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プロローグ
陽光差し込む部屋の中。
窓際に、女が独り、立っていた。
頬を伝う涙を陽光に光らせ。
黒の短髪を風になびかせ。
背中に浮かぶ白いものは、薄く光を透過して。
涙交じりの微笑で、彼女は部屋に、立っていた。
その傍ら。
ベッドには男の体が寝転がっている。
12月25日、最後の日。
──ああ、俺は何も要らなかったが、
彼は何を望んだか。
────ただ、それでも惜しかったのは。
そして何を欲したか。
────安心しろ。オレは十分幸せだ────
そこにあった人影は二つ。
そのうちのひとつは人ではなく、
もうひとつは人でなくなろうとしていた。
それはいつのことだったか。
彼の周りでは本当に些末なことだったかもしれないが。
その想いは確かに。
いずれ巡り来る聖夜に託されていた────。