の話は、今まで聞いたことがなかったように思う。少なくとも、某ウィキやプロフィールに載っている内容からは大きく外れている。大衆に晒さない理由として、王子様系で通している分、イメージやブランディングを崩すわけにはいかないのだろう。

 それを前提に自分たちだけに話したということは、相応に信頼を買ってくれているのか期待しているのか。どっちにしろ、明かしたことには変わりないんだ。口外無用の契は当然守る。

 ともあれ自分と菊梨の手番は終わったので、あとの二人の話を聞かせてもらおうか。

 椎名と藤がじゃんけんしているのを傍目で捉え、自分はいつの間にか空になった食器を埋めに料理を漁りに行った。

 きっと戻る頃には決まっていることだろう。


***                                 ***


「じゃあ三番手は私だね」

 藤のんとじゃんけんをし、勝った私から話すことが決まった。

「私が大トリでいいのかな。面白い話なんて何にもないよ?」

 若干不安げな藤のんに、私は笑って答える。

「いいっていいって。最後は優しいくらいがちょうどいいの」

 藤のんの性格でドロドロした過去があったとしたら、私は世界を滅ぼしても構わない。天使で聖人の癒し枠な藤のんに重い過去なんてないんだ!……ないよね?

「戻ったぞ~。ほれ、椎名これ切らしてたろ」

 程よいタイミングで戻ってきたかっしーから、いつの間にやら飲み干していた飲み物を受け取る。

 かっしーの山盛りの皿を見て一瞬固まりかけるが、いやいや、と我に返る。さっきも充分食べてたよね、おかしくない?うーん、でもほか2人の反応もないし、私が気にしすぎなだけなのかな。

「お、お~気が利くじゃん。あんがとね」

ひと息つくように、早速それをストローで啜る。見なかったことにしよう。前と同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。

「で、決まったん?」

「うん。椎名ちゃんが先になったよ」

「ほーん、じゃあ藤が花形か」

 順番に納得したあと、期待の眼差しをかっしーは藤のんに向ける。気持ちはわからないでもないけど、プレッシャーは掛けない方がいいよ?

「花形って、いくらなんでも大袈裟すぎるよ。みんな私への期待重くないかな?」

 不服そうに頬を膨らませて彼女は述べる。藤のん視点から見れば当然の感想ではあるけれど、仕方ない話だと思う。

「そうだね、少なくとも藤ほど優しい人は見たことがないんだ。無理と言われても気になってしまうよ」

 演技では目にすることはあるけどね、と付け加えて菊りんが私たちの内心を代弁してくれる。全くもってその通りなんだけど、本人が無自覚なことで拍車をかけているんだと思う。身近な人物となると尚更のこと。それでいて仕草も容姿も可愛いんだもんね、反則だよ。

「つーわけだ。自分達も見たことない人種なんでね、不快だったら申し訳ないけど大目に見て欲しい」

 最低限の筋としてか、かっしーが先に断りを入れてくれる。何事も親しい仲でも礼儀は必要だから、こうしてくれるのは素直にありがたい。

「何回も聞いてるから分かるけど、思った通りじゃなくても残念がらないでね?」

「さすがにそこは弁える。勝手に盛り上がってるのはこっちだしな」

「盛り上がりすぎてシラケるのはお門違いだもん。ちゃんとわかってるから安心していいよ」

 些か懐疑的だけど、藤のんは渋々納得してくれた。ごめんね藤のん、私たちオタクとしてまだまだ未熟みたい。

「柏も戻ってきたところだ、そろそろ椎名が話してもいいんじゃないかな?」

 藤のんのことはともあれ、今は私の番だ。かっしーとの関係は話したことあったけど、馴れ初めは話したことがなかった気がする。

「先にみんなに問おう!かっしーとの馴れ初めから聞きたいか、別れたあとの話から聞きたいか、どっちだー!」

 その後返ってきた応えは、満場一致でかっしーとの馴れ初めから。当の相方本人はと言うと「話してなかったんだっけか。この機会だし頼むわ」と丸投げ。

 てめーも話せや、と思うが回ってきた私の番なのだから仕方ないところ。恨めしそうに一瞥してから、切り替えて過去の出来事に思いを馳せる。

忘れもしない、あのころの光だった雨月柏との馴れ初めは。

「そうだね、私たちが小学校一年生の時かなぁ」

 前置きをして、私は語り始めた。



───────小学校に入学して一か月が経ったかどうかのお話。

 私は本を読むことが大好きで、図書館の本の虫になっていた頃のこと。クラスで馴染めなかったこともあって、休み時間は決まって逃げるように図書館へ通っていた。ある日に恋愛ものの文庫本を読んでいたところ、いつも座る席の隣に一人の女の子が座ってきたのだ。一冊の本を携えて、並んで黙々と読み耽るだけの妙な時間。ただ過ぎ去ってく日常の一幕だと思ったのだが、隣の少女が突然声をかけてきた。

