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第009話

「あなたがダンジョンマスター宮田ね。よくもこの私が手塩にかけた世界を破壊してくれたわね。

あの暗黒竜を手懐ける者がいるなんて思わなかったわ。

愛しい我が子達はあなたの忌々しいトカゲに全て食われてしまった。もうこの世界は廃棄するしか――――」


 あー暗黒の奴、別に手懐けてる訳じゃないけど……全滅って……そりゃ怒るよな……正直、俺に言われても困るんだが……

それにしてもこの女神さま、憤怒の表情でも綺麗だなぁ……全てのパーツが完璧だ。

これはちょっとキャラメイク職人としての腕が鳴るな。この女神を是非再現してみたい。

僕が考えた最高のサキュバスである寧々ちゃんもバージョンアップできそうだ。

しっかりと目に焼き付けておかなければ……あぁ、ちょっと遠いな、もうちょい近くで見たい、瞳の色が良く分からんな、俺の目がもうちょい良ければ……

ああっ女神さまっ、良いぞ!その調子でもっと目を見開いて――――


「聞いているの!宮田!ほんとダンジョンマスターは失礼な奴しかいない!宮田!返事なさい!」


 怒りの声が響く。やばい、聞いてなかった。


「す、すみません、あなたの瞳に夢中で聞いてませんでした」


「そ、そんな戯言を言えるのも今の内なんだからね!いい?あなたの事は上位部署に既に報告しています。私の同胞にも連絡し、現在あなたの傾向と対策を相談しています。間もなくあなたとトカゲを必殺する対応策が――――」


 何かの咆哮音が聞こえた気がした。

ん?と思って見上げると、願いをなんでも1つ叶えてくれそうな、でっかい白龍がこっちに凄い速さで向かってきている。


「まさか!神滅龍!?なぜこの世界に!!」


 女神さまの叫びを神滅龍の咆哮がかき消す。


 焦りながらも右手にでっかい魔法陣を呼び出す女神さま。

そんな女神さまに、神滅の奴は飛んできた勢いのまま喰らいついた。


 更にそのままスクリーン周辺の空間をもぶち破り、穴を広げつつ中に突入していく。

轟音と爆発音、悲鳴と怒声が響き、大きな破壊音がしたかと思えば、ゆっくりとスクリーンが消えていった。


 今しがたの騒乱が嘘みたいに静寂が戻る。

 

 あのスクリーン、ホログラム的な奴かと思っていたが、本当に向こうとこっちを繋いでいたのか……この状況、俺が出来る事は……無いな。


「どうする?釣りでもする?」


 ここは一つ、釣りでもしながら新しいダンジョンの構想を練ろう。

プロジェクト・バベルもダメになったしな。あ、釣り竿がないから釣りもダメだ。


 他にダンジョンと言えば……森はどうだろうか。迷いの森って感じで。

プロジェクト……あー迷いの森は英語でなんて言うんだろう、習ってないし分からんな。ロスト……フォレスト?

プロジェクト・ロストフォレストかな?トが多いな。ロストウッズ?

合っているかどうかも分からん。インターネットがないとここまで俺は無力なのか……


 自分の知力の限界を知り愕然としていると、不意に辺りが暗くなった。

ん?またなんか飛んできた?と空を見上げると、黒い奴、暗黒竜がゆっくりとこちらに向って降りてくる。


 デカい、とにかくデカい。生き物の大きさとは思えない。

福岡ドームくらいある。四畳半の部屋に入る訳がない。着地と同時に大地が揺れた。


「おう、主よ、神族に出会うたにも関わらず壮健とはな。少し見直したぞ」


 しゃべった!

意外にも渋い声で話す暗黒。しかし声を聞いただけでコイツ悪い奴だって感じがする。


「あ……あぁ、女神さまは神滅の奴が喰ってしまったよ。もう何が何やらって感じだった」


「そう、それよ!我に続き神滅龍も召喚するとはな、流石に笑ったわ。一番の獲物を搔っ攫われたのは業腹ではあるが、奴が居らなんだら主は滅ぼされておったかもしれん。我はこの星の丁度逆側に居ったが故にな。急いで戻ってきたが、流石に間に合わんかったわ」


 何コイツ、助けに来てくれたのか……良い奴じゃん、悪そうな名前なのに。


「ホント、生きてて良かったよ。あー改めてちゃんと名乗っておこう。俺は宮田。ダンジョンマスターだ。お前の主……で良いのか?」


 暗黒の奴を間近で見て、話して感じた。生き物としての格が桁違い、先程の女神以上のクラスだ。

こんなスゲー奴が俺の手下になってくれるのだろうか、アゴで使ってよいのか心配で確認してしまう。


「フ、何を心配しておるのか知らんが、召喚してくれた事に感謝をしておるし、主と認めてもおるぞ?命令にも従ったであろう?」


「命令?何か俺、命令したっけ?」


 ホントに全く心当たりがない。

暗黒の奴があきれ顔を浮かべる。ドラゴンのくせに表情が豊かだ。


「おいおい、主様よ、忘れたのか?お主が不様に土の中で潰れて居る時に、助けてくれと我に命じたであろう?

黒い奴などと呼び腐りおって……丁度勇者と遊んでおる時だったか、興が乗っている時にお主の情けない声が聞こえたのだ。

面倒だったのでブレスを撃ち込んでやったのだがな。ちゃんと助かったであろう?良かったな」


「あの爆発お前かよ!死ぬとこだったんだぞ!そもそも生き埋めになった原因もお前じゃねぇか!くそぅ、確かに助かったよ、ありがとうって思うけど納得いかん!」


 ハッハッハと笑う黒い奴。こんな陽気な奴がこの世界を喰らい尽くしたのか……あぁそうだ、その話もしないと……


「暗黒竜、本当にこの世界のヒト種族を全滅させたのか?根絶やしにする程の悪い奴等なのか?」


 ストレートに訊ねる。

暗黒は少し考える素振りをして答えた。


「善人の方が多いのではないか?勇者など善人の極みだろう?だがな、善悪など我には関係ないのだ。

ヒト種族は喰らう。神滅龍も同じよ。神族は喰らう、それが奴だ。

そうであれと生まれた魔物、それが我らよ。

納得できんか?

ふむ……落とした消しゴムを拾ってくれた女子を好きになるじゃろう?そこに疑問など生じるか?」


「好きになる!消しゴム拾ってくれた女子、好きになるよ!なるほど納得した。そりゃ仕方ないわ」


 うんうんと頷き合う俺と暗黒竜。コイツとは上手くやっていけそうだ、そう思った。


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