同窓会
別れ際の悲劇。
歓楽街の裏路地に入ると、そこは荒くれ者の世界。皆狷介かつ狡猾で身持ちの悪い上に揃いも揃って血の気の多い連中が、己の腕っ節にものを言わせている。僕と彼女は、ただ騙されてそこに迷い込んだだけだった
きっかけはただの同窓会。酔った同期に唆されて、引くに引けずに足を踏み入れた。荒くれなんて噂だけ。そう信じていた。裏路地は兎にも角にも入り組んでいるだろう。僕は彼女と一緒に、裏路地に分けいる前の公園の松の木を結った。同期と別れ、公園の向かいの暗い路地へ彼女と共に1歩ずつ入っていった。
膝は言うことを聞いてくれなかった。無性に彼女の1歩前を歩いたのは、きっと怖がりな僕の情けない表情を隠すためだと思う。未知の路地裏を恐る恐る進む。誰もいない。何も無い。少しずつ汗が引く。鼓動の焦りが鎮まる。後ろをふと振り返ると、僕は1人になっていた。その瞬間背筋が凍った。逃げようとすると後ろからドスの効いたこえで呼び止められた。途端に足が動かなくなる。刹那、硬いものが脳を揺らし、そこで記憶は途絶えた。
冗談のつもりだった。俺は誰も近付かない無法者の世界の入口へ、旧い友達の足を勧めてしまった。本当に行くなんて思わなかった、なんて今言っても遅いんだ。15分もすれば帰ってくると思っていた。でも2人はまだ帰ってこない。結った松の枝をもう一度見に来るはずなんだ。もう少しで帰ってくると、俺は2人を待ち続けた。もう少し待って、それでも帰ってこないなら、俺も路地へ入ろう。それが贖いってもんだろう。今はただ、この寒空の許で2人を待とう。
彼の背中は頼もしかった。もちろん怖いのは伝わったけど、私とあなたが同じ気持ちを持っていることに不気味な程に安心したよ。あなたは気づいていないかもしれないけど、あなたの服の裾のところを握ろうとしたらその途端、あなたと私は引き剥がされた。まるで世界が壊れたみたい。気がついたらあなたも自由も全てを奪われ、私は地べたに座り込んでいた。穢されたんだとはっきりわかった。粘っこくて生暖かい感触に包まれて、感情を示すことも上手くは能わず、茫然自失と、眠る彼に視線を送った。
僕は敗れた。彼女を護ってやれなかった。嫌に暖かい路地裏の地面、ただぐったりと斃れていた。体はすっかり動かない。遠のく意識の中、ひたすらに僕の名を叫ぶ彼女がいた。奪われるのは嫌だ。だけど僕は動けなかった。
含ませ方が雑。