「……同じクラスの椎名ちゃん、だよね。漢字得意だったりしない?」

 弱々しく、えらく腰が低い態度で訊ねてきた彼女が雨月柏だった。普段の教室では明るくて男子女子両方からの人気者という認識だったけれど、その面は見る影もないほどか弱い印象を抱かせたものだ。一方の私も私で捻くれており、ほぼ初対面の彼女を邪険に扱っていたように思う。

「別に。読めるだけ」

 なんてぶっきらぼうな返事をしていた。にもかかわらず返事を聞いた彼女は、にぱっと笑顔を輝かせて私にこんなことをお願いしてくる。

「じゃ、じゃあ、わからないところの読み方教えてくれない……かな?この本をどうしても読みたいの!お願い!」 

 図々しくも頼み込んでくる彼女が手にしていた本は、どこかアニメタッチなイラストが表紙の小さな小説本。ラノベと呼ばれる文庫本だった。今思えば小学校の図書館にラノベが置かれていた辺り、なかなか恵まれていた環境だったのではなかろうか。ただ当時はそこまで普及しているわけでもなく、私もラノベを知るまでは幼稚な読み物という偏見を持っていたものだ。沼につかるのは早かったけどね。

 ともあれ諸々意図や背景もあって、当時は正直面倒だから断ろうと考えていた。だけど、あまりに熱心に読みたい意思が伝わってきたのだから、私は無碍に出来なかったのだ。私が原因で本が嫌いになっただなんて吹聴されても迷惑だったし。気まぐれ半分親切心半分で、流されて請け負うことにしたのだ。

「……読める分だけなら」

「やった!ありがと、椎名ちゃん!」

 ただ一言お礼を言われただけなのに、やたらと眩しく感じたことは今でも覚えている。当時のやり取りから、彼女に心が惹かれていたんじゃないかと思い至る。なるべくして友達になった、という奴だろう。

 実際、お互いの関係の進展は早かった。最初の方こそ一々訊いてくるものだから鬱陶しいことこの上ない存在だったものの、月日を重ねるにつれて楽しみの一つに変わったものだ。見栄を張るために家で漢字を覚えて、覚えたての知識を披露するように彼女に教えていたことはいい思い出だ。後でバレた時は恥ずかしかったけど、彼女は気に留めないどころか喜んでくれたのだ。

 そして、何度と知れず言われた「ありがとう」の言葉は、私の何よりもの生きがいになっていた。

 そのうちに本の感想を言い合うようになったり、休みの日や帰りがけにお互いと家に遊びに行くようになったり、習い事で一緒になったり、自然と一緒にいる機会が増えたと思う。桃花さんと会った時も、家に遊びに行って初めてのことだったかな。妹が妹なら姉も姉で、同じく温かい人だった。

  私の趣味にも変化が起きて、文庫本だけじゃなくてラノベやアニメにもハマっていったのも小学生の頃の話。 元々交友の狭かった私にとって、雨月柏が全てだった。私の知らない世界を教えてくれて、私の前ではいつも本音で気弱ながらも明るくて、いざって時は手を引いて助けてくれる。彼女は隣にいて心地の良い、窓から差し込む陽だまりのような存在だった。 だから私は、離したくなかった。恋か友愛か、それは未だに分からないけれど。いつしか重い感情を彼女に抱いていく。そしていつだったか、叶わないと知らぬ約束を交わしたのだ。

「ねえ、柏ちゃん」

 どろりとした独占欲を誤魔化すように、明るい声音で呼びかける。

「なあに、椎名ちゃん」

 はにかんで笑う彼女に、私は甘えて続ける。

「ずっと一緒にいようね」

  色んな感情が混ざった短い一言。知ってか知らずか、彼女は太陽みたいに明るい笑顔で「うん!」と元気いっぱい頷いた。


 ────────で、約束した間もないうちに別れちゃったわけ」 とりあえず引越しの経緯まではざっくりと掻い摘んで話したところ、視線がかっしーに集まる。渦中の本人はと言うと、「知ってた」などと笑いながら宣っている。馬鹿にしてるのか。

