かつての仲間たち。リリーの想い
王女としての地位に納まることとなったリリーは、独自にロアの事件の真相を探っていた。
とはいえ、兵士のほとんどは国王である、ザーラの息がかかったものだ。父に悟られることなく、ロアの動向を探るのは、決して楽ではなかった。
どうして、内密に調べているのか。父は、ロアを罪人として決めてかかっているからだ。どうにも、リリーには引っかかるところがある。
だから、真実が……知りたいのだ。
「! どうぞ」
自室で、考え事に頭を巡らせていた時。扉を叩く者があった。寝巻であるが、リリーは来訪者を、招き入れる。
「失礼します」と女性の声があり、入ってくるのは……
「メラ。どうかしました?」
リリー専属の給仕である、メラ・カーマンだ。給仕服に身を包んだ彼女は、軽くお辞儀をして、歩みを進める。
彼女は、リリーの世話役と同時に、リリーの姉のような存在でもある。小さい頃から、かわいがってもらった思い出は多い。
「リリー様、ご夕食の用意ができましたので、お呼びに」
「そうですか、ありがとう」
どうやら、夕食に呼びに来てくれたらしい。
だが、最近リリーはあまり、食事の時間が好きではない。旅から帰ってきたばかりの頃は、よく父と一緒に食事をしたものだが……
今では、父は仕事に追われ、共に食卓にはつかない。給仕や兵士は当然王族と一緒に食事をするなんてこともなく、リリーは一人で食事をすることが多い。
「はぁ……」
そう思えばこそ、自然とため息が漏れてしまうのも、仕方のないことだと言えるだろう。
「ダメですよ、リリー様。そのようなため息なんて」
「誰も居ないんだから、いいじゃないですか」
「私がいます」
「……それに、二人きりの時はそんな堅苦しい言い方じゃなくても……」
「なら、リリー様も私のことをお姉ちゃん、と昔のように呼んでいただいてもいいのですよ」
「むぅ」
ああ言えばこう言う。リリーは、昔から口でメラに勝てたことがない。
せめてもの抵抗として頬を膨らませるが……次第に、なんだかおかしくなって吹き出してしまった。
「リリー様?」
「あはは、ごめんごめん。なんだか、おかしくて」
「……ようやく、笑われましたね」
言われて、気づく。そうか、今自分は、笑っているのか。
自然と、頬を触った。
「……私、そんなに最近笑ってなかった?」
「笑っていても、ほとんどが作り笑いみたいなもの。旅から帰って……いえ、ロア様の事件を知ってから、あまり笑わなくなったわ」
「……そっか」
メラに指摘されて、確かにそうかもしれないと思う。ロアの件を知って、調べていくうちに……余裕が、失われていた。
しかし、平時には王女としての役目もある。自分一人の時間など限られている。余裕も時間もなくなり、いつしか本当の意味で笑うことがなくなっていた。
「……やはり、気になる? ロア様のこと」
「当たり前だよ! ……お父様は、ロア兄ちゃんが犯罪者だって聞かなくて。少し前にドーマスおじちゃんやミランシェ姉ちゃんと話したんだけど、信じられないだけで証拠がないから動けないって」
「ドーマス様には家庭もありますし、そう派手には動けません。シャリーディア様は?」
「実は、旅から帰ってから会ってないんだ。いろいろ、忙しいみたい」
教会の大神官だ、王女であるリリーとは、また違った忙しさがあるのだろう。
リリーの見た手では、シャリーディアはロアに好意を寄せていたはずだ。自分がロアに寄せるのとは、また違った好意
だから、ロアのことならばお互い、力を合わせられると思っていたのだが。
「シャリーディア様も、独自に調べているのかもしれません」
「かもね」
彼女の考えは、リリーにはわからない。一見、話しやすい雰囲気はミランシェよりも全然あるのだが……
なんだか、心の奥底になにかを隠しているような。本当の自分は、誰にも見せていない……そんな風に、感じられた。
「って、夕食だったね。行こうかお姉ちゃん。今日はなんだろ」
「献立は、リリーの好きなものよ」
「わぁ、なんだろう。お肉かな、お魚かな」
「……そういえば、ゲルド様とはお会いになったの?」
「……ゲルド兄ちゃんは、私のこと子供扱いするからあんまり好きじゃない」
体は大人っぽくなっても、やはり中身は変わっていない。
そう、笑みを浮かべながら……メラは、部屋を出たリリーを、エスコートした。
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