今日、大丈夫な日だから
「今日、大丈夫な日だから」
「……ゴムいらないってこと?」
「うん」
「分かった。けど、万が一の時は責任とるからな?」
つけようとしていたコンドームを箱の中に戻しながら、どことなく嬉しそうな声音で彼はそう言ってくれた。
私と彼は、互いに20歳の頃から付き合い始めて今年で3年目。
とはいえ、やっぱり私の生理周期を把握していたりはしないよね……。
その事実に少しの不満と――安堵を覚える。
だって今日は……全然大丈夫じゃない日だし。
でもね?
私は大丈夫だよ?
デキちゃう覚悟の上で、あなたに「大丈夫な日だから」という真逆の嘘をついているんだから。
ゴムなしに興奮しているのか、いつもより激しく求めてくる彼に抱かれつつ、私はそのように思っていた。
♢ ♢ ♢
「デキちゃった」
私の狙い通り、陽性反応が出た妊娠検査薬を彼に見せる。
「……そっか。俺も今日から父親だな。指輪や式はもう少し待ってほしいけど……。そんな俺でよければ、結婚してほしい」
「うん、ありがとう。嬉しいよ私。ふつつかものですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
互いに夫婦となった挨拶をしながら、私は心の中でこう思わずにはいられない。
男ってチョロいよね……彼には悪いけれど。
ハーレムラブコメに登場するちょろインな彼女達よりも――チョロい。
今日大丈夫な日だから。
このたったの10文字とエッチをしてあげるだけで、籍を入れるように仕向けられるのだから、性欲旺盛なヤりたい盛りの快感優先男は――チョロい。
そんな所が、逆に可愛いいんだけどね。
私の彼――ううん、夫限定だけれど♡
彼と早く結婚したかったんだから、いいよね?
彼の子供が欲しかったんだから、いいよね?
彼に悪い虫がつきまとい始めてたんだから、いいよね?
彼は私のモノ。私は彼のモノ。
愛し合っているんだから、嘘ついてもいいよね?
愛さえあれば、何をしても許されるよね?
ねぇ? ア・ナ・タ♡
「うふっ。うふふ。うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」




