紙ねんど
近所の100円ショップに、紙ねんどを買いに来た。
町内会のちょっとしたイベントがあるので、にぎやかしに小物を作ることになったため、買出しにやってきたのである。
私の作る食べ物マスコットはぼちぼち人気があって…無料で配るのにちょうど良い塩梅なのだなあ。お金を出してまでは買わないけれど、ちょっとしたお得感・うれしい感を得られると好評でね。
今まではさんざん作って貯めていた分を大放出していたのだけれど、いよいよ在庫がなくなったので製作する事になったのだ。なんか微妙にもにょらないでもないけど、まあ、頼まれたら引き受けるしかあるまい……。
地味に紙ねんどを買うのは…久々だ。 子供たちが小さいころは頻繁に百円ショップに出向いてはちまちまと製作に勤しんでいたものだが、前に買ったのがいつのことだったか…思い出せない。
確か、フルーツパフェなんかのデコスイーツ作りにハマっていたころだから…3年くらい前?買い込んでいた分を消費しているうちにエコバック作りのほうに興味が移って…すっかりねんどをこねる習慣がなくなってしまったのだなあ。
久しぶりにねんどコーナーをのぞくと…、ずいぶんアイテム数が増えていておどろいた。着色済みのカラフルな紙ねんど、軽いねんどに伸びるねんど、ひと昔前にはなかったクリームタイプのものやクラフトショップでしか売っていなかったような樹脂粘土や木粉粘土、石粉粘土にへらや型各種、ニスにシリコン剤、ソース用のカラーペーストなどなどがずらりと並んでいて、ハンドメイド好きの血が騒ぎだす。
いいなあ、今の時代って…。こんなにもいろんな粘土やパーツ、材料やツールがたくさんあってさあ…。
昔はねんどなんて油か小麦粉か紙がぐらいしか選べなくってさ。紙ねんどなんて重たくてざらついて表面がけばけばしてて…練るたびに指にこびりついてうっとおしくてさ。全然乾かないし梅雨時はすぐにカビが生えたしさ。落としただけで速攻欠けるような、根性があるんだか貧弱なんだかわからない物体だったのに、ずいぶん進化したものだ。
小物を作るのに紙ねんどが有効活用できるようになったのは…ここ10年ほどのことのような気がする。
今の紙ねんどはひび割れもしにくいし伸びやすく、めちゃめちゃ軽い上に小さなパーツも作れるし…すごく使いやすい。乾いた後も柔らかい手触りで、なんとなく優しさを感じるというか。若干軽くて頼りないような気がしないでもないのは、おそらく重たい紙粘土の記憶が私にこびりついているからだろうなあ。
…私が初めて粘土を触ったのは、幼稚園のころだ。
あのころは、粘土の時間がとても…嫌いだった。油粘土の、あの独特なにおいと汚い緑色、べたつく感じがいやで、極力粘土をこねずにすむようなつまらないものばかり作っていた。
小学校低学年の頃、図工の時間で紙粘土を使う事になって…ものすごくワクワクしたのを覚えている。くさくないし真っ白だし、固まったあと自由に色を塗ることができるというのがとても魅力的だったのだ。授業で紙粘土を使って何かを作るのが、余った分でいろんな大きさの丸い玉を作るのが楽しみでたまらなかった。
中学生になった頃、バザーか何かで紙粘土を使ったブローチ作り体験をした。
なんとなく【紙粘土は授業で使うもの】という思い込みをしていた私は、この時小物作りという趣味を得たのだ。長期の休みにお小遣いで紙粘土とニスを買い、せっせとブローチやペンダント、ペーパーウェイトなどを作った事を思い出す。
大人になってからは、おにぎりやクッキーなど…食べ物モチーフのマグネットを作ることが多くなった。フリマ等に出しつつ、実物大のパンやケーキを作る事にはまり、その後樹脂粘土を使ったミニチュアパーツ作りに夢中になって、子供が生まれたあとちょっとお休みしたものの…子供が保育園に入るころには再びねんど遊びを一緒にやるようになり。またおにぎりやクッキーなんかを作るようになって…気がつけばずいぶん息の長い趣味になっていたという。
そうだなあ、久しぶりにねんどを買いに来ただけで、こんなにもテンションがあがって…わくわくしている。まだまだねんど遊びはやめられそうにないなあ……。
紙ねんど各種に木工用ボンド、アクリル絵の具、磁石、クッキーの抜型いろいろ、ブラウン系のパウダー、クッキングシートにラッピングペーパー、リボン、個包装用の袋…ああ、ちょっと買いに来ただけのつもりが、いつの間にやらカゴいっぱいに!!
まずいなあ、店内を見ていると、どんどんアイデアが出てきて…あれもこれもと欲が出て!!!……これ以上買うと晩御飯のおかずが肉なしになってしまう!それは…まずい!!!
私はこれ以上散財しないよう…急いで、レジに向かったのであった。




