真相はどこに
「いただきまーす」
食卓についたリリーは、食事を開始する。机に並べられているのは、豪勢なお肉料理であった。
リリーは、目を輝かせながらお肉を食べていく。焼き加減もちょうどいい、実にリリー好みだ。美味しい。
……他に一緒に食卓を囲む者がいれば、もっと美味しいのだろうが。
「お気に召したようで、なによりです」
傍らに立つメラは、先ほどまでのお姉ちゃん顔が嘘のように、給仕の顔に戻っている。
リリーは、メラにこっそり耳打ちする。
「ねえ、せめてメラだけでも一緒に食べようよ」
「なりません」
「王女命令」
「ダメです」
「むー」
……旅の間、リリーの周りには常に人がいた。いつもあたたかいご飯というわけではなく、野宿なんてこともざらだった。
それでも、みんなと一緒に食べるご飯は、美味しかった。そりゃ、ご飯の味に関して言えば、これに敵うものはそうそうないだろう。
それでも……みんなと一緒に食べるご飯は……あたたかくて……ぽかぽかして……美味しかった。
「……ごちそうさま」
一人での、ほとんど無言の食事はすぐに終わってしまう。リリーは椅子から降り、部屋に向かう。
食事の前にお風呂は済ませたし、後は部屋でゆっくりするだけ……では、あるのだが。
「どうかなさいましたか?」
「メラに、お願いがあるの」
リリーはメラを部屋に呼び、くまのぬいぐるみを抱きしめつつ頼みごとを申し出る。
しかし、それはおかしな話だ。
「王女が頼み事などと。命令と言ってくだされば、いいのに」
「それは……お姉ちゃんに、命令なんて、したくないし……それに……」
「ロア様のこと、ね」
恥ずかしそうなリリーの姿に、思わず頬が緩んでしまう。こういうところは、かわいらしい子供のままだ。
そして、リリーはロアの事件に関して調べることを、命令として指示したくはない。
「うん。やっぱり、私だけじゃ調べるのに限界があるよ」
結局のところ、調べるとは言っても当事者の兵士に話を聞くくらいのことしか、できないのだ。
襲われたという数人の兵士。亡くなった彼らは、確かに剣の傷のようなものがあった。だが、剣の傷などロアがやった証拠にはならない。
その現場に居合わせていた他の兵士は、みんな口をそろえてロアにやられたと言うばかり。
ゲルドも同じだし、シャリーディアは話を聞けないままだ。
「当事者の兵士さんは、みんな同じことしか言わないし……他に調べようなんて、思いつかないよ」
「確かに……ロア様が国内に滞在したままなら、本人から話を聞くこともできたでしょうが」
「もしそうなら、お父様が真っ先に見つけてるはずだもんね」
今日ここに至るまで、ロア発見の報告はない。もし国内に身を潜ませたままなら、父が見つけられないはずはない。
だから、彼はもうこの国を出たと、考える方が自然だ。
「……リリーは、どう考えてるの?」
「え? どうって……だから、ロア兄ちゃんはやってないって……」
「それは何度も聞いてるわ。そうじゃなくて……事件の、真実よ」
言われて、リリーはハッとした。事件の、真実……それを考えないわけでは、なかった。
だが、ロアは今どこに居るのか。そして、ロアは事件なんか起こしていないと考えるばかりで、事件の真相にまで考えが回らなかった。
「ロア様が兵士を殺し、逃げた……とされている。けれど、リリーはそれを信じていないのよね」
「うん……」
「じゃあ、どうしてロア様は、逃げたんだと思う?」
「どうして……」
そうだ、事件を起こしていないのなら、逃げる必要なんてない。なのに、逃げる理由は……
そう考えると、おのずと答えは絞られてきているような気がして……
「……誰かに、陥れられた?」
本当は、ロアは兵士を殺していない。だが、罪をなすりつけられた……だから、逃げた。
「いや、でも……」
もしそうだとして、本当のことを話せば済む話だ。実際に亡くなった兵士はいる……慎重に調べれば、いいはずだ。
それに、もし誰かにハメられたのだとして、兵士が口裏を合わせることなんてできるのか? まして、その場にばゲルドやシャリーディアもいたのだ。
なにかが、なにかが足りない……リリーは、頭を抱えて黙り込んでしまった。
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