12 オティール
「初めまして、モノカさん」
「オティールです」
うひゃぁ、ナニコレ。
眩しすぎて目がくらんじゃったよっ。
なんて言いますか、あのリリシアさんを凛々しさそのままに男性にしちゃったような、
金髪碧眼長身痩せマッチョの超イケメン。
物腰柔らかなのに凛としていて、さらに凛々しさのスパイスとしてイケボを振り撒いちゃいます、みたいな。
そして私には分かる、明らかにタダモノでは無いその佇まい。
大型のネコ科がゆるりと歩むみたいなしなやかな所作。
なんだよ、イケメンで無双騎士で性格穏やかなんて盛りすぎだろっ。
そして何より、シクレさんのお隣に寄り添う姿、
素敵夫婦感、限界突破マシマシ。
って言うか無敵夫婦じゃね、コレ。
「モノカさん?」
……えーとすみません、シクレさん。
おふたりがお似合いすぎて、意識が飛んじゃいました。
「もう、モノカさんのいじわる」
もう、シクレさんのイケズッ。
でもいいっすよ、神さま。
私にはカミスって言う、ちょっと頼りないように見えて実はめっちゃ頼りになる、素敵なフィアンセがいるんですっ。
などと危うく暴走しそうになりながらも、なんとか急ブレーキからの軌道修正成功。
そして、おふたりと和やかに歓談。
だったのですが、どうやらオティールさんには、
楽しみにしていたシクレさんとの恒例のにゃんこ巡りの旅を、
キャンセルせざるを得ないほどの事情がお有りのご様子。
以下はオティールさんのお話しのまとめ。
私が住んでいるエルサニアの騎士だったオティールさん。
下職したシクレさんの守護騎士として、
親戚が暮らしているアルセリア城下町へ。
いろいろありまして、ふたりはめでたくゴールイン。
どっかの特使勇者のおかげで召喚者関係のわずらわしいアレコレからも解放され、
ご夫婦そろってのにゃんこ巡りの旅も、今までよりも自由に行動可能、
いよいよこれからって時に、
親戚のお嬢さんにトラブルが。
もちろん、騎士道精神バリバリのオティールさんは、
いとこさんのトラブル解消のため、現在鋭意奮戦中。
「よろしかったら、私に出来ることがあれば何なりと」
私の本心からの言葉に、
おふたり、深々と、礼。
ホント息ぴったりですよっ、まったくもう。
詳しい事情をうかがいました。
現在いとこさんは、アルセリア城にてメイドさんとして行儀見習いの修行中。
成人を迎えるまでとのご実家との約束だったのですが、突然、本家筋から横やりが。
なんでもその名門大貴族の本家筋とやらが、どっかの特使勇者にフラれて現在絶賛傷心中のゼルサニア王子さまといとこさんを無理矢理くっつけて、さらなる権力拡大を画策してやがるとか。
つまり、嫌がる乙女の大切な人生を無理矢理捻じ曲げようとしている悪党貴族がいる、と。
やべっ、スイッチ入っちゃった。
特使勇者魂がめっちゃ燃え上がっちゃってるんですけど。
「オティールさん、ひとつだけ聞かせてください」
「いとこさんのご家族は、その無理矢理婚には絶対反対なんですね」
オティールさん、しっかりとうなずいてくれました。
オッケー分かった、後はいつもの特使勇者暴れ旅!
最後に、オティールさんに確認しました。
最終的にどうなるかは分からないけど、私は名門大貴族とやらを全力で成敗するつもりです。
本家筋が揉めると分家の方々にもいろいろ飛び火しますよ、と。
いとこさんのご家族は、分家の立場うんぬんよりもお嬢さんの平穏な人生の方が大事だとのこと。
ただし、本家筋からの圧力で身動き取れず、今はいとこさんにも会えない状態らしいです。
オティールさんには、分家さんへの最終確認に向かってもらいました。
お返事が来るまで、今回私に何が出来るかを、考えてみます。




