06 暴走
結局、いつものネルコでした。
えーと例の、フィナさんコス量産計画、でしたっけ。
途中まではめっちゃ順調に、計画通りに進みました。
計画フェイズ1
『鑑定』魔導具作成は、アリシエラさんがいつも通りにさくさくっと完了。
もちろん、乙女のプライバシー侵害し放題じゃなくて、
『鑑定』される側の同意が無いと絶対に魔導具が作動しない安全装置付き。
「こういう面白魔導具作成依頼は大歓迎ですよっ」
いつもありがとう、アリシエラさん。
でも残念ながら、魔導具がどんなに素晴らしくても、関わった人があんな感じだと、アレな結末になっちゃうんです。
計画フェイズ2
フィナさんノータッチ採寸も、滞りなく完了。
むしろフィナさんの方がノリノリだったそうで。
「早く新しい衣装を着て、ロイさんに喜んでもらいたいねえ」
ご協力ありがとうございます、フィナさん。
でも残念ながら、モデルさんがどんなに純粋無垢でも、あの人の心があんな感じだと、アレな結末になっちゃうんです。
計画フェイズ3
トルソー作成は、意外な助っ人が大活躍。
なんとアイネが、その異様な凝り性と異常な造型テクニックを遺憾無く発揮。
「サイズが大きくて楽しいっ」
そうでした、マダムシスレ事件の後の、あの飴細工フィギュアの凝りっぷり、思い出しましたよ。
本当にどんだけ才能を持て余してるんですかね、この娘さんは。
「フィナさんって、すっごくスタイルがいいんだねっ」
そういえば、全身造型された人形は、本当はトルソーじゃなくてマネキンと呼ぶそうなのですが、
ま、その辺はユルくてもいいよね、異世界だもの。
何はともあれ、ありがとう、アイネ。
でも残念ながら、造形師さんがどんなに神の手を駆使しても、最後の最後があんな感じだと、アレな結末になっちゃうんです。
計画フェイズ4
コス作り放題、のはずだったのですが、
ここが落とし穴だったのです。
いえね、衣装制作自体は全然問題なかったんですよ。
あのネルコですから。
あえて言わせてもらうとするなら、採寸と称してねっとりとトルソーを撫で回す、ネルコのいやらし手つきくらいでしょうか。
「失敬なっ」
だまらっしゃいネルコ、まだお仕置き正座タイムは終了していないぞ。
えーと、問題はその後、
ネルコさん、ここでいつもの大暴走ですわ。
インスピレーションとかって調子のいいこと言ってたけど、
あの一着目のとんでも衣装を、家族一同の前でお披露目されたロイさんの気持ち、
本当、穴があったら叩き込みたいですわ、ネルコを。
「会心の出来だったじゃないですかっ」
おやネルコさん、まだまだ反省が足らんようですな。
うむ、もう少しそのままで待つが良い。
もうすぐとっておきのアレが来ますので。
「このネルコ、権力にも暴力にも屈しませんよっ」
ほほう、でもアレならどうかな。
あえて言うなら『痴力』とでも申しましょうか。
そして、セシエリアさんに無理を言ってお願いしていた、アレ、到着。
いろいろありましてっと。
よし、着替え完了。
マユリさん、『拘束』とお着替えのヘルプ、ありがとうございました。
「私だってリリシアと一緒で、乙女の敵は許せませんっ」
本当にありがとうございます、マユリさん。
それでは『拘束』解除、お願いします。
「うわっ、なんですかコレッ」
「ひどいじゃないですかっ、モノカッ」
ほう、君は自分がひどいと思うような衣装を、あの純真なフィナさんに着せたと言うのかね。
「……」
うむ、だいぶ理解してきたようですな。
ところでシジミ、ちゃんとじっくり観察できたかな。
「360度、全身余すとこなく記憶済み、なの」
よろしい、その記憶は大事にしまっておきたまえ。
もちろん、機会があったらプリントアウトしてみんなにばら撒いちゃうぜ。
聞こえるかねネルコ君、二度と暴走することがないよう、肝に命じたまえ。
「そんなのを脅迫のネタにするなんて、許せませんよっ、モノカッ」
ほほう、何度も言うようだが、君は脅迫のネタになるような衣装を、
あの優しくて人懐っこいフィナさんに着せた、と。
「ぐうっ」