「か、柏ちゃん…………」

「君という人は…………仕方ないことは重々承知のうえで言わせてもらいたい」

 眉をしかめる藤のんと、納得と呆れの半々でため息をつく菊りん。私の話を聞いたあとで、さすがの2人も思うところがあったみたい。味方が増えるのは嬉しいな。さぁ観念しろ。

「うん?」

 関心薄そうに首を傾げるかっしー。たしかに当時は仕方ないと思ってたよ。頑張って、がんばっっっっっって割り切ったよ。ただ思い出すうちに爆発してくるというか、込み上げてくるものがあるというか。とにかく一回発散しておくべきだと思う。

「「「柏/かっしー/柏ちゃんが悪い」」」

 志同じくした者同士、息ぴったりである。

「ふっ……罪な女でごめんな」

 誇らしげに悪びれもしないのはどういう意図か。 え、もしかして自覚あり?昔からその気でやってたとか、そんなわけないよね。

「このまま再会できなかった椎名を思うと、不憫でならないね」

 共感できるところがあるのか、菊りんは眉をしかめて眉間を指で抑えている。中々面白い表情するね、なんて呑気な感想を抱いてしまった。

「柏ちゃん、責任は取らなきゃメッ!だからね?」

 プンスコ頬をふくらませながら加勢してくれる藤のんの何と可愛くてありがたいことか。

「ま、待て待て!また一緒って約束したし、守るからチャラにしてくれてもいいじゃないか!再会までずっと純潔貫いてきたんだし、許されていいはずだ!」

 確かにその一点を言えばポイントが高い。かっしーも誠実だった証と言えるだろう。それはそれとして、人の情緒を乱した人間の態度ではない。

「許すかどうかは今後次第。純潔かどうかも信用できませーん。かっしーのことだし、引越し先で何人か落としたんでしょ」

 じろっと鋭い目つきで睨みつけてやると、かっしーは生気が抜かれたようにしぼんでいく。

「確かにあったかもな……ははは……」

 つい先ほどとは打って変わって余裕綽々な態度ではなく、目の色が消えてくたびれた様子だ。若干青ざめているあたり、軽いトラウマが掘り起こされたのだろう。何があったかは、今は訊かない方がよさげかな。

 再会した時は口調こそ変われど、中身はあんまり変わってないんじゃないかなとなんとなく感じてた。ダウナーっぽさはあるけど根っから暗いわけじゃないし、どちらかって言うとテンションは高い方だと思う。ただ話しているうちに、やたらと話の筋や義理に拘る傾向が強いなと、違和感だけがしこりとして残っていた。だから昔みたいな陽だまりのような存在、とはかけ離れてしまった異質さが彼女にはある。……と思っていた矢先に菊りんと友達になったとかいうものだから、意外と気のせいじゃないかと考えないようにしていた。数年で価値観や性格はどこかしら変わるのが人間ってものだしね。だからその程度のものかな、って大して気に留めたことはなかった。

 故にこそというべきか。今になって顕著に現れた反応を見ると、前提がだいぶ変わってしまう。友人の勘を言うなら、本意じゃないことで人間関係事故った。そんな出来事があったんじゃないかって邪推してしまう。

「まぁ、ここから先はおいおい気が向いたら話すさ。今は時期が早ぇ。で、引っ越して別れたあとはどうしてたんだよ」

「あー、うん」

  何とか平静を装うかっしーに困りつつ、私の話順だったことを思い出す。

「じゃ、要望通り引っ越したあとのことを話すよ」

 一口ドリンクを呷り、私は話を続ける。

 ある種空白期間か、はたまた修行期間か。当時の私を思い出しながら言葉に載せる。

 今の明るめなスタイルに落ち着いた経緯だったり、両親と趣味のことで喧嘩したことだったり、大雑把に過去から今へ。私が今のスタイルでいるのは、かっしーに誇れる私でありたかったからだということも伝えた。私も明るく振舞ってあの頃の光に近づこうと、奮闘した結果なのだと。それだけ大事な思い出だったということだ。

 しかしどんな偶然だろう。経緯は違えど、キャラ付けが馴染んでしまったという経歴はよく似たものだと思う。

「かっしーのあとだから二番煎じみたいな話になるけどね。とりあえず、私の大筋はこんな感じだよ。ちょっち重い話になっちゃったかもだけど、知って欲しかったことは今のとこ全部かな」  

 昔を振り返るようで少し恥ずかしかったけれど、今思えば意味があったんだと報われた気持ちだ。たまに自分自身を振り返ることも、悪くないかもしれない。

「重いなんて、そんなことないと思う。好きな友達を思うのは当たり前のことだよ。それに、何だか恋バナ聞いているみたいでときめいちゃったもん。ロマンチックで素敵だと思うな」

  顔を赤らめてにへらと蕩ける藤のん。恋バナ、恋バナか……確かに内容を抜粋すれば捉えられてもおかしくない熱量で話したと思う。やばっ、冷静になったらマジ恥ずいんですけど!告白と同義じゃん!?

「まるで運命だ。結果は異なるけれど、私と似た境遇の人間に会えるとは思ってもみなかったな。人を思い、誇れるために努力を惜しまない姿勢を好ましく思うよ」

 菊りんからは称賛の声を浴びてしまった。その裏に、どこか羨望のような意志を感じる。きっと菊りんは焦がれているのだろう。だけど、柔らかな微笑から送られてきた言葉からは本心を感じた。羨ましくもあり、それでいて素直な賞賛を表してくれたのかもしれない。

「えへへ、ありがとう菊りん」

 むず痒い感覚はあるけれど、私はその言葉を素直に受け取った。ほんのしばらく感想を噛み締めた後、私の思いを聞いたであろう本人の顔を覗いてみる。

「なんなのさ、そんな嬉しそうにして」

 顔を赤らめながら、かっしーは満面の笑顔を咲かせている。

「喜ぶなって方が無理だ。抑える方がむず痒くて叶わん。……にしてもそっか、自分に誇れるように、か。もう充分立派に明るいと思うぜ。ついでに見違えて可愛くもなったんだ、胸張って誇っていいだろうよ」

 彼女の綻んだ笑顔は、歓喜にも慈愛にも全肯定にも捉えられるほどに柔らかかった。ぽふん、と頭に手を置かれてサラサラと撫でられる。手のひらがほんのり暖かい。ずっとこのときを待っていたんだな、と今更ながらに自覚する。堪えてきたものが湧き上がってきて、じんわりと目元が熱くなる。

「もぉ〜撫でないでったら!みんな見てるじゃん……恥ずいって!」

 溢れる涙を誤魔化すように、私はブンブンと頭を振った。泣き顔を皆に見られることは、流石に憚られる。

「さて、私はお皿を埋めてくるよ。藤もどうだい?」

 私の意思を汲んでか知らずか、途端に菊りんが言い出した。

  振られた藤のんも僅かに残っていたものを片付けて、菊りんに返す。

「うん、ちょうど空っぽになっちゃったから行こっか」

 と、2人は席を去ってしまった。気を遣わせちゃったかなと、申し訳ない気持ちとありがたい気持ちが同居する。二人にはどこかでお返しさせてもらおう。

「頑張ったんだな」

隣のかっしーが、そっと身を寄せて腕を回してくる。

「……うん」

 私は彼女に身を預けた。体格差ですっぽり腕に収まったおかげか、彼女の体温が広く身を包んでいく。昔嗅ぎ慣れた匂いが、今でも変わらないことに安心する。

「逆に申し訳ないな。自分はこれまで、何もしてこなかったから返せるものがねえや」

「気にしないでよ。私からしたら、会えて覚えててくれただけで満足なんだから。もしそれでもご不満ならさ、これからまた一緒にいて、ずっと私を見てほしいな」

 自嘲気味に卑屈なかっしーに、私は過去よりも今を見てほしいと伝える。正直今抱いているかっしーへの好意が恋慕か友愛かは判別がつかない。仮に恋だとしても、今はまだ胸を張って告白できる関係じゃないと思っている。だから今は、この約束を守ってくれるだけで十分なのだ。

「わかった、なるべく目をそらさないように努力するさ」

「反故にしたら高くつくからね」

 何度目かわからない約束の焼き直し。だけど今のは信用しきれない不安よりも、先のことを案じての誓いだった。確かめるんじゃなく、前を向くためのものとして。

「勿論、自分から離すつもりもないさ」

 ぎゅっと、僅かに力がこめられる。私も無意識のうちに腕を回し、抱き返す形になっていた。

「ん、信じてるからね、かっしー!」

「勿論。約束は果たすさ」

 二人だけの空間で、私たちは改めて誓うのだった。関係性を問わぬ、これからのために。

名前:宮之阪(みやのさか) 椎名(しいな)

性別:女

身長:155cm

年齢:15歳

誕生日:5月14日

髪の色:薄紅色

一人称:私

二人称:人によって決める(大体あだ名)

イメージアニマル:リビアヤマネコ

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